Tech City③ 電力システム
世の中から
充電コードがなくなるのは確実だと思うんです。
「従来、発電された電気は送電線をたどり、利用されておりました。そのため、遠隔地で発電された電気を運ぶ間に失われる電気も少なくなく、さらに、送電を考えた立地に発電所を作る必要がありました。そして、その立地に見合わないということはコスト面で見合わないということであり、小規模な発電所というのは普及しませんでした。しかし、一つのメカニズムの発見が世界を変えます。それは、無線による送電方法です。」
彼女は窓のカーテンを開く。
「これは3つの変革を電力界に起こしました。一つは先ほど言った、小規模の発電所が各地に乱立していても、発電された電力を集中的にとしに供給できるようになったということ。これは自然発電の普及に大きなインパクトを与えました。二つ目は、太陽光発電の爆発的な普及です。従来、夜間は電力供給が滞るという問題点がありましたが、各電力会社が世界の反対側にも常に発電所を整備し、常に送電し続けるシステムを確立したことで、夜間に電力がなくなるという問題点は解消されました。」
彼女が開けた、窓の外の方に目を向ける。言われてみれば、来る途中に電線など一つもなかったかもしれない。
「そして三つ目は、充電という概念の消滅です。世の中で無線による送電が可能となったように、無線による充電も当然開発されました。その結果、まずは世の中から充電コードが無くなります。初期段階では、常に充電が可能な空間に長期間滞在することの人的有害性などが論文で取り上げられましたが、技術の進歩とともにそのような懸念もなくなっていきます。あとは、先ほど使った、自動タクシーを始め、この家の中のもの、そして、世の中のあらゆるものについて、充電切れという概念もなくなります。もちろん、バッテリーの寿命という意味で、定期的な点検や交換が必要なものもありますが。」
「電力の無償化に、充電という概念の消滅か。ここまでくるとだんだん驚きも薄くなってきたよ。」
「このように、自然エネルギーと組み合わせながら、電力供給コストはどんどん下がり、ついには無償化されるに至ったのです。」
彼女は席に戻った。
「さて、せっかくのごはんが冷めますよ。いただきましょう。」
二人で手を合わせていただきますをする。
「おいしい!これ全部君が作ったのかい?」
「そうですね。食材の量を自動的に測り、最適な調味料や調理方法を教えてくれるシステムがあるので、本当に、私はそれに従っただけですけどね。あとは、、、そうですね、野菜が取れたてだからでしょうか。」
「産地直送ということかい?」
「いえ、私の家で取れたものです。今は、野菜くらいは、全家庭自分の家で作ってますよ。どの家の地下にも、自動で栽培される設備を備えてますしね。さすがに、肉になると、管理も難しくて、なかなか、全家庭に普及というわけには行かないですけれど。」
「それも見に行っていいか?」
彼女は少しあきれたような口調で、すこし笑った。
「もう、好奇心が旺盛すぎますね。おちおち、ごはんも食べられてないではありませんか。ひとまず、食べてしまってからにしましょう。」
未来はどうなっているのでしょうか。。。気になります。