アサシン・バレンタイン
もうそろそろバレンタインね!
先輩:♂
物静かな人で感情をあまり面には出さないタイプ。
後輩のノリにはついていけないと思っている反面、自分が手綱を緩めたら大変なことになってしまうと思っているため解散はしない。
後輩に若干の親心を覚えている。
後輩:不問
めちゃくちゃ元気、見られても殺してしまえばモーマンタイをモットーに暗殺稼業をしている。
舞台:とある富豪の屋敷の狭い一室
ターゲットが1人になる頃まで待ち伏せしていると後輩が暇を持て余し話題を振る
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先輩「屋敷の人間が主人だけになるまで10分……といったところかな」
後輩「その情報、本当に合ってるんですかね?」
先輩「合ってないと困る。僕たちは上の命令で暗殺するためにここに来たんだからね」
後輩「しっかし、ただ待つというのは退屈ですねぇ。
そうだ先輩、なにか話しましょうよ」
先輩「変なこと言わないでよ。あんまり騒ぐと屋敷の人間に気付かれるでしょ」
後輩「大丈夫ですよー、バレたってぇ殺しちゃえばバレたことになりませんから」
先輩「考えが相変わらず物騒だね」
後輩「そんな先輩、褒めないで下さいよーもー!」
先輩「褒めてない褒めてない」
後輩「んー……あっ、そういえばもうそろそろですね。バレンタイン」
先輩「そうだね」
後輩「あんまり興味無さそうですね
先輩って彼女とか居ないんですか?」
先輩「今は、居ないかな」
後輩「今は……ってことは昔は居たんですか?」
先輩「あぁ……僕には勿体無いくらいの完璧な彼女がね」
後輩「別れたんですか?」
先輩「別れた……うん、別れたってことになるのかな」
後輩「どうして別れたんですか?」
先輩「随分と聞いてくるけど、そんなに興味の湧く話?」
後輩「そりゃ気になりますよ
あの偏屈な先輩を射止めたまさにスナイパーのような元カノさんの話は」
先輩「誰が偏屈だ」
後輩「教えて下さいよー、せーんぱーい」
先輩「聞いたらおとなしくする?」
後輩「しますします!
お口チャックします!」
先輩「あんまり信用ならないなぁ」
後輩「ちょっとは信用して下さいよ。僕たちもう3年の付き合いじゃないですか」
先輩「3年の月日が信用度を無くす貢献をしたと気づいた方がいいと思うよ」
後輩「わー!先輩辛辣っ!」
先輩「ちょっと、静かに」
後輩「んぐっ……」
先輩「ここがターゲットの屋敷だって再認識した方がいいんじゃないかな?」
後輩「んぐぐぐぐ〜!」
先輩「……はぁ、この依頼が終わったら上に解散申請出そうかな」
後輩「けほけほっ、すいません……」
先輩「で、何が聞きたいの?」
後輩「全部ですかね!」
先輩「随分と大雑把な……
彼女とは高校で同じクラスでね
当時の僕は周りと馴染めなくてね
いつも1人だったんだ」
後輩「今もなーんか1人で居ることが多くないですか?」
先輩「茶々を入れない
そんな日々を過ごして、バレンタイン当日に事は動き出した
そう、彼女が話しかけてきたんだ」
後輩「おぉっ彼女から!」
先輩「落ち着いて」
後輩「あっ……」(口元を抑える)
先輩「僕はその時、素っ気ない態度を取ってしまったんだ。
話しかけられたことは……正直嬉しかった。
でもね、今考えるとしょうもない勇敢さだったのかもしれないけど、クラスで孤独だった自分と仲良く話そうなんてしたら彼女も嗤いのネタにされてしまう。
そう考えて、その喜びを隠していたんだ」
後輩「それで、諦めたんですか?」
先輩「それがぐいぐいと話しかけてきたんだ。
びっくりだろう?彼女は馬鹿ではないのだから自分が相手にされていないことなど分かっていたはずなのに」
後輩「実は嬉しかったのが表情に出ていたとか」
先輩「……さぁ、どうだろうね。
聞いたことはないけれど、感情を表に出さないことは当時から得意だったから違うと思うよ」
後輩「なんでちょっと得意気なんですか」
先輩「そう見えるならその目、くり抜いた方がいいんじゃないかなぁ?顔に出やすい人間が暗殺者なんて仕事やらないって」
後輩「訓練じゃなくて自前だったんですか……」
先輩「……ゴホンッ
とまぁ、このまま横着してても周りから変な目で見られると覚悟して、受け容れたんだ
そしたら彼女、ピンク色のリボンでラッピングされた真っ赤な綺麗な箱を渡してきて」
後輩「おぉ、チョコだ!」
先輩「『誰も居ないところで開けてね』なんて艶かしく言われたら、流石の僕もその時は柄にもなくドキッとしちゃってさ。
それで、休み時間に急いでトイレに駆け込んで中身を確認したんだ」
後輩「おぉー、先輩が年頃の初々しい行動してるぅ」
先輩「そしたら中には」
後輩「中には!」
先輩「……何も入っていなかった」
後輩「……え?何も入ってなかったんですか?」
先輩「そう、何も入ってなかったんだ」
後輩「あんまりにも周りと馴染まないからからかわれたんですかね?」
先輩「僕もそう思って、ゴミ箱に捨てようと思ったんだよ
……そしたら気付いたんだ。
蓋の内側、紙が貼ってあることに」
後輩「紙……ですか?」
先輩「そう。そしてそれにはこう書かれてたんだ。
『チョコが入ってると思いましたか?
残念、慣れてなさそうな君はすぐに中身を確認するでしょうからドッキリを仕掛けてみました
悔しいかったら放課後、屋上まで来て下さい』って」
後輩「うっわぁ完全に踊らされてるじゃないですか!
先輩をここまでコケにするなんてやりますね」
先輩「その時にゾクゾクって来たんだ。
僕をここまで弄ぶ彼女はなんて素敵なんだろうかって」
後輩「……やっぱり先輩はおかしいです」
先輩「放課後、僕は屋上まで急いで行ったよ。
今まで出したことのない全力疾走で、息を絶え絶えにして着いたら、彼女はその姿を見て笑っていた。
夕日を背に笑う彼女は絵画のようだった。
そして頬を赤く染めながら口を開いたんだ『付き合って下さい、これバレンタインの…』そう言いながら僕の唇を奪って……
幸せだった、本当に幸せだったんだよ!」
後輩「先輩……」
先輩「……もう10分経ったかな
出るよ……全く嫌なことを思い出して憂鬱な気分だよ
早く任務を終わらせよう」
後輩「えっ!?ちょ、先輩!続き、続きを聞かせてくださいよー!」




