1.「俺には関係ない」
更新遅れてすみません。
更新は不定期となりますが、楽しんで頂けると幸いです。
では、本編をどうぞ!
「おっっっっっっっっ、きっろーーーーーーーーーーーーっっっ!お兄ぃぃぃぃぃぃちゃぁぁぁぁん!」
ドッスウウウンッ!
「へ、ブらっ!?」
俺の腹部に衝撃と痛みが走った。
「いつまで寝てんの?起きろ起きろー!」
セーラー服の少女が身体をバタつかせる度に、メキメキと身体の節々が軋む。
「や、やめろ・・・・・・起きてるから・・・・今すぐ起きるから・・・・でないと、永遠の眠りに付いちまう」
「そーか、なら我を退かしてみるがいい!」
ハハッと高笑いをし、更に激しく動こうとする。
「いや、伝わらなかったらごめん。これ死んじゃうって意味だから、妹の体重で押し潰されて死んじゃう奴だから・・・・ああ、死ぬわこれ」
「おいそれ、一周回ってわたしが重いって言ってるってことだよね?」
「何でそう言うところだけ感が良いんだよ」
「うわー傷ついたわー。妹のピュアな心が兄の心無い言葉で傷つきましたわー」
「ウザッ、てか早よ退けよ」
上に乗っかっている妹が退くと、俺は上半身を起こした。
先程のダメージが残っているようで、身体の至る所が痛い。
まあいつものことなのだが、それでも寝起きはいつも最悪である。
「お前その起こし方なんとかなんねーのか?それで俺毎朝ボロボロの状態で学校に登校してんだからな。ちったー普通に起こせよ」
「わたしが嫌いな言葉、普通。はい残念でした。明日以降も死ぬまでこの起こし方で起こします!」
「何じゃそりゃ!?てか、冗談じゃねぇよ!いつかそれで死ぬわ!」
「死ね」
「コラッ!」
と、まあそんなこんなでこの俺、神代ナツカの一日がスタートする。
まあ、この時点で割と体力は消費しているが、特にそれで何かあるという訳ではない。
ただ、そろそろマシな起こし方をしてほしいというのは事実である。
それに妹、神代ナツナも来年から高校生だし、もう少し年相応な振る舞いをしてほしいものだ――――――――期待はできないが。
「とにかく早く着替えなよ。朝飯もうできてるから」
「・・・・お前な」
本当に気分屋だよな。
口には出さなかったが、溜息までは抑えられなかった。
「わかったわかった。着替えたら行くから」
「りょーかい!愛しているぞ、おに~ちゃん♡」
「!?」
一瞬、体温が氷点下まで下がったような感覚が走った。
心にもねぇことを。
なんて陰口を言っていることも知らずに、能天気なナツナは部屋から出ていった。
最後まで見送った後、身支度を済ませようため、ヨロヨロと立ち上がった。
「ってて、あいつほんと手加減しないよな」
そんなことをぼやいて痛みに耐えながら、なんとか制服に着替えた。
最後に置き鏡で確認し終えると、俺は部屋を出た。
リビングに入ると、テーブルに朝食を並べてナツナが待っていた。
「遅いぞ!お兄ちゃん」
頬を膨らませて、わざとらしく怒っているアピールをする妹。
「遅いって・・・・、しょうがねぇだろ?誰かさんのせいでこっちとら身体がボロボロなんだよ」
「知らなーい」
「っのヤロー」
そっぽを向くナツナに苛立ちを感じながら、俺は椅子に座った。
「母さんたち、もう家出たのか?」
「わたしが起きた時にはもう出てったよ。だから、口うるさいのが減って助かったわー」
「チクろっかなー、一応腹いせ込みで」
「あーごめんごめん!何でもないです!何も言ってないです!」
フフンと鼻で笑いながら、俺は朝食を口に運んでいく。
「まあ、言葉に気を付けような」
「・・・・わ、分かった。分かりました!」
そう言うと不服そうにガツガツと白飯を平らげた。
「んぐんぐ、あのさ、ちょっとテレビ付けていいかな?もうそろそろ星占いの時間だからさ」
「ああ、別にいいけど」
ナツナはリモコンを手に取り、テレビの電源を入れた。
『それでは次のニュースです』
画面の向こうからアナウンサーの声が聞こえると、俺もなんとなく視線を向けた。
テロップには、高校生三人が銀行強盗をしたと記載されていた。
『昨日未明、都内で――――』
「!?」
次に映し出された映像、そこには悲惨な光景が広がっていた。
壁や地面がズタズタに崩壊しており、所々に巨大なクレーターが抉られている。
まるで特撮でよく見る、怪獣が街を荒らした惨状の跡みたいだった。
無論、実際に街で怪獣が暴れた訳ではない。
紛れもない人間の仕業だ。
ただし、『異能力を持った特殊な人間』である。
俺はしばらく、画面に映し出された惨状を見つめていた。
「消そうか?」
不意を突かれたように声を掛けられ、思わず身震いをすると、俺は返事を返した。
「あ、ああ、大丈夫。俺もうすぐ家出るから」
俺は急いで朝食を口の中にかき込むと、食器を流し台に持って行った。
「お兄ちゃん」
呼び掛けられるや否や、視線をナツナの方に向けた。
先程まで明るい表情だった妹は、どこか険しく憐れむような顔になっていた。
「あまり悲観的にならないでよね。別にお兄ちゃんがやった訳じゃないだからさ」
そう言われてしばらく黙ってしまった。
そして、満面の笑みを作って言葉を返す。
「ああ、分かってるよ」
俺はブレザーのポケットから、腕時計上のデバイスを取り出した。
「そのための『これ』だろ?心配すんなって、もう危ねぇことには首突っ込まねぇから」
そう言ってナツナの所に歩み寄り、優しく頭を撫でた。
「もう、二度とな」
それから俺はリビングを出ていった。