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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第六幕「人類史誕生」
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「act01 選ばれた戦士達の魂」

「ここが彼女の現在のラボ、正確には『ヴァルハラ』と呼ばれる洞窟の奥にそれがある」

「ヴァルハラってなんだ?」

選ばれた戦士達の魂(エインヘリアル)が集う場所、というのが本来の意味だがこの洞窟の場合は生き人を死者に変えてしまう不帰の洞窟という意味に読み替えるのが正しいのだろうな」

「かえらず、の……」


 ごくり、と大きく唾を飲む。洞窟は生まれ育った故郷にもあったし暗いのも慣れっこではあったが流石にここまで脅されると若干の気の迷いも生まれるというもの。しかし頭を振ってばちっと頬を両の手で叩くと自然と気持ちが引き締まった。


 いつ足場が崩れてもおかしくないような不安定で長い道を一行は一言も口を開くことなく、かれこれ半日は歩いた。


 だがたどり着く気配も感じない。人がいる痕跡だとか罠の気配だとかそんなものが一切感じないただただ長い道。正直これはこれでしんどいものがあったが、ふとアンナに視線を向けるとその瞳は何を映しているのか全くわからないほどに黒く濁っているように見えた。何を考えながら彼女は前に足を進めているのだろうか。


 ……やはり心苦しい。自分にも何かできたことがあったんじゃないかと思うと自分の無力さを呪う。今でさえみんなについていきこんな自分を責めることしかできていないのだ。


「あんまり考えすぎないことね。過ぎたことは仕方ない、問題は次にどうするかよ」


 そう言ったガブリエラの言葉は優しくも厳しくも聞こえるものだった。


「っ……。過ぎたことで済ませられるかよ」

「まだまだお子様ね」

「……年下のお前には言われたくない」

「あァン!? なんだってェ?」

「醜い争いをするなお子様ども」

「「あ??」」

「…………」

「……やれやれ。少しは緊張というものをだな」


 ――さらに半日程歩く。相も変わらずなにもない道をただひたすらゆらりくらりと進むだけ。つまりは一日中歩きっぱなしということになる。旅に慣れている四人や熾天使いガブリエラを圧倒するほどの実力を持つウリアに大健闘していたアンナは兎も角、流石にアレイスターの顔には疲労の色が見えてきた。


 ガブリエラとしてはそんなもの無視しようと思っていたのだが、それを察したツヴァイスは立ち止まり休憩にしようと言う。女熾天使いとアンナは露骨に嫌な顔をしたが男達がそこに座り込んでしまいやむ得ず休息をとることとなった。


 生憎と水を補給する余裕もなかったので今までの自分なら水分補給などできなかったろうが今は違う。何故なら多少だが水属性の魔法を扱える、いつぞやのガブリエラのように魔法で水を生み出して水が飲めるのだ。あぁ、すばらしきかな魔法技術。


 だがしかし――


「あれ? 魔法でない???」


 魔法を行使できない。自分が未熟だというのは重々承知していることだがそれにしたってうんともすんともいわないのはおかしい。


 その呟きを聞いて驚いたのはガブリエラただ一人。しかもその驚きでさえ、


「え、そんなことも気付かなかったの?」


 という有様だ。自分だけ仲間外れみたいですごい悲しみを覚える。


「ここに入った時からすこーしおかしいなって思ってたんだよねー」

「この洞窟内は何故だか知らないが《《神秘の介入を遮断している》》。よって天使の力を借りる(わざ)なんぞ使えないぞ」

「そんな……」


「つまりは《《大穴》》に落ちると大変、抜け出せないというやつだ。……あぁ、それで思い出した。言い忘れていたことがあったがな、《《青い花を見つけたら決して近づくなよ》》」

「えっ、もしかしてこれのことか?」


 発したのはエドガー。その時には既に青い花を片手に握りしめていた。


 すると、そこを中心に足場が崩れていく。


「なっ――」

「きゃっ――」


 座り込んでいてしかも至近距離にいたツヴァイスとエドガーは声を発する暇もなくあっけなく下の暗闇へと落ちて行ってしまった。


 ガイナとガブリエラは元々の進行方向の道に、アレイスターとアンナは地面が崩れて現れたらしい新たな道の方へと逃れる。


「ツヴァイス!」

「落ち着きなさい! 魔法を使えないアナタが行ってもなんの役にも立たないでしょ! ……とは言いつつ、アレイスター! 何か方法ないの?」

「――大丈夫だ。彼らなら出てこられる」

「何を根拠に――」

「私がそういう類の言ではずしたことがあったかね?」


 ぐっ、と押し黙る。彼の言った大丈夫が外れた前例を知らないからだ。押し黙るしかない妙な説得力がある、だからこの前も彼の名を聞いた瞬間そのまま信じてしまったのだ。


――その結果、子供一人を失った。彼の大丈夫がどこまでのラインなのか不安になっているのだ。


「ふん、心配する必要はない。今度ははっきりと言ってやる。彼らはここを無事に脱出することができる」

「誰が? どこを?」

「はあ、そこまで言わんと不安かね。ツヴァイス嬢とミハエル氏が、このヴァルハラを、だ」

「……わかった。信じるわよ」


「ついでに言ってやるが、君達はその先ずっと真っすぐ行けば目的地に辿り着く当たりの道だ。迷うことはなかろうが罠は少なからず存在している、そこだけは注意したまえ」

「じゃあそこで集合というわけね?」

「明確にわかりやすい集合場所なんてあるのかしらぁ?」

「だったら先に着いた方が先に目的を達成してしまっても構わないわけか」


 それ以上は言葉を交わす必要はない、いやその時間すらも惜しむように足早にそれぞれ向かうべき場所へと行く。


 それぞれの想いを胸に、それぞれの思惑を持って、それぞれの道を進む。



「ふっ、まあ《《結末はわかっているのだけれどね》》」


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