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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第五幕「異端を排するべからず」
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「act09 衝撃の真実」

「……そしてワタシ達は結局何もできずただ見てるしかなくて、それで――」

「もういい。充分よ。貴女達が協力してくれてたのは感謝しなきゃね」


 沈黙。何も言葉が出てこない。リヒートの母親、アンナの声色が真っ黒に沈んでいた。当然、一人息子を亡くしたと思っているのだから当然である。


「止めるべきは母さんだったのよ。村はどうなったっていい。みんな生きてなきゃ、命あっての物種でしょう! 生きていなきゃ……、結局何も残らないじゃない! 貴女が! 貴女が止めるべきだったのに!」

「だ、だって……」

「だってもクソもあるか。そうやっていつも守られる側にいる! 歳だから動けないぃ? 知らないっつうの! アンタだって魔法使いでしょうが。……もういい、私行くわ」


「どこに……?」

「《《先生から嫌なこと聞いた》》から急いで村に戻ってみればドンピシャとはね。私はこれからローズのところに行く」

「話は終わりかね?」


 頭に思い浮かべるはハテナ、聞いたことのない名前だったからだ。周りを見ても誰もピンときている様子はない。しかし答えは一瞬の沈黙の後に歩いてきた。


 一人の男が歩いてきたのだ。長身で痩せぎす、髪も長く腰のあたりまで伸びている白衣の男だ。ガイナは見ただけでは誰かもわからなかっただろうがどこかで聞いたことがある冷静で冷淡で冷然な話し方、おそらくこの男がこの悲劇の関係者。


「アレイスター・クロウリー……?」

「む、名乗る必要はなかったか。話が早くて助かる。今から私の助手、ローズの所に足を運ぼうと思っているのだが共に来る者は、ぼぶゅっ!?」

「アナタねぇ! この結末がわかってたならなんとかしなさいよ! なんでも分かるクセにそうやって世捨て人気取るとこが昔っっっから気に食わないのよ!!」


「……君が私にそうやって拳を向けること自体も想定の範囲内だ。普段はこんなことはしないのだが混乱を招いたせめてもの償いと思ってくれ」


 ガブリエラに思いっきり頬を拳で殴られたアレイスターは衝撃に任せて倒れるとすぐに立ち上がる。殴ろうと思っていたが先にガブリエラが手を出してしまったのではこの後にまた殴るのはなんとも気持ちが悪い。


「そして昔昔と言うが君と私が出会ったのは三年前にほんの少しだけだ。《《そう、君が十四の頃だったかな》》」

「「なっ!?」」


 驚いたのはツヴァイスとガイナ。三年前に十四ということは今は……、自分と変わらないか年下ではないかと。大人、大人というからてっきり二十歳は越えているものかと思っていたが……。


 先程の怒りの表情から一転、恥ずかしさの赤が表情を支配してその顔を隠そうとしゃがみこむ。


「ガブリエラ、お前年下、だったのか……?」

「――い」

「え?」

「なんか悪いかしらぁ!?」

「逆ギレ!?」

「あははは、これから付き合い方変わっちゃうな。そう思う今こうしてるのもいじけてるみたいで可愛いかも」

「いじけてない!」


「やはり大人ぶっていたあの態度は変わっていないようだな。しかし胸を張りたまえ。外見だけで言うならば君は十全に大人と呼ぶに相応しい。後は内面だな、その詰めの甘さをなんとかすれば君は立派に大人となる」

「…………そんなことくらいわかってるわよ」

「さて、話の続きだが今から私は爆弾事件の張本人、ローズ・ケリーの元へ彼女と共に行こうと思っている。君達も知っての通り私自身は魔法協会にアレが落ちようがどうでもいいが、無関係な人間まで巻き込むのは私の主義に反する上に実際被害が出ているのだ。これ以上は看過できるものでもないだろう」


「当然、こっちは一人犠牲を出してるのよ。あそこで寄り道せずに直接問い詰めに行けばよかった!」

「む、犠牲者? ……《《あぁ、そういうことか。ならば行こうではないか弔い合戦とやらに》》」


 ここで押し黙るような人間はいなかった。ガイナ、ツヴァイス、ガブリエラ、エドガー、アンナはそれぞれが良しと答えた。確かにアレイスターに関しても納得できないところはあるがそれはそれとして先に直接の原因を叩きに行くという意見で一致、六人はそれぞれの想いを胸に村を後にする。


「なんかかなり大所帯になっちゃったわね」

「なに、すぐに減る」

「……? そういえばガイナってばもう大丈夫かしら?」

「あ、あぁ。もうだいぶん落ち着いて割り切れるようになってきたよ。」


「ふむ、剣士としては良き心構え。だがそれと人の死に慣れることは違う。そこの少女も」

「え、私も?」

「私達上位の魔法使い及び研究者は性格破綻者の集まりだ。それ故に人の死に遭遇しようがいつものことだと、この人間だけではなく世界中では今この瞬間も続々と命を落としている者がいる。そう考えるようになってしまったが、そういう思考は本来人間らしさとはかけ離れたものだ。今ある命を大切にして、目の前にある命を尊べ。失くしたら泣け、救われたら喜べ。君達のような若者にはせめて笑って普通に暮らせるような世界を作るのが私達大人の仕事だ。そのためなら神にだって喧嘩を売ってやるとも」


「……なんかあんた、思ってたよりずっと温かい人なんだな」

「ここからの旅は少し長くなる。多少でも好感度を上げておいた方が効率的だからな」

「ねぇ、ワタシはその若者に含まれないわけ?」

「君は熾天使い、性格破綻者の最たる存在だろうが。例外だよ例外」

「違いねぇなぁ嬢ちゃん!」


 賑やかに野宿を繰り返しながらおよそ三日、アレイスター達がたどり着いたのは地下に続く洞窟のようなところだった。


 ごくり、とガイナが唾を飲む。なんとなくだがこの地下には自分が触れてはいけない何かがあるような気がしてならない。


 ――これは《《落ちないように気を付けないと神性が毟り取られてしまいそうだね》》。


 自分の中の何かが警鐘を鳴らす。この中にはできることなら入りたくない、そこまでのリスクを負いたくないと。だが、ここで引くわけにもいかない。


「落ちなきゃいい話だろ。行くぞ」


 そう言って震える足を叩くと大きく一歩前へと踏み出した。

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