第13悔 『その劇団、リゴッド悲喜劇流』
前悔までの『ファンティーゴ!』は……。
リグレド大陸4169年、春のおわり――
リゴッド皇国第二皇子エンリケは突如として“後悔皇子”を名乗り、皇国民に「人類革新のために後悔すること」を奨励した。
長年の片思いの恋人ノニーが海外留学して意気消沈していた“ボボン”ことフェルディナンド・ダーガーは、竹馬の友クリストフ・コンクーに誘われ仕方なく“後悔”に興味を示す。
しかし、コン・ゾン山のルーム神殿で行われたエンリケ後悔皇子公認の初めての“後悔”は想像を絶するものだった。
“後悔”のために神殿の石段を転げ落ちた“救国の英雄”エリクソンが瀕死の重傷を負ったとき、ボボンを含めた皇国民は一斉に弾けた。
大後悔時代の幕開けである。
リグレド大陸4169年5月2日――
皇都ルームの戦勝記念広場『みんなの庭』での“後悔皇子”エンリケによる『大後悔宣言』から二日後。
つまり、コン・ゾン山での初めての公の“後悔”の前日……。
〈ドンガラガッシャ~ン! ドテッ!〉
「だんちょ~う! やっぱり無理ですよ~!!」
コン・ゾン山の麓の公園に隣接した陸上闘技場の選手控室に、三銃士一の長身ながら可愛げも併せ持った女性隊員キャスの声が響き渡った。
今、まさに艶やかなる男ロニーを肩車で持ち上げることに失敗し、真っ逆さまに床に叩きつけてしまったところだ。
「はぁ……どうも俺たちはとんでもない仕事を請け負ってしまったのかも知れないぞ」
いかにも、荒くれ者たちが調度品を手荒に扱ってきた、といった感じのズタボロにされたソファに深く腰掛け、異様に長い数本の前髪を指でつまみ、何度も撫で伸ばしてはため息をつく『後悔三銃士』のリーダー、タイタスが呟いた。
昨日からずっとこの調子で稽古が続いていた。キャスが部屋中央の床に座り込み、疲れ切った表情で隊長を睨みながら言う。
「団長~、おなか空いたよぉ! もう辞めて帰りましょうよ~!」
「そうは言っても僕たちにまわって来た空前絶後の大チャンスなんだからさ。報酬も破格だったし……」
逆さまに頭から落ちたままの体勢で艶男ロニーが冷静にキャスを諭す。
「それにな、キャス。団長じゃないぞ。これからは隊長と呼ぶ練習もするんだ」
タイタスが優しく訂正を促した。
そう、三人はほんの二週間前までいわゆるドサ回りの貧乏劇団員であった。
団長のタイタス以下たった五名の劇団。役者三人と裏方二人の小劇団。
その劇団名を『ゴシカ』と言った。地方の公園や広場を回っては自分たちで仮設の舞台を組み、『リゴッド悲喜劇』を中心に公演してきたのだ。
そんなある日の公演後、舞台の撤収をしている役者組のタイタスら三人に「ブラーボ!」と言いながら近づいて来る者があった。
「そこで、諸君らに長期間の公演を極秘で依頼したいのだが」
その右手に杖をつき、穏やかでいて堂々とした存在感の持ち主は名を「トスカネリ」と名乗った……。
第13悔 『その劇団、リゴッド悲喜劇流』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆




