異世界召喚されし者
初投稿です。投稿は不定期で、文脈とか下手くそかもしれませんが、是非楽しんで読んでください。
「なんてこったい」
普段の僕からは想像できない言葉が不意に口から漏れた。何が起きたかって?まあこれから数分前、いや、数十分前の話をしよう。
◆
さあ、今日は待ちに待った高校の入学式。これから僕は、高校生活のスタートダッシュを華麗にきめて、友人をつくり、恋人をつくり、友情と愛情を育んでいく。そんな薔薇色の学校生活が待っていると信じていた。
まあ、皆さんの予想通り、そんな甘ったれたことを考えていた時期が数日だけありました。
友人も恋人も居らず、居るのは僕を蔑み苛めるクラスメイト。なんとも悲しいことに、僕のプロフィールはすでにクラス内に広まっていて、話しかける隙もなく、
「近寄んな。キメェ」
「寄って来ないでほしいな。あと喋らないで」
「何であなたのような人間が学校に来たのかしら?家に引きこもっていればいいのに」
と、こんな感じに撃沈。
何でこんな状況になっているか?たわけ。そんなの決まっているだろう?
僕が普通じゃないからだ。普通じゃない、というのは、僕の頭がイカれている。ということではなく、僕が障害を抱えているから。今のご時世、障害者も気楽に生きられる社会を作ろう。みたいなこと言ってるけど、実際苛められている障害者の方が圧倒的に多い。
幸い、学級担任は僕の味方をしてくれるので、そこまで腐ってはいない。ただ、教師は僕が苛められていることを知らない。そこが問題だ。
味方が一人もいない状況下で、多数を相手取る。昔の戦争何かでも絶対にやらない悪手だ。逃げ隠れできないよう複数で囲って、吊し上げる。
簡単に言ってしまえば、一人じゃ何にもできないってこと。
共通の敵がいなければ仲間をつくることができない。
それが、社会での謂わば弱者ってやつかな。
って、前置きが長すぎたかな。まあ僕の抱える障害が何か説明しようか。僕は一般的な障害者とは違い、複数の障害を抱えている。
その中でも最も危険なのが痛覚障害。痛みを感じない、故に最も危ない。例えば、歯医者に行って麻酔をしてもらった時のような感覚。それが常にある。口の中を誤って噛んでも、誰かが見ていてくれないと気がつけない。
車に轢かれたって、地面に打ち突かれたって分からない。あるのは、触れたという感覚のみ。
だから、僕は普通じゃない。
でも、普通じゃない僕だって、普通でないと思ってもいいだろうか。
いや、いいだろう。こんな状況、絶対に普通じゃない。
「なんてこったい」
思わず漏れた。声が。
でも、その声は周囲の雑音に掻き消される。
自分の状況を理解できていない阿呆共。
理解したのか。それとも分からないのか。どちらにせよ、騒ぎまくり、阿鼻叫喚の嵐を引き起こす者共。
でも、その騒音を沈めるものがいた。
「落ち着いて下さい。アースの皆さま」
それは、透き通った綺麗なヴォイス......声だった。一気に静寂に包まれた群衆の中央を、まるでモ《・》ー《・》セ《・》のように左右に隔て、突き進む。白く真珠のような肌に、紅に染まった瑞々しい唇。こちらを吸い込むような不思議な碧眼。差してきた光を反射し煌めく金髪。まさに絶世の美女。それを囲む生徒や教師が、老若男女関係なく唾を飲む。言葉を失った。
そして、彼女は言った。
「私はこの国の第三王女、アイリス・ミッド・スチュータスです。この度の身勝手な召喚に理解してください。単刀直入に言えば―――」
「魔王を倒して頂きたいのです」
「「「「「はあああぁぁぁああああ⁉⁉‼⁉」」」」」
本当、無礼きわまりない。流石に僕もこの状況に驚いてはいるものの、あくまで彼女は王族。タメ口などの行動言動は慎まなくてはならない。この学校の生徒は馬鹿ばっかりだから、まだ分からなくもないが、教師まで一緒になって叫んでいる。呆れるね。
「すみません。取り敢えず状況を説明したいので、このまま国王をお待ちください」
そう言って、王女様は足早に退場していった。この空気が余程嫌だったんだろうね。すっごい慌ててたし。
取り敢えず王女様が国王様を引き連れて戻ってくる前に、しっかり情報収集しなくちゃね。
と、ここで僕の第二、第三の障害を説明しよう......。すみません、調子に乗りました。
またまた簡単に言わせて貰うけど、完全記憶能力と瞬間模倣能力かな。二つとも正式名称は親しか知らないし、調べる気もなかったから、僕が勝手にそう呼んでいるだけ。でも実際はかなり便利だと思う。
