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第二十三話:カルト団体との対決

 ルーカスさんが立派な魔法使いのローブ姿に着替えて来た。宝石のついた杖も持っている。さすがは魔法学校の先生を務めていた人だ。なかなかカッコいい。あたしたちは、ユリウスのゴンドラでアカイ山に向かった。


 あたしは、ゴンドラに乗りながらルーカスさんに聞いてみた。

「魔物を倒す、なにか方法はないんでしょうか、あと『悪魔の水』はどうやったら効果が無くなるんですか」

「簡単だ。祭壇に容器を捧げると魔物が復活してくるが、完全に復活する前に、『悪魔の水』を祭壇からはずして容器から中身を出して踏みつぶしてしまえばいい」

「え、そんな簡単ならなんで、『悪魔の水』を破壊しなかったんですか」

「ただ、そうすると周りの施設が崩壊してしまうんだよ。置いていたホーグ山が崩壊してしまうことになってしまう。危険だから、『悪魔の水』を破壊する代わりに絶対に近づけないようにしたんだ」

「もし、完全に復活したら、人間には倒せないんですか」

「無理だ。出来るのはドラゴンくらいだろう。太古の時代も、ドラゴンが魔物を倒したという伝説がある」

「ドラゴンさんたちに頼めばいいんじゃないですか」

「ドラゴンは人の言うことなんて聞いてくれないよ。自分たちに襲いかかってきたら、対抗するだろうが。ただ、この前、お前が見たドラゴンは魔物が復活するのを予見して、偵察にきたのかもしれない。とにかく、人間世界のことは人間が何とかしなくてはいけないんだ」

 それにしても、『悪魔の水』をあたしたちのパーティが取ってきてしまったから、世界が滅びそうになるなんて。大変なことをしてしまった。これは本当になんとかしないといけない。


 ユリウスのゴンドラから下を眺めていると、馬車会社で調べた洞窟を発見した。そこに、怪しげな連中が何人か入っていくのが見えた。一人は、アオイノ村の冒険者ギルドの主人ではないか。なんでこんなとこに居るんだ。やはりカルト団体のメンバーだったんだな。ゴンドラで近くに降りる。穴が小さく、暗いので、ユリウスは入れないので外で待ってもらう。


 みんなで、中に入っていくと普通の洞窟かと思ったら、突然、巨大なコウモリのモンスターが大勢襲撃してきた。しかし、よく見るとコウモリに似ているが妙に体がグニャグニャして鉤爪を持っている。あの金貨のモンスターになんとなく似ているようで不気味だ。どうにも気味の悪いモンスターだ。ムカデより気持ちが悪い。百匹くらいいるぞ。


「みんな、わしの後ろに隠れろ」とルーカスさんが叫ぶ。

 ルーカスさんが杖をかまえて呪文をとなえると、凄まじい火炎魔法だ。ユリアーナの百倍くらいの威力だ。あっという間に、その不気味なコウモリまがいのモンスターは全滅した。おお、こんなにも強い人だったのか。さすが魔法学校の元先生だ。


 さらに、洞窟内を進んで行くと途中から階段になった。幅が広くなく、片側は断崖絶壁だ。下に落ちたら死ぬくらいの高さだ。みんなで、そろりそろりと進んでいく。

「キャ!」、ユリアーナが滑って、下に落ちそうになる。あわてて、クリスがユリアーナを引っ張って、なんとか助け上げたが、勢いあまって、階段に転んで二人が抱き合う。

「ごめんなさい」とユリアーナが謝ると、「あ、いや、いいよ」とクリスが答えるが、なぜかクリスの顔が妙に赤いぞ。ホーグ山であたしと抱き合った時は、別に顔は赤くしてなかったな。って、そんなこと考えている場合じゃないや。


 階段をさらに下りていくと、入口のような穴があり中に入ると、ちょっとした空間に出た。しばらく歩いていくときれいに造られた通路にでる。明らかに人工物だ。進んで行くと、巨大な広間に出る。大きい部屋だ。奇妙な神殿みたいな建築物があった。デカい変な模様の紋章が掲げられている。あれ、変態カルト団体の金貨とそっくりだ。薄気味悪いモンスターの絵の紋章と似たようなマークだ。部屋の中央に祭壇のようなものが置いてある。

「あの祭壇の中央に『悪魔の水』を置いて、古代の邪悪な魔物を甦らせるようとしているんだ」とルーカスさんが言った。


 数人の男たちがいる。中心にアオイノ村の冒険者ギルドの主人がいる。あいつがボスだったのか。十人くらいいて、わけのわからない呪文を唱えている。そいつらの連中の前の大きい祭壇に窪みがあり、例の『悪魔の水』の容器が供えられている。


