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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第六幕「人類史誕生」
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「act06 夫婦喧嘩」

「互いに魔法が使えない、肉弾戦も得意とするところではないとなれば生物の構造上男性である私の方が幾分リーチがあるわけだが」

「あなたはここを魔法が使えない空間だと思っているようだけれどそれは少し違っているわね。正確にはし――」


「正確には神秘が断絶された空間、そんなことは初歩も初歩だ。言葉で私に勝とうなどそれこそ君には勝機はないと既に承知しているものだと思っていたが」

「えぇ、神秘が断絶された空間。私達が使用している魔法というのは原則的に天使と呼ばれる上位存在の起こす『神秘』を借りているにすぎない。つまり神秘とのパスが断絶されれば魔法の使用は不可能なわけだけれど――」


 最初に駆けたのはローズ。まずはわかりやすく蹴り上げ、それをアレイスターが避けると次に白い手袋に覆われている右拳、それも当然避けると、《《轟ッ!! と胸元が爆ぜて大きく後方へと吹き飛ばされる》》。


「……なんだと。魔法は使えないはずだ」


 答えない。自己顕示欲の高い人間にありがちな自分の手の内を明かしてしまうという失態も犯すこともなくただ次に拳を構え地面を蹴るのみ。自分になら話すかとも思っていたアレイスターは笑み、即座に構える。


 まさかただの肉体芸のみであのような爆発が起きるわけもない。必ず何らかの超常が絡んでいるはず、だとすれば答えは自然と三つくらいまでに絞れた。


 その中で最も高い可能性の選択肢はよく注目すればわかるはずだ。もう一度ソレを起動できるほどの距離まで近づいて――


 男も遅れて駆け、再び拳の届く範囲へと走る。この距離ではもはや足技は使えず拳を振るうしかなくなる。先程も拳を突き出してきた瞬間に何かが爆ぜたということは同じ超常を引き出すためには同じ行動をさせた方が手っ取り早く、しかし誘導していることを悟られてはソレを温存する可能性すらある。つまり自分の取るべき行動は自ずと見えてくる――


「大きく前へ出るッ!」


 自分の拳が届き、足技も使えないほど接近した上でなお更に距離を詰める。戦闘の経験値があるガイナらに対してこれをすれば間違いなくこんな愚策をとるのは何か裏があるはずと悟られるが生憎相手にしているのは戦闘のド素人。予想外も予想外の行動をすれば咄嗟に一番信頼のおける防衛手段に頼るはず。なれば今度こそ手元に注目しておけば種が明かされるッ!


「がっ、きぃさ――」


 予想通りに拳を突き出し轟ッ!!という爆発とともにまた後方へと飛ばされてしまうが先程とは違うことがある。


 一つ、来るとわかっているならば多少構えることができる点。素人なりに身体を使い衝撃を軟化に成功した。


 二つ、あまりにも至近距離で爆発したものだから彼女自身にも多少のダメージが入っているという点。


 三つ、アレイスターがニヤリと笑んでいること。


「魔法装具、私抜きで完成させていたとはな」

「魔法装具?」


 後ろに疑問符をつけて尋ねたのはアンナ。アレイスターとローズ以外の人間にとっては聞き覚えもない単語であった。


「知らないのも当然だろう。魔法装具とは私が創り上げた構想だからな」

「流石稀代の研究者。二度見ただけでこれを見破るなんて」

「阿呆め。魔法装具の存在を知っていてその可能性が浮かばない方が不自然というものだ。さて魔法装具とは何ぞという問いだったな。構想自体は非常に単純、神秘とのパスを繋がずともある決められた神秘を行使することができる道具だ」


「なっ、そんなことが可能なの?」

「可能だから先も私の腹が爆ぜたわけだが。原理としては例えば火が爆ぜる魔法を使用できる装具を作りたいならばその神秘性を物に封じ込めるというものなのだが、言うは易く行うは難しというやつで中々に苦戦していた。……君がしているその手袋がそうだな。微弱ながらそちらから魔力が溢れている、つまりまだ完全に完成しているというわけではないらしいが……。ここまでの破壊力を持った魔法を封じ込めておくことができれば及第点と言ったところだろう。しかし見たところ射程は精々手のひらから十五もない。それでは少し強いだけの拳となんら変わりない」


「ご高説ありがとうございます。わかったところで勘違い野郎が不利なのもまた変わらずってわけよ!」

「――勘違い、という点においては君も同じだ」


 女は構わず突き走るのに対し男は悠々自適に構えもしない。


「私はかつて守護天使を召喚しそれから『法の書』という本を書いた《《らしい》》。それにより私はこの世界に対する一つの解を得たのだ」


 相対する者が歩幅五つまで接近したところでようやっと構えて全神経を手のひらへと集中させる。


「構想構築。概念理解。物質変性。現象発動」


 ビキリッ、と額の血管が浮き出て今にも血液が沸騰しそうなほどに熱を持つ。いつの時代も先駆者とは命懸けだ。人類未踏の領域に踏み込むのだから当然だろうが、この程度は、構わないッッ!


圧縮電撃(エレキシュート)ォ!!」


 刹那、激しい光と轟音がローズの胸を一閃、数秒痙攣した後にその場に伏す。伏したモノからは焼け焦げたかのような臭いと煙が漂い、それが見ていたものの鼻を不快に刺激する。仕掛けた男もかなり疲労している様子で今立っているのもやっとの強がりといったところか。


 やがて呼吸を整えたアレイスターは一言こう口にした。


「これが私なりの新超常構築術式、《《魔術》》だ」

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