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ファンティーゴ!  作者: 悠季 弓仏(ゆうき ひいろ)
第1章 『黎明の大後悔』
7/12

第7悔 『ルーム神殿』



 遂にその日がやって来た。


 地球暦一一六九(1169)年五月三日――



 エンリケ後悔皇子の『大後悔宣言』後、初めての“後悔”が行われる記念すべきこの日――リゴッド皇国の皇都ルームは朝からまるで後悔の神のご加護でもあったかのような雲一つない晴天に恵まれた。


 そして、『初後悔』の場所となるルーム神殿は朝早くから大勢の人で賑わいを見せていた。


 後悔の神ではないが、太古からリゴッドの守り神として太陽神が(まつ)られているこの神殿は総ヒノキ造り。

 ルームシティから北におよそ二〇キロメートルのところにある霊峰(れいほう)トゥシェ――通称『蒼海山(そうかいざん)』――の(ふもと)から切り出されるヒノキの中でも、特に樹齢(じゅれい)五百年を越える神木だけが神殿の天井を支える四方、八本の支柱となることを許されていた。


 もはや古すぎて一体どのような理由で行われているのか知る者はいないが、神殿は八十八年毎に全て建て直され、その度にリゴッド皇国中を移動する。


 識者によれば、少なくとも千年は続いているだろう歴史だ、と言うのだ。


 現在ルーム神殿は、二十年前の遷殿(せんでん)により首都ルームの南、ズン・ヴァ・ゾン市のコン・ゾン山の頂上にあり、標高は四〇メートルほどだが建国以前の歴史的な築山(つきやま)ということもあいまって、“救国の英雄”エリクソン・シンバルディの『初後悔』の場所としては、まさにこれ以上ない舞台となっていた。


 麓から始まるなだらかな螺旋(らせん)の石段が、いにしえからの約束事どおり四百九十五段を重ね神殿へと届く――。


「冗談じゃないぜ……何が楽しくてこんな場所で……」


 見物客が詰め込まれた狭い登山道の途中で、ボボンは愚痴(ぐち)をこぼしながら折った草の茎を振り回していた。螺旋石段はもとより山腹にも人があふれかえり、まさに「黒山の人だかり」を体現していた。


 その様子を見て、親友のクリストフも微笑みながら言う。

「とかなんとか言いながら、今朝はやけに早起きだったじゃないかフェルディナンド! 迎えに行ったら、すでに朝食まで食べ終わっていたものな! “後悔”とはどんなものか気になって仕方なかったのだろう!?」


「フン! 馬鹿言うなよ。今日はたまたま……アレだ! 昨日の昼に寝過ぎたんだよ」 

 鼻で笑っただけのつもりだったがボボンは満面の笑みを顔にたたえていることに気付き自嘲(じちょう)した。


 ボボンだけではない。リゴッド中の市民がこの調子だった。


 『大後悔宣言』時の観衆五万人を越える勢いの民衆が、コン・ゾン山とその麓のコン・ゾン公園に集まろうとしていた。

 当然ながら、市が運営するちょっとした公園に収まりきれる人数ではなく、後悔予定時刻の正午を迎える頃にはコン・ゾン山に隣接する陸上闘技場と球技場までもが開場され、収容人数の限界まで人をため込んでいた……。




 第7悔 『ルーム神殿』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆





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