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よいこのための、さいゆうき  &  西遊記の現代科学  作者: 何十億人か目の西遊記ファン
4/21

花果山の位置(西遊記第1回から)

西遊記の真面目な「科学」の、その1です。旧サイト閉鎖に伴っての移転です。


旧自サイトでも宣言したように著作権は放棄します。(原作者を騙らない限り)改変・使用はご自由にどうぞ。

 西遊記では、南瞻部州を中国と見立て、大海を隔ててその東に東勝神州、海路または陸路から行ける西の浄土を西牛賀州、夷の住む北の荒れ地を北倶盧州と想定して、世界を構成している。


 東に神州を想定したのは、そこが深遠なる海であり、台風(中国視点だと南というより東から来る)とか太陽とかいった人知を越える壮大なものが来る方角だからである。

 北に荒れ地を想定したのは、太陽高度からくる寒さが大きいが、それ以外に、荒れ地故の巨人を想定したからである。例えば荘子によれば、彼の文章の冒頭を飾る偉大な「鵬」という鳥、現代的にはフェニックスというのだろうが、この鳥の住処が北倶盧州である。しかも、その土地に住む者は夷と呼ばれて恐れられた。


 西遊記の冒頭の舞台は東勝神州の中の傲来国である。

 東勝神州という耳障りの良い土地は、方角からして古より日本かも知れないと信じられ、それ故に神州日本という言葉が生まれて、石猿の代わりにニホンザルが桃太郎や六天魔王に従ってひと暴れした。最近は、と言っても1世紀前の話になるが、大正デモクラシーを殺して、結果的に日本は西太平洋の覇権を失い、それが塞翁が馬で巡り巡って世界の繁栄の礎となった。

 この悲劇的猿芝居は歴史の話であって科学には関係ないが、東勝神州傲来国の位置を同定する事は地学という学問の一領域である。

 

 中国の東の海に面した国と言えば、日本と琉球と台湾とフィリピンしかない。そのどれかが東勝神州傲来国のモデルの筈だ。いやアメリカがあるという者もあろうが、中国にアメリカの伝承が伝わったとは思えないので無視しても良いだろう。


 東勝神州や傲来国の位置を決める際に参考になるのが花果山の記述である。

 花果山という島は傲来国の海の沖にあり、鳥と獣の楽園である。更に第28回の記述から、一度は山が完全に天兵の火で焼かれて、その後に悟空の植樹活動が功を奏して緑が復活した事になる。植樹については後述するが、とにかく天兵の火に焼かれた記述は火山の噴火の記述に他ならない。

 それが噴火と言う形で記述されていないのは、ひとえに中国に、有史以来本格的に噴火した活火山が存在しないからである。正確に言えば、台湾近海の海底火山が噴火しているが、それはあくまで水底での話であって、山を焼くものではない。

 火山噴火という現象が有史以来起こらず、人々の想像に任せざるをえない中国本土において、噴火という現象は海の夜空の一角を明るく燃やす、人為的な大火事として解釈されるだろうし、その規模から、人ではなく天兵の焼き討ちとして解釈されるのも、当時の知識では仕方ないだろう。本邦だって近代になってすらオーロラが火事と間違えられて消防車が出動したこともあるのだ。

 それは花果山という言葉にすら反映している。花果山とは、すなわち、花の咲き誇る火山島であり果物の豊富な火山島である。


 噴火の記録を持つ火山島は多く、山全体が焼ける例も少なく無い。最近の例では1973年に新しく小笠原諸島・西ノ島のすぐ横に生まれ、その後、西之島より大きくなった挙げ句に繋がったた西之島新島がある(*1)。

 だが、日本・琉球・台湾・フィリピンの本島から離れた島の大型噴火となると数が限られてくる。このうち台湾の近くに噴火記録の残る火山は無い。台湾と琉球のラインにそのような活火山は一つもないのである。西南諸島の火山はすべて琉球本島と九州との線上で起こっている。

 台湾は西遊記の時代から中国の属国あるいは一部だが、そこですら噴火を見るのは出来なかったのである。

 一方、日本近海での火山島と言えば、北を除けば霧島火山帯の島々と富士火山帯の島々である。それはいずれも日本の南に位置し、その南端は同時に琉球の北と東にも位置する。一方、日本とフィリピンはいずれも本島に多くの火山噴火がある。

 では、これらの火山島のどれが花果山なのか? それを知るには傲来国の位置を知るべきだろう。


 日本本土やフィリピン本土は外してよいだろう。

 いずれも火山を知っている国であり、その近海での噴火が西遊記に影響を与えたとしても、噴火(地下現象であって天が起こす現象ではない)を知ってる者による伝承記録が悟空の物語に反映する筈であって、天兵という考え方も出て来にくくなるだろうからだ。

 対する琉球は火山が無い。沖縄本島から遠くない北の島々にこそ火山はあるが、直接行くことは滅多に無いので、火山噴火という珍しい現象を体験する者は皆無に近いだろう。それでいて、これらの火山島の活動により、数十年単位で遠目にも分かる噴火が起こる。たとえば、一番近い活火山である硫黄鳥島では、近世でも何度も爆発を繰り返し、島民避難に至っている。

 これらを総合すると、傲来国の候補として琉球が一番にあがろう。


 更に決定的な記述が第8回にある。釈迦が三蔵経の頒布方法を相談する際に、東勝神州の民のことを「気性が穏やか」と評している。要するに戦を好まないという意味だ。この一言から、琉球と日本のいずれが東勝神州に当たるか自明であろう。釈迦の言葉を借りれば、日本は残念ながら南瞻部州か北倶盧州のどちらかなのである。

 かくて、地学的考察並びに歴史学的考察の両方から、東勝神州傲来国のモデルは琉球に違いない。この傲来国の更に東の海の中に花果山はある。

 花果山は小笠原諸島か奄美諸島のどちらかに属する火山島に違いない。


written 2006-4-9

*1 昨今、活動が更に激しくなって、陥没の恐れまで出てきたのは周知のとおりだ


2020-9-19 言い回し修正

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