Tech City② AIサービス
なるべく毎週土日更新したいと思ってます。
妄想が尽きるまで書きつづけます。
自動運転タクシーに運ばれるまま、私は彼女の自宅に向かった。そこは普通のマンションのように見えた。
一階の受け付けに車がついて、降りると、乗り物は静かに道に戻っていった。
「こちらです。」
彼女に案内されるまま、私は歩いた。玄関に着くと、彼女はドアに手の平を当て、目の高さにある鍵穴のようなところを覗き込んだ。
「さ、どうぞ中へ。」
どうやら鍵は生体認証が一般的になっているようで、開いたドアを彼女は開けてくれた。
「お邪魔します。」
「すぐにご飯の準備をしますので、そちらのソファーでテレビでも見ながらお待ちください。」
案内されるまま、私はソファーに腰掛けた。
「これは、テレビが音声認識して勝手に現れてくれたりするんですか?」
目の前の壁には、壁にしか見当たらなかった。
「そうですね。テレビをつけてといえば、天井に設置しているプロジェクターから、映像が壁の手前に映し出されます。好きなサイズに調整できるので、適当に遊んで見てください。」
テレビの内容を見るよりも、実際の映し出し方とか、音声反応などの方が大変気になった。
「さて、料理も準備できましたよ。」
振り向くと、ダイニングテーブルには、色々な料理が並べられていた。彼女が指示を出すと、ダイニングの電気がつき、キッチンの電気が消えた。
「これだけ、自動化が進むと便利ですけど、電気代が高そうですね。」
「実は、電気代も含めて、水道代などは、家計負担という観点ではかかっていません。」
「え、無料なんですか?」
「ええ、それが先ほど中断してしまった、新しいインフラの形なのです。どこから話し始めるべきなのでしょうか…。この形は、通信サービスを提供する起業などがはじめましたが、もともと彼らは2020年代に、AIをもとにした新たなサービスで一気に勢力を伸ばします。20世紀の終わりに、爆発的に拡大し始めたインターネットをイメージしてください。研究者の道具に過ぎなかったスーパーコンピューターがクラウド技術などを通じて、全家庭で通常利用が可能となるサービスが提供されるようになります。」
「上手にその使い方を説明できる自信はありませんが、そのサービスは爆発的な利便性を生み出しました。サービスを一言で説明すると、なんでも、言ったものに対して、データに基づいた答えを与える、ないし、システムを作り出してくれるものとでも言いましょうか。」
「例えば、この地域で『今一番流行している服装は何?』と問いかけたとします。すると、
街のあちこちに設置されているセンサーにより、蓄積された膨大なデータから、瞬時にブランドや色、コーディネートの分析をしてくれます。カテゴライズされたデータを見ながら、今度は自宅に今ある服、と自宅にないのであれば、どこで買うことができるかを調べることができます。」
「今のは本当に一例ですが、個人情報の取り扱いなど、ビッグデータに関する法整備が進み、データ収集が街中で平然と行われるようになり、一般人でも、データを元にした気になる情報を簡単に調査することができるようになりました。」
「昔はググると言った言葉が使われ、分からないことはネットで調べていたと聞きます。でも、その中で、何が正しいか、なんのデータにもとづいているのかなどはなかなか判断がつかないことが多いでしょう?」
「そこで、ある企業が具体的には以下のようなサービスを始めました。最初に『どういう情報が知りたいのか』を、AIと会話します。何回か会話をすれば、普通の人間よりも早く、あなたのニーズを理解してくれます。その中で、必要なデータ・情報を集めて、あなたに提供します。すでに蓄積されたデータであるならば、すぐに取り寄せ、もし、既存のデータベースにない情報だとしても、自動的にプログラミングを行い、情報の収集を測るのです。」
「こうして、このサービスは、情報が氾濫する中で、自分が収集したデータに基づく判断という価値観を広めながら、爆発的に普及し、その提供する企業もプラットフォーマーとして莫大な富を蓄えて行きます。」
「影響力を絶大にしたその企業達が次に目をつけたのは、電力や水道などの一般的なインフラでした。彼らはそれらをサービスの一環として、無料で提供し始めます。最初はマンションごとの提供でした。テックシティの中の住居では、IoT化が進み、家庭では冷蔵庫や、日用品の買い出し、家の汚れ状況など、は当然データ化が可能となっていましてた。」
「結論から言うと、このデータを無償で企業に提供する代わりに、その企業は電力などのインフラを無料にすることを打ち出しました。最初は抵抗もありましたが、その手法は最終的には世間に受け入れられて行きました。なんせ、すでに社会では自分のデータを売買することが当たり前になっていたからです。自分の家のデータを売ったからと言って、急激に商品の売り込みをかけられるなんてことはまずありません。そんなことでもして、通報をされれば、その企業の信頼は失墜するからです。むしろ、買い物に行く前に、自動でリマインダーをしてくれる、など、市民にとっては利便性の方が高かったのです。」
「企業にとっては別のメリットもありました。廃棄された紙の量、従業員の集中している時間など、今まで、経営陣がなかなか吸い上げることのできなかった現場の状況について、リアルタイムで観測、そしてデータ分析が可能となったのです。それは経費削減や資源の効率化などに大きく貢献して行きました。」
「こうした、AIサービスを受けられるかつ、それに伴う莫大な電力代や水道代を肩代わりしてくれる物件に企業や個人は一気にシフトして行きます。全てのデータを管理している本社機能が次々とテックシティに移転します。
そのあとは、面白いもので、結局、都市機能が丸ごと新しい都市へ移転し始めました。結果としては、都市機能の分散という観点で、短期的には失敗したのかもしれません。全てが新しい都市に吸収されてしまったのですから。
そこからは、テックシティの設立と、それに伴う誘致合戦でした。財力のある国から、続々と、テックシティのサービスと環境を整備を始めます。そうでもしなかれば、都市として成り立たなくなっていったからです。
そうして、またたく間に、世界中の先進的な地域で、自動車の運転が禁止、そして、電力、水道などのインフラが無料に提供されるようになって行きます。
「へえ、そんなことになっていたのか。電力を無料供給なんて太っ腹だね。」
「実はこの電力無償供給にはもう一つの立役者がいます。それは発電と充電システムの改革です。」
皆さんが想像している未来のものがあったら、ぜひコメントください。