表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

4.「君に伝えたいお願い」

「なんやかんやで来てしまったな」


 屋上の扉の前で、俺は頭を掻きながら呟いた。

 まるで、ダンジョンでボスの部屋の扉の前に立っている気分だ。

 中に入るか、背を向けるかの二択である。

 因みに、気持ち的には後者の方。

 つまり、滅茶苦茶ビビっているということだ。



 俺は扉の向こうに誰がいるのかで心配している。

 一番望ましいパターンが自分に思いを寄せている女子がいること、それ以外の大体が最悪なパターンということになる。

 下手をしたら大怪我を負う可能性だってある。


 コェ~、めっちゃコェ~、今すぐ帰りてぇ~よ!


 一日中、手紙を貰ってから行くか行かないかでグズグズ悩んでいた挙句、やっと覚悟を決めたかと思えば、直前でウジウジしている俺。

 正直、自分でもここまで情けない人間だとは思っていなかった。



 ああもう腹括れよ、俺!覚悟決めろよ、俺!


 そう自分に言い聞かせ、なんとか身体を動かそうとする。


 行ける!行けるな?行けるよな?行くぞ!行こうぜ!


 気持ちが向上していき、やっと身体が前へと動き出した。


「頑張れ、俺!」


 掛け声とともに、勢いよく扉を開けた。



 晴天の空を背景に、屋上に一人の少女が立っていた。

 俺が来たことに気付いたようで、少し頬を赤らめてモジモジし始める。


 あ、絶対あの子だ!


 そう確信を持ち、いたのが不良とかじゃなくて良かったと安堵する。

 しかし、まだ安心はできない。

 まだ状況証拠だけだから、不明な点もいくつかある。

 気を抜けない。



「き、君かい?この手紙を書いたのは?」


 俺は手紙を掲げて質問してみた。


「そうだよ」


 素直に答える少女。

 ということは、彼女が『大空リオ』本人なのだろう。


「そ、そうか、君だったのか。そうかそうか」


 テンパるあまり、ぎこちない返答をしてしまう。



 ヤバい!緊張で頭真っ白になりそう。


 もう既にこの状況にパニックを覚えている俺。

 それもそうだ、女の子に呼び出されること愚か、会話すら久々なのである。

 正直、何を話せばいいか分からない。


「え、えっと・・・・今日は暑いっスね〜、ほんと。夏かってくらいで、ね?あつはなつい、なんて・・・・」


 何言ってんの、俺?バカだろ!


 最早、緊張し過ぎて自分でも訳の分からないことを言い出していまう。



 チラッとリオの方に視線を向けると、ポカンとあんぐりしていた。


 あ、これ、滑った奴だ!


 とんだ赤っ恥を掻いた気分になり、死にたくなった。

 このままでは埒が明かない。

 そう思うと、俺はここで本題を切り出すことにした。



「あ、あの、それで俺に伝えたいことって、何?」


 するとリオは我に返ったように、慌てて話し出す。


「あ、はい、実は貴方にどうしても伝えたいことがあるの」


 そう言われると、自分の中で緊張感が走った。


 え、これ、もしかして告白される感じ?マジなの、え?


 俺の中で期待値が徐々に上がっていき、期待半分、不安半分の状態になる。

 告られたら「はい」と答えよう、と何度も心の中で連呼しながら、次の発言を待つ。


「実は貴方に」


 き、来た!





「貴方に≪異能調査部≫に入ってほしいの!」





「はい、喜んで・・・・・・はい?」


 俺は予想外の発言に呆気にとられてしまった。


「え?今なんて?」


 聞き間違いだと思い、もう一度問う。


「だから、貴方にわたしたちの部活に入部してほしいの」

「・・・・・・」



 俺は頭の情報処理が遅れたせいで、その後の発言がすぐに出てこなかった。

 そして、それがやっと完了したところで、出た言葉がこれである。


「ぶ、部活の勧誘かよっ!!」


 イタズラでもカツアゲでもなかったが、まさか部活の勧誘をされるとは思いもしなかった。



「いやいやいや、ちょっと待って!え、もしかしてそのために?そのためだけにあんな下駄箱に手紙入れたり、屋上に呼び出したりしたの?」


 俺が聞くと、リオはコクリと頷いた。


「だってその方が来てくれるかなって思ってさ。ほら、男子ってラブレター貰ったら、絶対行くでしょ?」

「どんな偏見だよ!・・・・いや、実際に俺来てるか・・・・じゃなくて!」


 なんて一人コントをしてしまう俺は、少し不可解に思う点があった。


「何でそんな大掛かりなことを?それに部活の勧誘なら、直接教室に行って伝えた方が良かったんじゃ・・・・」


 するとリオは目を泳がせながら、言い難そうに答える。


「それはそのー、深い理由がありまして・・・・ですね・・・・」

「理由?」


 眉間にシワを寄せて、さらにその理由を聞こうとした。

 が、すぐにはぐらかされてしまう。


「いえ、そんなことより返答はイエスでいい?」

「いやイエスな訳ねぇだろ、バカ!紛らわしいわ!」


 まあ、当然の返答をしたと思う。



「つーか何だよ、その異能調査部って?言っとくけど、そんな怪しい部活には入らないからな」


 そう吐き捨てて、立ち去ろうとした。

 次の瞬間だった。


「ふぎゃっ!?」


 突如、背後から痺れるような激痛が走ったのだ。

 全身の力が抜けていきそのまま倒れてしまう。

 そして、意識が朦朧とする中、視界に入ったのはスタンガンを構えたリオの姿だった。


「いや・・・・・・何でそんなもん・・・・持ってんの・・・・ぐふっ」


 直後、俺の意識は完全に途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