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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第五幕「異端を排するべからず」
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「act02 回想・始」

 一行はサランバーナに向かう途中物資の補給のため、そしてあわよくば休息をさせてもらおうと途中にある地図にも載っていない、名前もない小さな村に立ち寄っていた。

 村の入口と思しきところに到着した時点で大きな声で人を呼んでみたが返事がない。ウルティーナ村でのことがあるのでかなり神経を張っていたがそれも取り越し苦労だったようでしばらくするとようやっと十歳になろうかというくらいの子供の男の子が現れた。金の短髪、金色の瞳、子供らしい細い手足を持つ少年はその小さな手を腰に当て迎える、というより立ちはだかるといった感じで向かい合う。


「なんの用だよそもの!」

「ワタシ達は旅をしてるものでもしよろしければ何か食料なりを売ってもらえると助かったり、あわよくば宿があれば紹介してくれたりするともっと助かったりするのだけれど、ボウヤは知ってる?」


 しかし少年は頭を横に大きく振り、


「だれがおまえらなんてあやしい奴らを入れるか! じょうしきてきに考えろよこのばか!」

「確かに急に言われてもって感じかもしれんがその言い草はねぇんじゃないのか。もう少しレイギってものをな」


 ……これくらいの少年ならばこれくらい注意深い方が親としては安心なのかもしれない。だがその言葉を聞いたガイナは頭に血が上ったのか一歩踏み出す。なお本人も礼儀など全くもって知らぬ存ぜぬなので完全に知ったか状態である。子供相手に流石に手は出さないだろうが、少し強く言い過ぎでは? と心の中でツヴァイスは突っ込む。


「あやしい人にあやしいって言ってわるいことがあるの? さあ、これ以上一歩でもふみ入れたらダメってんだよ!」

「なにを――」


 一歩踏み出したその瞬間、ガイナは地面と熱いキスをしていたのである。前々から思っていたが土っていうのは意外と情熱的な味がするものだ。

 なにをしてるの、と言いたげなガブリエラの冷たい視線をその身に受けながら立ち上がろうとするが地面に括りつけられているとでも錯覚しそうなほどに身体が重く立ち上がれない。正確に言うならそもそも《《どれだけ力を加えようと身体自体が動かない》》のだ。

 何かを感じたエドガーはガイナに触れると顔を歪める。


「何をした」

 その(子供から見れば)威圧的な態度を見るなり少年はびくり、と肩を跳ねさせた。その瞬間に今度はエドガーがガイナと共に大地の愛を身体一杯に受け止める。

 そこまでしてようやっとガブリエラとツヴァイスは気付く。こんな不可解なことが起こる原因に心当たりなど一つしかなかった。

 この世界では当たり前のように広がっている天使の扱う神秘を借りた技術、魔法である。


「まだ名前は決めてないけどぼくのじまんの魔法なの。とっても強いんだからあやしい奴になんか負けるわけないでしょー!」

「魔力操作、というより魔力に干渉するってぇ言った方がいいか。そぉいう類いの魔法ってのは使用者より魔力量の少ないモノにしか効かねぇはず、だが。こんなガキに負けるたぁ世界はめちゃくちゃに広ぇなチクショウが」

「おじさんすごい! もうそこまでわかったんだ」

「元々オレの魔法は流れを読み取るとかそういうもんだ。性格とは真逆な後方的な魔法に適性があったもんだと思ったがな」


 さて、と切り出したのはガブリエラ。


「そろそろ魔法を解いてくれないかしら。ワタシ達に交戦の意思なんて――」

「そう、おねえさんもぼくの魔法をくらいたいんだ。ならのぞみどおりあげるよ!」


 少年はそう言い勢いよく右手をかざしたが何も起きはしない。

 一瞬の沈黙。その沈黙を破ったのは少年の咳だった。

 見ると口を押えた少年の手からは少量だが鮮血が溢れていた。少年の驚いた表情をみるに持病があるとかいう話ではないらしい。


「魔力に干渉する魔法は確かに強力だけれどそれ故のリスクも当然存在するの。発動条件の魔力量、対象の魔力より自分の魔力量が上回っていれば干渉し操作することも可能だけれど、逆に自分の方が少なければ効果を発揮しないどころか自身の魔力が暴れて身体を壊す。ま、その程度なら『ガブリエル』であるワタシとほとんど変わらないくらいにはあったみたいね」