「おい、やめろ!」とあたしが叫ぶ。

「何だ、お前らは」とあたしたちに気づいたカルト団体の連中が襲いかかってくるが、ユリアーナの重力魔法で、全員を這いつくばらせる。しかし、祭壇裏に大きい穴があって、そこから巨大な魔物がゆっくりと飛び出てきた。ユリウスの十倍はある大きさだ。


 突然、また地震が起きた。いや、これは魔物が復活しようとしているのか。巨大な魔物が浮上してきた。

「後、数分で魔物が完全に復活するぞ」と這いつくばっている冒険者ギルドの主人が叫んだ。

「俺たちが世界を支配するんだ」と他のカルト団体の連中も笑っている。


 また、さっきのコウモリみたいな化け物が襲ってきた。ユリアーナが重力魔法をかける。コウモリまがいのモンスターは下に落下したが、魔物本体には効かないようだ。カルト団体の連中は依然として這いつくばっているが、魔物が動き出し始めた。あの金貨のデザインにそっくりだ。触手を無数に生やした顔、巨大な鉤爪のある手足、ヌラヌラと濡れている鱗に覆われた大きな身体、背にはドラゴンのような翼を持った姿が現れ始める。アレックスが剣で立ち向かうが、魔物が腕を振り回して、逆に吹っ飛ばされた。スザンナが棍棒を魔物の腕に何度も振り下ろすが、全く効いていない。クリスが何本も矢を放つが刺さっても全然効果無し。あたしのナイフなんて全然歯が立たない、どうすればいいのか。このままだと、完全に復活してしまう。


「みんな、どいていろ!」とルーカスさんが叫ぶ。

 ルーカスさんが最大級の火炎魔法を放つ。さっきの千倍くらいだ。物凄い炎だ。魔物が悲鳴をあげて、崩れていく。カルト団体の連中は魔物の下敷きになった。魔物が倒れて、その振動で、『悪魔の水』の容器が祭壇から転げ落ちて、床に落ちて割れる。あたしは、すばやくそれに近づいて、容器ごとぐしゃっと中身を踏みつぶした。


「みんな、いそいで逃げろ! この施設は崩壊するぞ」とルーカスさんが叫ぶ。その直後、ルーカスさんが床に倒れた。

「ルーカスさん、大丈夫ですか!」とびっくりして、あたしたちは全員でルーカスさんを運ぶ。施設が崩れていく。瓦礫が落ちてくる中、死に物狂いで、何とか階段を上っていき洞窟を通って、ユリウスのゴンドラまでたどり着いた。すぐに乗って上昇してもらう。空の上から見ていると、山全体が崩れていく。危ないところだった。

 

 とにかく、魔物の復活を防いだみたい。孤児院に帰り、ベッドにルーカスさんを寝かす。調子が悪そうだ。

「ルーカスさん、体の具合はどうですか。調子の方はどうですか」とあたしが心配すると、

「だいぶ具合が悪い。どうやら、わしは死ぬらしいな」と言いながらも、なぜかルーカスさんは微笑んでいる。

 ユリアーナがびっくりして、

「お医者さんか、または他に回復魔法が出来る魔法使いさんを連れてきます」と部屋を飛び出そうとするが、ルーカスさんに止められる。


「わしはもう寿命だよ。若い頃はいろんな冒険をした。楽しいこともあったし、つらい目にもあった。いろんなことがあったよ。しかし、もう充分生きたよ」

 そんなことを言わないでくださいと、一同びっくりするが、

「人間はな、いつかは死ぬんだよ。これは当然のことなんだよ。昔、一緒に冒険をしたわしの仲間たちも、今は全員もうこの世にはいない。そろそろ、わしも死ぬ時が来たのかなと、それを察して引退して静かに一人で暮らしてたんだよ。このまま静かにあの世に逝くんだろうなと思っていた。けど、ある日、お前たちが大勢でおしかけて来て、最初は困ったことになったなあと思っていたんだが、子供たちに授業とかやっていたら面白くてなあ。人生の最後で楽しませてもらったよ、感謝してる。本当に、ありがとう」

「ルーカス先生、しっかりして!」とユリアーナが励ますが、

「この孤児院の建物はお前たちにあげるよ……」と言って、ルーカスさんは息を引き取った。ユリアーナが号泣している。みんなも、しょんぼりとしている。あたしも涙が出てきた。


 ルーカスさんは、孤児院の建物全体が見える、見晴らしのいい山の上の方に葬った。お墓の前で、「ルーカスさん、今まで、本当にありがとうございました。孤児院のみんなを天国から見守って下さい。よろしくお願いいたします」とあたしは何度も心のなかで、繰り返しお願いした。

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