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第十五話:奴隷商人退治

 相変わらず、アオイノの村近くの森へスライム退治に行った。アオイノ村の冒険者ギルドの主人からは、それしか依頼されないからだ。子供と思って、完全にバカにされているようだ。そろそろ、他の村の冒険者ギルドに行って見ようかなあと考えてはいるが、結局のところ、どこに行っても同じ対応をされるんではないかと、不安にもなっている。


 さて、スライムの方は、いつもは、あんまり現れなくて、ちまちまと退治していたんだけど、今日は珍しく大量発生している。これは大変かと思ったら、スザンナが棍棒を振り回して、ドカン! ドカン! とスライムを片っ端から叩き潰す。大迫力だ。あたしたちは見ているだけだ。ほとんどスザンナが倒す。まだ、十二歳だってのに、ますます背が高くなって、大きくなったなあ。毎日、斧で丸太を割っていたからかって、それは違うかな。どっちにしろ、こりゃ、もう補欠じゃなくて、レギュラー入り決定の強力なメンバーだな。


 そんな風にスザンナの無双ぶりを見物していたら、女の子の悲鳴が聞こえてきた。卑しい顔をしたデブの男が小さい女の子を抱えて、森の中を走っている。あたしたちは追跡して、ユリアーナが重力魔法を男にかけた。デブが地上に這いつくばっているところを、全員でタコ殴りにした。どうやら、アオイノ村から子供を誘拐して、例の奴隷商人に売るつもりだったらしい。また、こういう奴が現れたか。最低な奴だ。そいつは、警察を呼んで引き渡したが、どうも腹が立って仕方がない。アオイノ村へ行って、誘拐された女の子を自宅に返した帰りに冒険者ギルドに行って、ああいうろくでなしの奴隷商人とかを捕まえる依頼はないのかと聞いたら、「無い」とまた、冷たい返事。やれやれ。


しかし、それを聞いていた他の冒険者から、奴隷制度は非合法だから大物を警察に引き渡せば、報奨金が出るんじゃないかと教えてくれた。よし、モンスターよりも、奴隷商人と言うスライム以下、いや、ムカデ以下の最低な連中を退治するぞ!


 しかし、トカゲの尻尾切りしてばかりでは、どうしようもない。警察も手を焼いている、人身売買マフィア連中のボスをどう捕まえるかだな。どうも、姿を巧妙に隠しているらしい。これは情報を集める必要があるなと思い、アマリアさんに誘拐された時のことを聞いてみた。


 なんでも、アタラ街というところに住んでいたアマリアさんは、メイドさんを募集している掲示板を見てその家に面接に行ったら、他にも希望者が多数いたようなんだけど、結局、アマリアさん以外は返されたようだ。自分がメイドに採用されたと喜んでいたら、いきなり、「お前は奴隷に採用されたよ」とせせら笑いをされたそうだ。最低な奴らだ。まあ、要するに美人を選んだんだな。


 さて、そうすると、あたしなんぞが行っても門前払いだなあ。これは美少女のユリアーナに行ってもらおうかと思ったが、無理強いは出来ないなあと考えていると、ユリアーナ本人が、「私が囮になる」と言いだした。マルセル孤児院にいた時は何をするにもおどおどしていたのに、随分変わったなあ。精神的に成長したのか、それとも魔法が使えるようになって自信がついたのか。そこで、ユリアーナには目印として、頭に大きい鈴の付いた髪飾りを付けてもらうことにして、奴隷商人を引っかける囮になってもらうことにした。


 あたしたちは、アマリアさんに教えてもらったアタラ街に行くことにした。アオイノ村からはそんなに離れていない。ユリウスのゴンドラに乗って、上空から見ると、けっこう大きい街だ。とりあえず、公園のような場所に着陸し、ユリウスは目立つので、ちょっと大きい木の陰に隠れてもらって、そこで待機。


 街の中にはいると、掲示板にメイド募集のチラシが貼ってあった。ただ、ユリアーナが、「もし、ちゃんとしたとこだったらどうしよう」と悩んでいるので、「その場合は、まあ、一か月くらいテキトーに働いてやめちゃったら」といいかげんなことを言ったら、「その家の人たちが困るでしょ!」とユリアーナに怒られちゃった。


 さて、掲示板の案内通りの家に行った。あたしたちは、家の窓の外に隠れて、ユリアーナだけ中に入ってもらう。出迎えたのは、醜い顔をした出腹のおっさんだ。家の中に入って、簡単な面接を行っている。ユリアーナの美しさにひかれたのか、あっさりと採用された。そして、いきなり、「お前は今日から奴隷だよ」とユリアーナに言って笑ってやがる。「これは上物だ、ボスのところに直接持って行こう」とか周りの連中と喜んでいる。「何が上物だ、この下等動物め!」とあたしは怒った。本当はユリアーナの魔法で簡単に懲らしめることが出来るが、ここは一旦、おとなしくしよう。ボスのとこへ行くみたいらしいからね。


