第十七話:巨大スライム退治
さて、またアオイノ村の冒険者ギルドに行ってみたけど、結局、依頼はスライム退治。もう、これではどうにもならんと、ギルドのロビーでみんなと相談する。あたしが、「よし、少し遠くのキイロノ村に行くぞ!」と宣言して、ユリウスのゴンドラに乗り込む。
少し離れたキイロノ村に行って、いくらばかりかの期待を持って、その村の冒険者ギルドに行くと、依頼されたのはやっぱりスライム退治。がっくりする。結局、どこに行っても子供扱いされて同じことかね。仕方がなく、指定された、ちょっと山の上の方にあるキイロノ森という場所で、ちまちまとスライム退治を行う。かなり木が密集しているので、ユリウスには森の外で待機してもらった。
スライムはあまり出てこないし、出てきてもスザンナが無双して、棍棒を使って一発で叩き潰すから、他のみんなはヒマしている。退屈だなあ。もう午後だし眠いなあと思っていたら、なんだかすごい地響きがして、巨大なスライムが出現してきた。普通のやつの十倍はある。色は黄金色できれいだけど、全体が水でヌルヌルと濡れている。木々をバキバキと倒しながら襲いかかってきた。
「これは強敵みたい、みんな離れて」とユリアーナが火炎魔法を使って、黄金スライムに炎をぶつけた。しかし、そのスライムは表面の水で防御して、効果が無い。そこで、ユリアーナ必殺の重力魔法をかけるが、なんとスルリと逃げてしまう。何度やってもスルスルと逃げて、やはり効果無し。逃げるというか、重力がかかるとその力で巨大スライムが元にいた場所から移動してしまうようだ。仕方がないと、アレックスが剣を突き刺してみるが、ふにゃっとして刺さらない。そこで、スザンナが棍棒で思いっきり叩くが、めり込むだけで潰れない。クリスが弓矢を使って、矢を放ってもブヨンと跳ね返る。あたしのナイフも全然歯が立たないというか、滑って刺さらない。
こりゃいかんと全員がスライムに追い回されるはめになった。おまけに、この黄金スライム、巨大なくせして、動きが早い。これは、もしかして、さんざんあたしたちがスライムを退治して回っていたんで、ついにスライムたちも怒って、ボススライムを呼んできたのだろうか。
森の中を追い回され、全員で頑丈そうな大木に登る。ふう、何とか助かったと思いきや、巨大スライムがドカン! ドカン! と大木に体当たりして来て、グラグラと大きく揺れる。あたしたちが、落っこちないよう必死に木に掴まっていると、ついに大木が根元から倒された。木が地上に倒れる寸前、全員で飛び降りる。
巨大スライムから必死に逃げ回るが、このスライムときたら体がグニューと横に伸びていく。気がつくと、全員がスライムの体に囲まれそうになった。必死で、それをかいくぐり、森を抜け出たが、崖っぷちに追い込まれてしまった。やばい! と思ったら、森の外で待機していたユリウスが飛んできて、ゴンドラをスライムにぶち当てる。巨大スライムは崖の上から落ちていった。ふう、なんとか助かったと上から覗いてみると、巨大スライムが、またビヨーンと体を伸ばして、一旦、崖の下に着地。そして、再び飛び跳ねて、あたしたちのとこに戻ってきた。ひえー、なんて強いスライムなんだ。また、森の中に逃げることになった。
「どうしよう、スライムにやられちゃうよ!」とあたしが泣き叫びながら走っていると、「こうなったら、みんなでバラバラに森の中を走ったら」とユリアーナが提案したので、メンバー全員がメチャクチャに森の中を逃げ回った。巨大スライムは体を伸ばして、あたしたちそれぞれに追いつこうとするが、全員がいろんな場所を走っているので、気がつくと、森の中の木や枝にそこら中に引っかかって、体が薄くなっている。
