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5.「ようこそ異能調査部へ」

 気が付くと俺は縛られていた。

 椅子に座らされ、麻縄で手足や胴体をグルグルに巻き付けられている。

 動かそうとするがビクともしない。

 どうやら誘拐されてしまったらしい。


 まさか最悪なパターンの一つになってしまうとは。

 恐怖で全身から冷や汗を掻いてしまう。


 そもそもここはどこなんだ?


 周囲を見回すが、暗くて何も見えない。

 確認出来て自分の足元くらい。

 本当にここはどこなのだろうか。



「お!やっと目が覚めたようね」


 どこからか女の人の声が聞こえた。

 しかも一人だけではない。


「・・・・・・」

「ハクギンちゃん、ゲームばかりしてないで、少しは歓迎しよ」

「全く大変だったんですよ?持ち運ぶの。少しくらい感謝してほしいですね」


 声は四つ存在していた。


「だ、誰なんだ!俺を拘束して、一体何をしようってんだ!」


 手足の自由を奪われた俺が唯一取れる行動は、大声を上げることだけだった。



 すると、突然部屋の照明が点いた。

 焼き付けるような光は直視することが出来ず、思わず目を瞼で覆ってしまう。

 それからゆっくりと目を開いた。

 まず目にしたのが、俺を誘拐したであろう大空リオと他三人の女子生徒の姿だった。


「ようこそ、≪異能調査部≫へ!」


 ツインテールのギャルっぽい女子生徒がそう言って歓迎してきた。



「あのー、一つ聞いていいか?」

「いいわよ。ただし、質問によってはあんたを半殺しにするけど」

「いや、もういい。今のあんたの発言が質問の答えだから、いいわ」


 要するに、下手な発言をしたら危害を加えるということなのだろう。

 あまり余計なことを言わないようにしよう。


「そ、それであんた達は何なんだ?」


 まあ、これくらい当たり障りのないものなら、別に問題はないか。



「いや、だから異能調査部って言ってるじゃん」

「その異能調査部ってのは、何なんだ?どんな部活だよ?」

「え?・・・・ああ、そっちね。リオ説明してなかったの?」


 ギャル少女は隣にいるリオに問いかけた。


「ああ、すみません。説明する前に断られたものだから、全くできませんでした」


 テヘッと舌を出して可愛さアピールをするリオ。

 はっきり言って、結構ムカついた。


「全くしょうがないわね。いいわ、あたしが説明してあげる」


 その後、長々と自己紹介を合わせた部活の紹介が行われた。



 ≪異能調査部≫。

 学校非公認の部活で、主に異能力者が引き起こす事件を調査する部活である。

 ネットの書き込みや学内の情報通者からの情報を頼りに活動をしている。

 要約すると、こんな感じだ。



 ギャルっぽいツインテールの女子生徒は、園華カレン。

 一応、彼女がこの部活の部長らしく、俺と同じ二年生だ。



 小柄でこちらに目も暮れず携帯ゲームで遊んでいる女子生徒は、城都ハクギン。

 こちらも二年生だ。



 黒髪ロングで眼鏡をかけた女子生徒は、清花チユ。

 ハクギンを注意していた人で、俺より一学年上の三年生だ。



 俺にラブレター風の手紙を渡し、スタンガンを喰らわせた張本人である、大空リオ。

 生憎ショートヘア以外、特にこれといった特徴はない。

 因みにこいつも俺と同じ二年生だ。



 と、こんな具合で部員の大体の特徴と学年を紹介してきたが、実はまだ他にも二人部員がいるらしい。

 正直、まだいるのかよ!とツッコミたくなった。

 その二人に関しては、今度会った時に紹介すると言っていた。

 まあ別に興味はないが。

 というか「今度」と言っているということは、俺は入部する前提なのか?



「てな訳よ、分かった?」

「おう、分かった。分からんけど、分かった」

「そっか、なら良し!」


 いや、良いのかよ!?


 まあ要するに、説明するよりも入部させることが重要なのだろう。

 なぜなら説明が端的過ぎて、細かいところは全く教えてくれなかったのだ。



「つーわけだから、あんたうちの部活に入れ」


 そう言ってカレンは入部届を差し出してきた。


「お前ら、何が何でも入部させたいんだな」


 四人はほぼ同じタイミングで頷く。



「てか、学校非公認なんだから、書類に書く必要なくない?」


 俺が疑問を述べると、カレンはそれに答えた。


「あるのよねー、それが。確かに異能調査部ってのは非公認だけど、実際ここ正式な部活である環境福祉部なのよねー」

「いや、ギャップ!ギャップがおかしいだろ!」


 これには俺も思わずツッコミを入れてしまった。



「まあ、そういう反応になるよね」


 と、苦笑いを浮かべたチユが呟く。


「一応、そっちの活動としては町内のゴミ拾いとか、草むしりとかをしているかな。まあ基本的にそっちが主な活動だよ」

「結構真面目な部活だった!」


 最早驚きすぎて、心の声駄々洩れ状態である。



「まあ、そういうことだから。はい」


 そして強引に話をまとめて、カレンは入部届を突き出してきた。


「いや、そういうことって・・・・・・はぁ」


 なんだか真面目に会話するのがバカらしくなってきた。

 どの道、入部しないと解放してくれそうにない。

 断ればどんな目に遭うか、想像したくない。



「分かった、入部するよ。だから縄を解いてくれないか?」

「おお、そうか!」

「ただし、一つ聞いていいか?」

「?」

「何で俺をそこまでして入部させたいんだ?」


 すると、四人は少し困ったような表情を浮かべて黙り込んでしまった。

 お互いの顔を見つめ合い、まるでどう答えるべきか悩んでいるようだ。


「今は詳しいことは言えないけど、これだけは言えるかな」


 カオリは険しい表情で言葉を続ける。


「あんたが必要になったから」


 拘束を解いてもらった後は、そのまま帰してくれた。

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