 ユリアーナは真っ黒い外観の馬車に詰め込まれた。外からは中が見えない。あたしたちは急いで走って公園に戻り、ユリウスのゴンドラに乗って、空から追跡した。すると、郊外のでっかい屋敷へ馬車が走って行く。屋敷の入り口に馬車が停まって、ユリアーナが降ろされたのと同時に、あたしたちもその屋敷の庭園みたいな場所に、気づかれないように着陸する。


 屋敷内の立派な建物にこっそりと近づくと、ユリアーナは両手を縄で縛られて、猿ぐつわもされている。そのまま、建物の中に入っていった。あたしたちは、裏口みたいなとこから入ることにした。でかい建物なんで、ユリウスも中に入ることができた。突然入ってきたあたしたちに、いかにもヤクザっぽい奴がびっくりするが、スザンナが棍棒を振り回し、一撃で倒す。しかし、その際、大声で悲鳴をあげやがった。これは、もう突撃するしかないと、建物の中に進むとユリアーナの頭に付けた鈴の音が聞こえてきた。その音がする場所へ向かうと大きい広間に出た。マフィアのボスらしきおっさんが、高価そうなソファに偉そうな態度で座っていた。


 いきなり乱入したあたしたちに、ボスがびっくりしている。ヤクザや客らしい奴らの他にも誘拐されたような女の子が三人いる。大勢いるが、ユリウスの羽ばたきで壁に叩きつけてやった。ざまあみろ! 他にもヤクザたちがボスを助けるため、何人か入ってきたが、ユリアーナの縄をほどいてやって、重力魔法で全員床に這いつくばらせる。ダメ押しでスザンナが棍棒でめった打ちにし、ボコボコにされたヤクザたちは降参した。


 警察を呼んで、ヤクザたちを引き渡すことにした。「人身売買なんてひどいことすんな」と言ってやったら、「奴隷がいなくなったら誰が働くんだよ」とボスのおっさんが、あたしをにらみつけながらぬかしやがったんで、「お前が働け!」と満身の力を込めて、思いっきり股間を蹴り飛ばしたら一発で気絶した。気分爽快。正義は勝つ。ただし、駆けつけた警官に怒られちゃった。過剰防衛というものらしい。


 警官に連れて行かれる連中を見ていると、ありゃ、また、あの薄気味悪いモンスターの絵の紋章がデザインされている金貨を、一人の客が密かに投げ捨てるのを発見してしまった。警察に見せると、急に焦って、そいつだけ別にして厳重に縛っている。なぜか、ヤクザのボスより厳重に縛っているぞ。その縛っている警官、見たことがある。確か、アオイノの森の奥の洞窟で、美人のアマリアさんが奴隷市に連れて行かれそうになったのを阻止して、あたしたちがボコってやった奴隷商人たちを引き渡した際に会った警官だ。


「お久しぶりです。あの薄気味悪いモンスターの絵の紋章がデザインされている金貨みたいなメダルはなんですか? あたしはもう三回も見てるんですけど」と聞くと、こっそり教えてくれた。女の子を生贄にするいかれたカルト団体があって、そのメンバーらしい。この金貨はその変態カルト団体のメンバーの印章のようみたい。奴隷として売られた女の子を生贄にするそうだ。目的がいまいちわからないようなんだけど、ひどい連中だ。もしかして、全焼した孤児院で焼死したマルセルもこの団体のメンバーだったのだろうか。ひょっとすると、マルセルは殺した子供の死体を穴に落とすときに、あやまって巨大ムカデがいる隣の洞窟の穴に、その印章が入っている箱を落としてしまったんじゃないだろうか。その警官にマルセルについて聞いてみた。


「マルセルってのは知っていますか。マルセル孤児院というのを経営していたんですが、実は地下室で女の子をひどい目にあわせていた奴なんですけど」

「そいつは、重要容疑者だったが、孤児院の火事で死んだようだな。まあ、とにかく、これは警察の仕事だ、俺たちにまかせろ」


 確かにあたしたちには荷が重すぎそうなんで、警察まかせることにするか。奴隷にされそうになった三人の女の子たちは行き場がないそうなんで、ルーカス孤児院で引き取ることにした。しかし、これでますますお金が必要になってきたなあ。警察からは、奴隷商人のボスを捕まえたんで、かなりの金額の報奨金を貰ったけど、また、ちまちまとスライム退治を続けていては、いずれはジリ貧状態の赤字経営になりそうだな。なんとかしなくてはいかんなあと、あたしは再び悩むことになった。

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