見たり聞いたりして得た情報を、瞬時に、さらに何も欠かすことなく完璧に記憶できる。さらに、自分が知っていることを簡単に模倣できるようになる。
この点だけで言えばかなり有用だけど、世の中そう上手くはいかないんだな、それが。
特に完全記憶能力なんてそうさ。例えば、とっても怖いものを見ちゃったりしたら、一生記憶にこびりつく汚れの完成。毎日増え続けるトラウマに怯えることとなる。僕みたいに毎日のように苛められていたら尚更危ない。
殴られたり蹴られたり、罵倒されたりものを壊されたり、尊厳を傷つけられたりした記憶が常に残り続ける。けれど、復讐心が絶えないという意味では、ある意味感謝している。
僕がこれから大人になって幸せな家庭を築いた時に、その全てを忘れてしまって、また同じことを繰り返すように、記憶に黒インクを流し込まれるようじゃ困る。
どんなに幸せでも、どんなに楽になっても、この記憶だけが、僕の中に燃え続ける復讐の業火をくべる薪となるのだから。
っとと、話が脱線しちゃった。今やるべきなのは、この状況の把握と、そこから導き出される可能性と、対処する際の最適解を考えること。普通の人間なら、こんなの数時間なければ不可能だろうが関係ない。だって僕は普通じゃないんだから。
見ると、僕ら全校生徒と教師を入れてもまだ半分以上も余る広大な玉座の御前。鉄などの金属ではできていないが、コンクリートなどではない、見たこともない素材の壁と床。きれいに透き通った、まるで穴が空いているかのようにも見えるガラス張りの天井。出口は、先ほど王女様が出ていった、玉座から見て右手にある大きな扉。それと、うまく隠してある、床の隠し通路。細かい段差と模様の違いがあって、案外簡単に分かった。
何処に繋がっているかまでは分からないが、襲われたりした時は、あそこから逃げればいいだろ。
なんて考えているうちに、白銀に輝く鎧に身を包んだ騎士たちと、さっきの王女様がやって来た。
「す、すげぇ......」
「うわぁ。カッコいい......」
騎士団の行進を見て見惚れている。でも、見るべき本命はそこじゃない。騎士団が整列すると、扉から黒金の鎧を着た二人の騎士と、その二人に護られるように歩いてくる国王らしき男と、若い二人の女性だった。
男は玉座の前へ、二人の女性はそれぞれ玉座の脇へ移動し、騎士は他の騎士と共に整列した。そして、こちらが静まり返ると、男は話し始めた。
「この度は、こちらからの一方的な召喚に応じていただき、誠に感謝とお詫びを申す。私はこの国の国王、ラーシェッド・ミッド・スチュータスである。先ほど第三王女が話したと思うが、そなたらには、魔王を倒していただきたい」
と、話すと、学校の代表っぽい校長が声をあげる。
「すみませんが、私たちはただの生徒と教師。学術に自信はありますが、魔王など倒す力はございません」
「それに関しては大丈夫だ。ほれ持ってこい」
王様が文官に声をかけると、三人ほど走っていき、数分経って大きな水晶玉を持ってきた。
「ありがとう。これは、そなたらのス《・》テ《・》ー《・》タ《・》ス《・》を見るための道具だ。これから一人一人この魔石に手を触れさせて自分のステータスを確認してほしい」
そう言うと、校長に手招きして校長を魔石と呼ばれた水晶の前へ来させた。そして、不安そうにしながらも、校長が水晶に触れる。
すると、水晶の前に文字が羅列する透明な板が出現した。良く見ると、校長の名前や性別、性格など様々なことが記載されている。きっとこれがステータスなのだろう。
「ほう、素晴らしい。流石は勇者の代表だ。ステータス値が最初から6000を越えている」
「「おおおおお⁉」」
王様が声を張り上げてそう言うと、周りの騎士たちが感嘆の声を漏らす。確かに校長の能力値のようなところの合計は6000を越えている。ゲームを多少やっていたから分かるのだが、LV と表示されているところは1を示している。さらに、スキル・称号と書かれたところには、『算術A』や『勇者の代表』とあった。算術の横にあるアルファベットのAは、多分ランクかなんかだろう。取り敢えず校長のステータスは全部覚えた。
僕がそんなことを考えている内に、生徒たちは列になって、三年から順番にステータスを確認している。見ると、数人ほどステータスが8000や10000を越えている人がいた。そんなこんなで、僕たちのクラスが最後となった。
