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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第三幕「狂犬は夜に吠える」
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「act04 悪魔との契約」

 四つの刃が同時に駆ける。

 ガイナは氷の短剣を手に誰よりも速くA.T.Cアンチタナトスクリーチャーの脳天へと刃を突き立てる。それというだけで切り口を中心に氷が発生、あっという間に斬りつけたそれは氷像と化した。確かにこれなら殺さず斬らずで行動不能にできる。

 ——やっぱり魔法ってすげぇ!

 正面から来たそれを斬りつつ、左側から来た敵を殴りつけて一瞬隙を晒したところを斬りつける。持ち前の素早さで次々とA.T.Cアンチタナトスクリーチャーを行動不能にしていく。数は多いが四人であれば対処できないほどではない。少なくとも自分は大丈夫だ、と他に意識を回してみる。

 ガブリエラはその場から一歩も動かずに淡々と襲い掛かる犬を氷像に変えていく。それらもガブリエラが要なのを知ってか知らずか一番周りに敵が多いはずなのに、それを一歩も動かずに処理している。あの様子なら加勢にいかなくとも大丈夫だろう。

 また、エドガーも同様だった。流石に近接スタイル故一歩も動いていないということはないが、体力の消耗を防ぐためか必要最低限の動きだけで犬達を撃退している。

この必要最低限の動き、というのが簡単なようで意外と難しい。特に戦闘中とあってはこれがかなり至難の技である。敵に意識を向けなければならないので、無意識のうちに無駄な動きをなくすことをしなければならない。

一体どれほどの修業を積めばこの境地に至ることができるのだろうか。今の自分では彼の戦い方をまねようとしたところで劣化コピーを名乗るのも甚だしいものしか出来上がらない。

 ——今度鍛えてらうのもありか。

そして一番心配だったツヴァイス。彼女も氷の魔法が使えるというだけあって戦えてはいるが、あの山で少し猛獣と戦ったことがある程度の自分同様戦闘の素人である。特にあの山の獣は群れないため基本的に一対一の狩りしかしたことがない。それは自分も一緒で、つまりはこの二人で組んで戦った方が安全であるかもしれない。


「ツヴァイス、手を貸すぜ。何か作戦はあるか?」

「ガイナちゃん!? ……そうだね、お願いしようかな」

 

ツヴァイスは昔から頭が良い。それはガイナに教養がないというだけの話でそれに比べたら数百倍マシ、というものでもなく周りの大人達の問題の解決にも度々手を貸している。この状況、戦闘の素人二人にとって最適な戦い方をツヴァイスが提案してくれるだろうとガイナは考えていた。

 直後ドン、と背中を押されたのはガイナ。バランスを崩し危うく犬に噛まれるところだったが、それを間一髪で避けると斬りつけ醜い氷像を作り上げた。


「な、なにすんだ! あぶねぇじゃあねえか!!」

「ごめんねガイナちゃん。しばらくそこで敵のをおびき寄せてくれる?」

「おびき寄せる? 何か考えがあるんだな、任せろ!」


 敵を集めるよう大きく吠えると周囲にいた数十の犬が一斉にとびかかる。

 これは流石に目立ちすぎたか。時間加速(クロックアップ)を使わなければ逃げられん……ッ!


「ジャスト三秒後にそこから半径五メートルから離れて。それから一秒後にそこにいると《《巻き込まれるよ》》!」


 何をしようとしているかわからんが……。


「わかった、お前に任せる」


 ——三。


「闇に生きる悪魔よ」


 ——二。


「その力をもって」


 —— 一。


「世界を抉れ!」

時間加速(クロックアップ)!」


 刹那、何か黒い丸のようなものがガイナのすぐそばに現れたのが見えた。それの正体への興味は微塵もわかなかった。長年山で生活してきたガイナの野生の勘がこれに触れたらまずいと警告をしていたからだ。

その黒い丸はガイナから見れば少しずつ、現実の時間にして一瞬のうちに大きくなり約五メートル程の大きさまで多数のA.T.Cアンチタナトスクリーチャーを飲み込みながら成長していった。


「こ、これは……?」


 そしてまた一瞬のうちに今度は黒い丸が消滅したのだ。巻き込んだ犬達とともに。黒いものの範囲に入っていたものは木だろうが土だろうがなんの例外もなく消滅してしまっていた。


「アナタまた悪魔と契約して魔法を使ったわね」


 そう言ったのは近くまで寄って来ていた神妙な顔つきのガブリエラだ。犬はすっかりおびえていて四人への攻撃を少しためらっているかのように見えた。本能的に勝てないと察したのだろうか。

 と、今はそっちは重要ではない。ガブリエラはツヴァイスの傍によるやいなやその柔らかな頬を殴りつけたのだ。


「悪魔との契約魔法は闇の中でも深淵の禁忌魔法、代償として《《使用者の寿命を削る》》。今日だけで何回使ったのかしら? 女性に一回、手首はあの人の守護魔法で回復していたみたいだけれど、今で二回。どれだけ寿命を削ったのかしら。アナタならわかるでしょ」

「十年……」

「……普通そこまで寿命を削る契約はない。アナタとんでもないのと契約してるわね? どこでその魔法を習ったの」

「……」

「あくまで話さないつもりね。いいわ、だけどねこれだけは言わせて。これ以上闇魔法を使わないで。下手したら明日死ぬ可能性だってあるのだからね」


 その代わり他の魔法ならいくらでも教えてあげるから、とだけ言うと再びA.T.Cアンチタナトスクリーチャーの方へと向き直す。

 それらはおびえているとはいえこちらが背を向けて逃げ出せば襲ってくるだろうし、何よりこれを解決しないと協会の依頼を達成したことにしてはくれないだろう。だからと言ってやはりこの数を相手にするのはかなり骨が折れる。気が付けばこの山には三百近い魔力反応がある。


「さて、どうするかしら……」

「あぁっはははははははははっ!! 何かお困りのようですわねにっくき熾天使いサマァ!」

「この笑い方、こんの頭にくるしゃべり方は……!」


 声は上からした。いまだ暗くてよく見えていないが確実に空から人が降ってく気配がする。

 やがてガイナのすぐそばに降り立った赤髪紅眼の女性は長い髪を靡かせ自信満々にこう言い放った。


「私が来たからにはもう大丈夫、役立たずの熾天使いなんかには解決できないことも私がスマァァァァトに解決してさしあげますわ!」


 ガブリエラは怒り心頭。敵に囲まれている状況にも関わらず赤髪の女性に敵意をむき出しにして叫ぶ。


「ファイン・アンデ・シュタインンンンンンンンン!!!!」

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