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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第七幕「神殺しを為す者達」
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「act11.5 休章」

「む、今卑しか波動を感じましたよ」

「一体何だいソレよ……」


 幾万もの死合を終えて謎の老人が持ってきた食事を口にしていたツヴァイスとエドガー。この空間では不思議と空腹感もなく疲労感も傷も一呼吸置いた後即座に完璧なコンディションに戻っている。暗く何も見えない、不気味なところではあるが修行にはもってこいの場所なので実力不足を感じていたツヴァイスにはとてもありがたい空間である。


 空腹感も疲労感もなくなってしまうとはいえそれでも食事、休憩はしておかないと人間というものを忘れてしまいそうで恐ろしい。特にツヴァイスはその傾向が顕著で悪魔の力を使っているものだから一層人間との境界がわからなくなる。だからこうして人間らしく食事をして、人間らしく休憩をはさんでいるのだ。


「そういえば嬢ちゃんのとこ三姉妹だったよな。ブルーノとはそこそこ長い付き合いになるが三女の話を聞いたことがねえ。……こりゃあ一体どういうことだ?」


 おそらくエドガーにとってはこれがずっと疑問だったのだろう。とはいえ責めるような聞き方ではなくあくまで興味の延長、聞ければラッキーくらいで言っているのだとツヴァイスにだってわかった。


「……うん、いたよ。双子の妹のヌルが」


 双子、と聞いたところでエドガーの眉間に皺が寄る。いくつか疑問がでてくるがこの一言でいくつか解決しそうだ。


「双子、つったらシュタイン家では不吉の象徴で生まれてしまったら生後一年以内に屋敷裏の川にどちらかを捨てる、ってのが決まりだったよな。……薄々そうかとは思ってたがアイツ……」

「ううん、お父さんは必死に守ろうとしてくれたよ。捨てたのはお母さん。それに怒ったお父さんはお母さんを村から追い出したってお姉ちゃんから聞いた」


「……自分が腹を痛めてようやっと産んだ命だってのに。ま、人の家の慣習になんとか言うつもりはないが悲しいな。妹さんの名前を決めたのもその母親だろ。一、二、ときて零なんて趣味が悪いにも程がある。よっぽどなかったことにしたかったらしいな」


 ん、と静かに頷く。不思議とその表情からは悲しみ等の感情はあまり見られずむしろ微笑んでいる?

 今までのツヴァイスならばこの状況で笑みが零れるはずはないが悪魔との契約を普通ではありえない長時間しているからか既に人間性が失われつつあるのか。


「なあ、もう充分強くなった。そろそろ出てガイナのところに行っても

「だめ」

「……」

「まだ。今のままじゃ私が厄災戦に参加しても足を引っ張るだけ。もっと、もっと……、わ、《《ワタシ》》には時間が必要なの」


「おいおい、嬢ちゃんもこっち側に」

「余計な言葉はいらないです。ワタシにはなにもかもが足りてない。だから、ね。ワタシ、頑張るよ」

「……いいだろう。嬢ちゃんのこと、忘れないでやるよ」

「えへへ、ありがと」


 そういえばよ、と水を一口飲んでぐぅーんっと背伸びをする。常にベストコンディションなのは非常に良いことだし願ったりなのだがずっと、というのもなんだか座りが悪いもので多少揺らぎがあった方が人間らしいってものらしい。


「嬢ちゃんに憑いてる悪魔の名前はなんてんだ? 一対の黒い翼、黒い髪に黒い衣服、赤い瞳、黒い魔力。熾天使長であるミカエルに迫るほど強いってんだ。相当に高位の悪魔なら名前くらいあるだろ」

「うーん、そっちはうんともすんともって感じ。たまに話せたりするけどカレ自身のことを話してくれたことはないの」

「戦い以外の時はいつもどっか別の方を見てるよな。どこ見てんだ?」


 首を傾げる。肝心の悪魔の方にも反応はない。あ、でも、とツヴァイス。


「リヒート君と会った時に少し反応があったの。普段人には見向きもしないのになんでだろう」


『このワタシに縁のある人物だったらしいのでな』


 男とも女とも成人とも子供ともとれるような声色でそう語ったのはツヴァイスと契約している悪魔。自分以外の人間と話すところを初めて見たツヴァイスは驚き、そもそも話すのを初めて見たエドガーは更に驚いていた。


「それってどういうこと?」


『そのままの意味だ』


「それがわからねぇってんだろぉが」


『…………』


「はあ、だんまりかよ。口くらい開いてくれてもいいだろぉが……」

「そういえば前この世界では話すことにも魔力を消費しちゃうからあまり喋りたくないとも言ってたかも」

「結局わからないということがわかったな。……さて、休憩は終わりだな」

「続き、お願いします!」

「と言っても今じゃオレの方がチャレンジャーってんだ。行くぜ!」


 真っ暗な空間で二つの光が正面からぶつかる。その初撃だけで小さな村一つくらいは吹き飛ばせそうなほどの衝撃が空間に満ちる空気を叩きツヴァイス、エドガーを外からも内からも刺激する。両者の腕が内から爆ぜるが一呼吸置けば元通り。


 さあ、その命を燃やせ。守るべき何かがあるのならば。


 それがたとえどのようなものでも。


 それをたとえどのような力を使ってでも。


 足りないものを補え。


『……いずれ来たる聖戦。それを討ち勝つためにワタシはこのようなところで止まるわけにはいかないのだ』


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