僕を苛めていた人たちは、かなりステータスが低い。ほとんどが2000から3000で、スキルがない人もいる。やっぱり日々の行いが悪いからかな?これは期待できるぞ。自分で言うことではないが、僕はかなり公共事業や善行に励んでいると思う。
とうとう僕を含めて最後の二人になった。僕の前に計った人は、なんとステータスが8000を越えていた。スキルも何個もあった。この人は『笹木光司』。クラスのみんなが僕を苛める中、たった一人だけ僕に普通に話しかけてきてくれた僕の唯一の友達だ。そして、爽やかなイケメンだ。
「じゃあ頑張れよ。逸夜」
黒岩逸夜。それが僕の名前だ。光司は僕の肩を叩くと、集団の列に入っていった。
そして、一回だけ深呼吸して魔石に触れる。すると、溢れんばかりの光が魔石から放たれ、数秒ほど経って終息する。
僕のステータスはこう表示されていた。
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黒岩逸夜 16歳 男 冷静沈着
❮ステータス❯
HP:1020
攻撃力:740
防御力:940
俊敏性:1310
知力:1000
MP:2600
❮称号❯
・勇者
・異世界を渡りし者
・学徒
・善行者
❮ユニークスキル❯
解析
瞬間記憶
完全模倣
❮スキル❯
算術S
痛覚無効
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ステータス値は7000越え、さらに、ユニークスキルと呼ばれるものが三つもある。スキルとあわせて合計五つもある。今まで見た人たちは、最初から三個が限界だった。それに、称号も変なのが混じってるし。
そして、騎士に指示されて、生徒たちが集まる場所に誘導された。
「凄いじゃないか‼逸夜、お前ステータス7000にスキルも五個あるぞ‼」
「光司だってステータスは8000あって、スキルは三つあるじゃん」
と、僕たちがそんな話をしていると、王様が教師たちを呼んでなにやら話をしている。きっとこれからの方針なんかを決めているのだろう。
「なあ、そう言えばこのスキルとかってどういうモノなんだろうな?」
光司が話しかけてきた。確かに思うところはある。こんなにたくさん表示されていても、効果が分からなければ、結局意味はない。
「それについては私が説明しよう」
凛とした声で僕らに話しかけてきたのは、王様の隣に立っていた女性の内の一人。第三王女様と同じような見た目だが、良く見ると、体に無駄な部分が一切ない。きっと鍛えているんだろう。
「私は第二王女、サラ・ミッド・スチュータスだ。一人一人に文官をつけるので、スキルについて教えてもらってくれ」
第二王女様がそう言うと、脇に控えていた文官たちが、生徒たちのところへ行き、何かを説明している。僕のところにも文官が......。
「お前は私が担当しよう」
王女様につかまってしまった。
「何で僕なんですか?」
わざわざ僕のところに来たってことは、何か僕だけにある何か《・》が関係しているのだろう。
「簡単なことだ。お前がユニークスキルを持っているからだ」
第二王女様は言った。
―――――ユニークスキルとは、その者のみが扱えるスキルで、同じスキルが使えるようにはならない特別で強いスキル。
僕の持つ解析は、きっと『鑑定』というスキルと似たような効果だろうから、『解析』と念じながら、いろんなスキルや称号を見ればいいそうだ。
試しに言われた通りに、念じながら『解析』を見てみる。
すると、脳内に文字が浮かび上がった。
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解析 ユニークスキル 任意発動型
念じながら見たものを解析し情報を収集する。集
めた情報は、術者の脳内に保管されるため、忘れて
しまう場合がある。弱点や性質、特徴などを細かく
記載する。
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す、すごい。僕のスキルはこんな感じなのか。というか、忘れてしまう場合があるらしいが、僕には瞬間記憶の力があるから、きっと忘れるなんてそんなことはないだろう。
僕は、教師たちが戻ってくるまで、スキルや称号を解析しまくった。