「今だ! 反撃!」とあたしが叫ぶ。すると、薄くなった分弱くなったのか、攻撃するとなんとか効果があった。みんなで何度か攻撃していたら、巨大スライムは伸びたまま動かなくなった。やれやれ、危ないところだったなあ。今回は冷や汗をかいた。スライムもあんまりなめてかかるといかんなあ。まあ、とにかく巨大黄金スライムを退治したぞ。
気がつくと、ユリアーナが倒れていて、足をおさえてうめいている。「どうしたの、ユリアーナ!」とあわてて近づくと、うわ! すごい出血だ。どうやら、逃げ回っている途中に、巨大スライムが暴れて倒れた木の尖った枝を踏み抜いてしまったようだ。足を突き抜けているぞ。本人は、苦しそうにしながらも、「大丈夫」と言ってるが、全然、大丈夫じゃないぞ。ゴンドラは、スライムにぶつけたんで壊れているので、ユリウスの背中に乗ってもらう。ユリアーナが、ユリウスの背中に乗って、空を飛ぶのを怖がっているが、そんなこと言ってる場合でない。「怖かったら目を瞑って!」と無理矢理乗せて、孤児院のルーカスさんのとこへ、急いで飛んで行ってもらった。
さて、ゴンドラの方は、ばらしてみんなで部品を持って山を下りる。もう、夕方だ。ユリウスには、明日の朝、キイロノ村に迎えに来てもらうよう頼んでおいた。
意気揚々とキイロノ村の冒険者ギルドに戻って報告するが、報酬が他のスライムと一緒だった。文句を言ったら、「その巨大スライムは、ボススライムなんぞではなく、たんなる突然変異じゃないか、他のスライムと同じだな」と言われて落胆した。今回は遠くまできたので、食費や宿泊費などの遠征費を引いたら、赤字じゃないかな。ますます、貧乏になっていく。なんかうまくお金を稼ぐいい方法がないかなあ。
冒険者ギルドの主人に宿屋の場所を教えてもらって、あたしとスザンナ、アレックスとクリスで分かれて、二部屋に泊る。すっかり疲れて、ベッドに寝っ転がる。スライム退治以外で利益が出る仕事はないかと、隣のベッドのスザンナに聞くが、「うーん、ちょっと考えてみる」と言いながら、すぐに寝てしまった。
あたしは疲れたけど、眠れん。このままだと、赤字経営だ。何かいいアイデアはないかと考えるが、頭の悪いあたしは何も思いつかない。眠れず、うつらうつらとしていると、廊下をこっそりと誰かが歩いてくる。突然、部屋の扉がぶち破られ、暴漢が乱入してきた。何者だと、ナイフを繰り出そうとしたら、いつの間にか起きていたスザンナが、あっさりと棍棒でぶん殴って倒した。さすが、魔王スザンナだ。「勇者対魔王ごっこ」も役に立っていたんだな。そいつに股間拷問をすると、あっさりと自白した。
この前に、ボコボコにした奴隷商人のマフィアのボスが刑務所から、復讐するよう指示されたらしい。単なるチンピラだな。朝になって、警察を呼んで突き出す。起き出してきたアレックスとクリスが驚いている。朝まで気づかなかったらしい。どうやら、狙いはあたしのようだ。思いっきり股間を蹴ったのを恨んでいるらしいな、マフィアのボスは。
それにしても、何であたしたちが宿屋に宿泊したのが分かったんだろうか? だいたい、いつもはアオイノ村周辺で活動しているのに。そうだ、思い出したぞ、キイロノ村の冒険者ギルドの主人に宿屋の場所を聞いたんだっけ。あの主人が密告したんじゃないか。あたしたちは、冒険者ギルドに乱入、「お前がマフィアのボスに垂れ込んだだろう」と責めたてるが、本人はびっくりして、「俺はそんなことしてないよ」と棍棒を振りかざすスザンナを見ながら、震えている。うーむ、証拠がなきゃ仕方がない。
釈然としない気分で冒険者ギルドを出る。アレックスが、「あの人は関係ないんじゃないか。本当にビビっていたぞ。ビビりの俺だからわかる」となぜか自信満々で言った。しかし、この村には近づかないほうがいいなあと、あたしは思った。




