第十二話:美人のアマリアさん
アオイノ村近くのアオイノ森で、相変わらず、ちまちまとスライム退治をする。あんまり現れないなあとヒマしてたら、「助けて!」と悲鳴を上げながら、金髪の妖精がこちらに逃げてきた。エルフかと思ったら、耳が普通だな。若い人間の女性ではないか。女神みたいな金髪美人さんだ。おまけに全裸状態。アレックスとクリスがドギマギしてる。「このスケベ!」とあたしは叫んで、あわてて、アレックスのマントを無理矢理ひっぱがして、女性の体を隠す。お名前はアマリアさん。奴隷を扱う人身売買組織から逃げてきたんだそうだ。全く、奴隷商人とか変態ロリコンエベレス院長とか殺人鬼マルセル事務長とか、この世界はろくでなしが多いね。
追手が二人来たので、ユリウスが羽ばたいて吹っ飛ばして、木にぶつけて気絶させる。そいつらは、木にくくりつけてやった。アマリアさんに詳しく聞いたら、すぐ近くに奴隷市というのをやっているようで、そこに連れて行かれる途中だったそうだ。
アマリアさんはメイドさんの仕事の募集をしていたので、それに応じたら、いきなり奴隷になれと言われたそうだ。けしからん。そういうろくでなし野郎たちは、あたしたちで制裁をくわえてやることにした。木にくくりつけた連中に、どこでやっているのか教えろと聞いたが、黙っていて答えない。そこで、「よし、白状しないなら、これから恐ろしい拷問を行う」とあたしは宣言した。そして、思いっきり股間を一回蹴ったら、一発で白状した。こりゃ、相当効果ありだな。この森の奥の洞窟で行っているそうだ。ちなみに、ナロードリア王国では奴隷制度は禁止になっている。そのため、モンスターが出そうな洞窟とかあまり一般人が近づかないような、目立たない場所で奴隷市なんぞをやっているらしい。「この人間の屑どもが!」とあたしは叫び、成敗してやると意気込む。アレックスには、木にくくりつけた連中を見張ってもらうと同時に、アマリアさんの警護役で、とりあえずこの場に残ってもらい、他のメンバーは奴隷市なるものが行われている場所に行ってみた。
森の奥の洞窟に行ってみる。中に入っていくと、犬の顔をしたモンスターが、剣で襲いかかって来た。すかさず、クリスが矢を放って、あっさりと倒した。以前は最弱スライムや普通のイノシシでも倒すのに苦労していたけど、毎日、スライム退治していたら、クリスもだいぶ技力が上がったみたい。「この犬の顔をしたモンスターはコボルトって奴だ」と教えてもらった。「多分、用心棒みたいな感じで、奴隷商人に雇われて、見張っていたんじゃないのか」とクリスが言っている。
もっと、奥に進むと、大きなホールのような場所があった。ランプがいくつか置いてあり、けっこう明るい。こっそり岩の陰に隠れてのぞくと、子供から大人の女性まで、五人、裸にして並ばせている。競りにかけているようだ。客のような連中が十人くらいニヤニヤしながら見ている。このろくでなしどもが。ユリアーナも怒っている。
ろくでなし奴隷商人どもに制裁をくわえてやると、あたしとクリス、ユリアーナで乱入する。奴隷商人どもがびっくりしている中、ユリアーナが重力魔法をかけた。奴隷商人と客の男たちは床に這いつくばっている。そいつらを、あたしとクリスはタコ殴り、ボコボコにする。外に逃げた奴は、出口で待ちかまえていたユリウスに脚でキックされて、気絶した。正義は勝つ。あたしは、床にへばっている連中の股間を蹴りまくる。「何が奴隷だ、ふざけんな、お前らが奴隷になってみろ、このムカデ以下の最低の生き物野郎!」とろくでなしたち野郎全員の股間を執拗に蹴っていたら、クリスに、「やり過ぎだよ」と止められた。
警察を呼んで、客も含めて全員引き渡す。その際に、あたしは床に変な金貨が落ちているのを発見した。以前、洞窟で拾った金貨と同じだ。薄気味悪いモンスターの絵の紋章が描かれている。顔には妙に太いヒゲみたいなものを生やし、鉤爪を持った手足が何本もあり、背中には翼があるモンスターの絵だ。客が落としたらしいけど、警官に見せたら、びっくりして、急にろくでなしどもを厳重にしばり上げはじめた。なんだか重要なものらしい。前回の大ムカデ退治の時に拾った金貨を見せた時も、警察はびっくりしてたなあ。なんだろう? まあ、警察にまかせるか。
さて、あたしたちはスライム退治をしていた場所に戻った。他の解放されたみなさんと違って、アマリアさん、帰る場所がないみたい。かわいそう。そこで、「ルーカス孤児院を手伝ってくれませんか」と頼むと、逆に、「よろしくお願いいたします」と頭を下げられた。礼儀正しい人だ。アマリアさんが手伝ってくれれば、シャルロッテ先生も少しは楽になるでしょう。
ゴンドラに乗せて、みんなでルーカス孤児院に帰る。途中で、強風が吹いて、ゴンドラが大きく揺れる。美人のアマリアさんが怖がって悲鳴を上げて、思わずアレックスに抱きついてしまった。薄い布一枚しか体に巻いてない若い女性に抱きつかれて、アレックスがますますドギマギしている。「すみません」とアマリアさんが謝ると、「あはは、いやあ、全然、大丈夫ですよ」と言いつつも、アレックスが顔を赤くしているぞ。
美人のアマリアさんは、先生の免許がないので、事務員としてルーカス孤児院に採用することになった。御年は十九歳。けど、実際は先生みたいなもんね。本人に悪いので、あんまり詳しくは聞かなかったけど、どうやら子供の頃からひどい目に遭って来たらしい。その割には、性格がやさしい。ひどい目に遭ったから人にやさしいのかな。子供たちに人気がある。本人も子供たちに囲まれて楽しそうにしている。あと、料理が美味しい。アナベルおばさんも助かっているようだ。授業の方は、いつの間にか、ルーカスさんが積極的に行っている。なんだか、授業でいろんなことを子供たちに教えるのが楽しくなってきたみたい。
しかし、これで、アマリアさんの給料分も稼ぐ必要が出てきたな。何をするにも先立つものはお金かな。いつまでも、最弱スライムを相手にちまちまと小銭を稼いでいても、仕方がない。何とかせんといかんなあ。