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瞬間記憶 ユニークスキル 常時発動型
五感で得た情報を瞬時に、また永久的に脳内に保
管する能力。
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うん、予想通り。今までと全く変わってない。
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完全模倣 ユニークスキル 常時発動型
見たものを完全に、完璧に模倣できるようになる能
力。スキルも模倣できる。
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スキルも模倣できちゃうの⁉それってかなり強いんじゃ......?
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算術S スキル 常時発動型
算術ができる。評価Sなので、常人を遥かに凌駕す
る。
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あれっ、そう言えば校長ってAじゃなかったっけ?校長が生徒に負けていいのかな?
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痛覚無効 スキル 常時発動型
痛みを感じなくなる。
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えっと、それだけ?他に何かないの?......。まあいいや‼次は称号だ‼
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勇者 称号
魔王を倒すべく選ばれた人間に与えられる称号。常
に全ステータスが2倍になる。
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おおっ‼じゃあ実質僕のステータスは14000越えちゃってるのか。って既に10000いってる人は20000じゃん。ずるい。
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異世界を渡りし者 称号
異世界から別世界に移動した者に与えられる称号。
自分の本来の世界ではない世界でのステータスが1/2
になる。
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え?それって結局プラマイ0じゃんか。何それ意味ない。
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学徒 称号
学業に励む者に与えられる称号。ステータスの上昇
値が二倍になる。
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じゃあ、これからレベルが上がったりしたら、普通よりも強くなれるってことだね。かなり有用かもしれない。
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善行者 称号
善行を積んだ者に与えられる称号。全ステータスが
1.5倍になる。
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人生人助けするもんだね~。まあ結局この称号のお陰で、ステータスは1.5倍になるからね。
そんなことを考えていると、王様たちが話し終えたのか、元に戻っていた。そして、王様が口を開く。
「異世界の勇者たちよ。そなたらには、これから一ヶ月の間修行してもらい、その後ダンジョンに遠征に行ってもらう。そこで勇者たちの実力を見せてもらおう。それまでの間は、城に部屋を用意してあるので、二人一部屋で泊まってくれ」
王様が言うと、騎士たちが扉を開き、生徒、教師たちを案内していく。
「俺たちも行こうぜ」
光司に手を引っ張られ、玉座の間を出ていく。
これから何が巻き起こるのか。かなり楽しみにしている自分がいる。もしかしたら死んでしまうかもしれない。でも、光司がいるから安心できる。
僕たちなら......きっと......。
読んでくださりありがとうございます。次回もよろしくお願いします。