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<エピローグ>

<エピローグ>




 一台のヘリが飛んでいた。

 軍用のものなのか、かなり大型のヘリコプターだ。

「あとどれくらいで着く?」

 その中で補助席に座っている、能面のような顔をした女性が操縦士に聞いた。

「今……大体静岡県を出たところですので、まだ結構かかりますよ。お休みになってはいかがですか?」

 達磨のような小太りの操縦士が、あからさまに作った笑顔で答える。

「こんなに気が高ぶっている状態で寝れるものか。くそ、伊藤を紀行園の警察相手に残しておくべきじゃなかったな。八つ当たり相手が居ない」

 石井は心底残念そうにそう言った。

 ガタンッ!

 何かが石井の耳に聞こえた。丁度真後ろから鳴ったようだ。

 今このヘリに乗っている人間は自分と達磨のような子男だけ。背後から音が聞こえるはずが無い。

 石井は気の所為だと、確認もせずに自分を納得させた。

 そのままふと思い出した様に独り言を話しだす。

「高橋志郎をディエス・イレに引き渡したのは間違いなくキツネだ。あの男め……イミュニティーに内緒でそんなことをするとは……。昔から怪しい奴だとは思っていたが、やはり何かたくらんでいたか。まるで六角行成と高橋志郎の接触を防いだかのようだ。あいつの立場からして六角行成に敵対するとは思えないんだが……まあいい。全ては私が六角に話せば明らかになる。それまでは、じっくりとこの事実を楽しもう」

 ザッ……ザッ……

 今度は明らかに足音のような音が背後から聞こえた。

 流石に石井もこれが気の所為とは思えなくなった。

 ――ヘリが飛び立つ前にディエス・イレのスパイでも紛れ込んだか?

 前を向いたまま懐のナイフを片手に持ち、シートベルトをこっそりと外す。

 ザンッ!

 足音がまさに自分が腰掛けているシートの真後ろにまで来た瞬間、石井は勢い良くナイフを突き出し、振り返った。

 そして――そのあまりにも予想だにしない、ありえない光景に愕然とする。

「――ばっ、馬鹿なっ!? 何故お前が……!?」

 長い強めの癖毛に高い身長。石井の目の前に東郷大儀が立っていた。

「何故だと? 俺はずっとここに居た。お前が俺をこのヘリに運び込んだんだからな」

 口元を緩ませながら面白そうに笑う東郷。その右腕は赤く大きくなり独特の形を形成している。

「ま……まさか……! 東郷、お前!?」

「そうだ、赤鬼は俺だ」

 その言葉と同時に、東郷は石井の心臓を真っ赤な右腕で貫いた。

「がっ――! ぐあっぁああ……!?」

 尋常では無い量の血がヘリの床に流れ落ちる。

「くっ、そ……おい、操縦士、ヘリを落とせ……こいつを殺すんだ……!」

 僅かに残った意識で石井はそう呟いた。だが――

「何故ですか? 私の仕事は赤鬼、つまり東郷さんを運ぶことです。何で落とす必要があるんですか?」

「なっ、何だとお前!?」

「煩い。さっさと去れ!」

 東郷は石井の体をヘリから投げ捨てた。

 瞬く間に見えなくなる石井の姿。

 そんなものには一切構うことなく、東郷は操縦士を見た。

「……タヌキ、ご苦労だった」

「いえ、とんでもない。私は東郷さんのためならどんな事でも出来ます」

「すまないな、お前には本当に感謝している」

「これからどういたしますか?」

「決まってるだろ。イミュニティーを潰す。既に準備は整っているんだ。俺の体の暴走も大分収まってきたことだし、もう問題は無いはずだ」

「かしこまりました。では……直ぐにアジトへ向かいます」

 タヌキは笑顔で操縦桿を倒した。

「ふふふ、待っていろ六角行成……もう直ぐ、もう直ぐ……ふはははははっ!」

 三日月の出ていた空は曇り始め、大きな不快な闇だけが空を満たしだしていた。

 まるで東郷の心を表すかのように。

 ただ暗黙と……。









ご愛読ありがとうございました!

これにて尋獄2は完結です。

いつになるかは分かりませんが、番外編の2本をそのうち投稿いたしますので是非御覧下さい。


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