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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第五幕「異端を排するべからず」
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「act08 犠牲」

無我夢中で爆弾を抱えて飛んだため気付いていなかったがかなり上空へと飛んでいたらしい。大分空気も薄くなり呼吸するのも辛い状態であるがここで思考も手も足も止めている場合ではない。まずは起爆のトリガーについてだ。


おそらくこれは何かに着弾した瞬間に爆発するタイプでそれはつまり同様に強い衝撃を与えれば爆発するということを指す。それを破壊した後即座に後退、あまりに早いと空気抵抗で身体が悲鳴を上げそうだが下には優秀な魔法使いがいるので最悪死ななければどうということはない。それはいい。しかして生憎リヒートはわかりやすい破壊力を持った魔法を使用できるわけではない、ここが難点だ。


「つまりはもっとなにもないようなところをさがしてそこの地面にたたきつけて爆発させるのがベスト?」

「それはよくない、その対厄災獣魔力圧縮消滅弾には爆発してもらわねば困る」


 かなり時間がかかりそうだがそれが一番安全確実な方法だろう。一週間以内に村に帰られればいいけど、と少し肩の荷を下ろしたところで突然どこからか聞き覚えのない男か女かもわからない声が聞こえてきた。探せど声の主は見当たらずそこで一つの答えにたどり着いた。


「爆弾……?」

「ふむ、存外気が付くのが遅いのだな。そう、ここに発声魔法を施してありそれでもって話をしているのだ」

「あなたが……。いや、おまえが村を焼いた! そしてこの爆弾も!」

「……? あぁ、これだから子供は嫌いなんだ。そう、直情的で理論的に会話もできない、私の会話相手としては不合格だ」


 ――話し方はアレイスター先生と似ているけどこれは似ている、いや似せてるだけ。この人の本質はもっと奥の方にある!


「対厄災獣、とか言ってたね。それはタナトス、本でよんだことあるよ。それに使われるような爆弾をなんで魔法協会なんかに!」

「あの人の研究が認められなかった。その一点に尽きる」


 あの人、とはアレイスターのことだろうか。確かに彼が研究が認められずに排されたということは知ってはいたが、


「《《それだけのことで》》……?」

「……《《それだけのことで》》、だと? 貴様のようなクソガキにあの人の研究の偉大さがわかるものか! アレは私達人類にとって必ず必要となるもの。それを神の神秘から遠ざかる愚行と罵倒したあの老害共に見せつけてやるの! 貴方達は本当に愚かな選択をしたのよ、ってあの世で後悔させる。そのためにわかりやすいデモンストレーションが必要なのよ。だから爆発させる。ソレは何があっても爆発させる!!必ず、必ずよ!」


 どうやら少年は知らず知らずのうちに地雷を踏んでいたらしく先程までの落ち着いた雰囲気はどこへやら感情を大きく表した。やはりあの澄ました態度は仮面でこちらの方が《《彼女》》の本当の顔のようだ。


 ――なんとか逃げられないか……。


「ハッ。爆発させるだけでいいっていうならぼくは見のがしてくれないかな。犠牲者を出す必要もない、むしろだれもしなないような場所まではこんだぼくをほめてほしいくらいだよ」

「精一杯の強がりね、声が震えているのがまるわかり。……その程度の心構えでコレに立ち向かってきたのは褒めてやる、があまりにも未熟だな」


 ……この一言を言えば即座に爆発させてくるかもしれない。だがこのまま高高度にいても空気がかなり薄いからか呼吸するのも苦しくなってきている。もし酸欠で意識を失いでもすればたちまち爆弾は地上へ、自分は死ぬし村も消し飛ぶ。それならばいっそここで爆発させてしまった方が――


 とまで考えてふと笑む。


 ――そうか、最小限の犠牲っていうのは……。


「ふっ」

「何がおかしい?」

「いや、どうしてなかなか」


 アレイスター先生の話し方を下手なりに真似てみれば効果テキメン、明らかに不機嫌そうな荒息が聞こえてきた。そしてトドメの一言。


「君は先生の隣を歩くどころか追うことすらできないと思うけど?」

「ッッッッッッ!! 殺す!!」


 瞬間爆弾の中で巨大な魔力反応を感知した。それは地上にいたガブリエラ達でさえはっきりと感じることができてエドガー以外の全員が背筋を凍らせるほど圧倒的であった。


 ――でもしぬつもりはすこしもない!爆発までタイムラグが生じてる、その間に全速力で!?


 爆弾を離して翼を羽ばたかせた一秒後に大きく爆発が起こる。およそ音速越えの速さで飛行しているリヒートだが爆風が広がるのはそれよりも速い!


 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!


「跳べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――」








 叫び声と共にリヒート・モルゲンシュテルンの魔力反応が最初からなかったかのようにその場から完全に消滅した。

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