「っ……。こいつ、とんでも、ないな」

「み、皆さん大丈夫ですか!?」


 少年は弱々しい目でガイナ、エドガー、ガブリエラ、ツヴァイスを睨みつける。元々仕掛けてきたのはこの少年の方で一行は特に何も手を出したわけではないので睨まれる筋合いは全く無いのだがこの年頃の子供あるあるの自分の過ちを絶対に認めないというヤツか。

 と、ガブリエラは何かに気付いたようで、


「待って。魔力操作魔法でワタシに匹敵するほどの魔力量ってもしかしてアナタ、ル――」

「リティー! リティー! 何してるの!」


 村の奥の方から女性の声が聞こえてきてそちらに視線を向けると三十代後半か、四十代前半かと思われるスタイルの良い女性が気持ち急ぎ足でこちらへと向かってきていた。

 リティー、と呼ばれた少年は口元の鮮血を急いで拭うとフラフラとした足つきでそちらへと歩いて行く。


「一体どうしたの。この人達は?」

「ワタシ達は通りすがりの――」

「この人たちはわるいひとなの!」


 女性はガイナ達を見ると首を傾げて、


「この人達は悪い人じゃなくてただの旅の御方みたい。またリティーのはやとちりね」

「だ、だってぇー!」

 それでも自分達を悪者にしたいらしい少年に女性はごちん、と軽く頭を叩いて頭を下げさせたが少年はやはりまだ不満らしい。

 ――この様子は普通の親子のようで、少し羨ましい。


「すみません。実は最近この村は盗賊の被害に遭いまして、それで敏感になってるんだと思います。許してやってください」

「い、いえそんな。こちらも急に、怖がらせたみたいで」


 そんなことがあったのでは過剰に反応してしまうのもわかる、と頷いたのはガイナ。自分達の平穏を壊す可能性のある存在というのは田舎者にとっては想像を絶するほど恐怖の対象なのだと知っているからだ。

 ……しかし盗賊に襲われたという割には特に荒れている様子もない。おそらくはこの少年が先程の魔法でもって撃退したのだろう。あの魔法はたかが盗賊程度が万単位でかかって来ようとも撃退できてしまうだろうと思わせる程には強力なものだと実感していた。


「《《うちの孫》》は力があるのにどうも怖がりで……」


 ――――――――――――――――ん?


「今、なんと?」

「ガイナちゃん、驚きのあまり普段とちゃう口調になってますですよ」

「嬢ちゃんもだぜ」


 少年のおばあちゃん(?)にはとても見えないその女性はその反応も慣れていると言わんばかりににこやかに笑ってみせる。どうみても親子にしか見えないが確かに年配特有の包容感、というか余裕? を感じる気がする。

 ようやっと少年の魔法から解放された男二人は立ち上がるとついた土ぼこりを軽くはたき落とす。地面に押しつけられていたというだけなので特段痛みがあるわけでもないのは使用者が未熟だったからか手心を加えられていたのかどちらかだろう。


「旅の御方がこの何もない村に立ち寄る理由なぞ長く生きていればわかります。ささ、立ち話もなんですのでうちに寄ってってくださいな」

「それはありがたいわね。お言葉に甘えて、行きましょ」


 その言葉を聞くと互いに目を合わせて先に歩みを進めていたガブリエラについていくようにそれぞれも歩き出す。ひと悶着あったものの目的通り休ませてもらえるようでよかったよかったと安心する反面。

 ――さて、利用してやろう、なんていう邪悪な感じは伝わってはこないけれど彼女なりに何か目的がありそうね。これまた大変な予感がするわ。

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