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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第五幕「異端を排するべからず」
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「act03 熾天使長の少年」

「さて、改めて自己紹介をするわね。私の名前はクリスティーネ・モルゲンシュテルン、一応この村で長みたいなものをしています。ほらリティー、ご挨拶」


 ガイナとガブリエラはクリスティーネと名乗った女性の家に、ツヴァイスとエドガーは最近盗賊が現れることがあるということで外で見張りをしていた。

 長、というだけあって他の家よりは大きいような気もするがそれも他の町、村で言うところの一般の家とほぼ変わらない大きさであるところを見ると地図に載ってすらいないほど小さな村なのだということを実感する。


「ぼくの名前はリヒート。この村に住んでる数少ない魔法使いで」

「ルシフェルに対応する熾天使い、ね。名前が変わっていないから未だに確信は持てていないけれど。ワタシはマリン・ガブリエラ、こっちはガイナ・クォーノス、これからヨロシクね」


 リヒートは驚いたような表情を見せたが名乗りを聞いた瞬間に納得したように頷いた。その様子から察するにどうやらガブリエラの勘は当たっていたようだ。

 熾天使いの座は七席しかないと以前説明したがそれは正確ではない。公的にはその存在を隠されているがあと一つ席が存在するのだ。それがルシフェル。

 ルシフェルとは天使の中でも最も力強く、気高く美しく全ての天使を統べる神の創造した最高傑作、とされている。その特異性から対応できる魔法使いが現れることは少なく、ここ千年は空席状態だったのだが。

 ――ルシフェルに対応できる魔法使いがいるというのを聞いたことはあったけれどがこんな子供とは思わなかったわ。


「ぼくはまだ契約の儀自体はしてないからね。対応ができるってだけ」


 契約の儀を行わずにあれだけの魔法の行使が可能となると実際に繋がった場合どれほどのものになるのかと恐ろしさ反面興味をそそられる。おそらくだが自分の力を正しく理解して正しく育てることが出来ればあと五年もしないうちに世界で一番どころか歴代でも最高クラスの大魔法使いになれるほどの素質の持ち主だ。惜しむべくは厄災の獣の再誕には間に合いそうもないところか。


「契約はしないのかしら?」

「してもいいんだけどするといろいろと動きまわらないといけないみたいだし、いまはここをはなれたくないから」

「最近盗賊がきたって話と何か関係があるかしら?」


 ふと。

 一瞬だけクリスティーネの表情が曇ったように見えた。ここだ。ここに先ほど感じた彼女なりの目的というものを感じる。彼女もまた大した魔法使いのようできちんと心を読めるわけではないが予測するに、


「つまりワタシ達にあわよくば盗賊を対処してほしい、と」

「そ、そのような傲慢な――」

「わかってるわ。アナタができれば他人に迷惑をかけたくないのも、ジブン達の力だけじゃどうしようもない問題を抱えてるのも」

「……」

「ぼくは、この村のためなら。ばあちゃんのためならなんだってやるよ」


 しばらくの沈黙の後、最初に沈黙を破ったのはリヒートだった。その言葉にはおよそ十になろうかという子供のものとは思えないほどの重みを感じる。そしてそう言った少年をなんとも言えないような複雑な表情で見つめる祖母。子供を危険な目にあわすわけにはいかない、が問題も解決しなければならない、その葛藤が混じった表情。


「やるぞ」


 言ったのはガイナ、やっぱりと小さく呟いたのはガブリエラ。

 ガイナの性格上依頼されなくとも勝手にやりそうなうえに心を読んでいたので勿論わかっていた。

 ――まあ、ワタシとしても断る理由もないワケだし、盗賊くらいなら面倒もなくぱぱっと解決できるでしょう。


「いいわよ。ワタシも目の前で困ってる人をスルーできるほどメンタル図太くないの」

「で、でも……」

「ただし、少しの間だけでいいから寝泊まりできる場所と食事を提供してもらえると助かるわ。こういう形にしておけばアナタも気負わずに済むでしょ」

「……なんとお礼を申し上げてよいか。ありがとうございます!」

「いいのよ。で、早速だけど詳細を教えてくれるかしら」

「それはぼくから話すよ」


 外にいる二人を呼んで少しだけ長い話になる、と話の輪の中心に立つ。


「『さて、君達には新しく知ってもらわねばならないことがある。この世界には様々な技術が、未発達だが確かに存在している技術体系があるということを』」


 発せられたその言葉はおよそ少年が発するそれとは全く異なったどこか大人びた雰囲気をまとった言葉だった。

 これから彼らは、魔法とは異なる『超常』を知ることとなる。


 ――旅とは知ること。常に知り学ぶことで己の力としていく。それが世界を救うことに繋がると、無知な頃の俺達は信じていた。それが、滅びへの一歩だとは知らずに……。

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