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生乳

本日2話投稿 2/2

前話がありますのでご注意ください。

 街の外にある農場地帯には小さな水場があったのですが。

 もし何方かの所有地なら問題ですので農場で働いているNPCに確認を取ったところ、この水場は誰でも使用可能であるそうです。

 早速使わして頂こうと、たらいを取り出して水を掬います。この水で何をしようかと言いますと、───はまるんの毛を洗おうかと。

 実は先程言った道具屋でウール用洗剤を発見したので、はまるんからカットした毛を洗ってみようという考えに至った訳です。

 ただまあ、ちょっと気になる表記がありまして、


 〝ウール用洗剤〟羊毛用の洗剤。羊毛を洗う為の洗剤なのだが、その前に一晩羊毛を水に漬けておくのが重要。水が驚くほど汚くなるが、その後この洗剤を使用して洗い、ぬるま湯で数回洗い流す。ふわもこは完成される。


 ……ぬるま湯もなければ水に漬けてるわけでもありません。

 本当にこのままやっていいのでしょうかと小首を傾げましたが、それ以外にやりたい事は特にないのでここはやはりごり押しでやっちゃいましょうか、と思ったのですが。どうせやるならちゃんとやりたい、と思っている自分もいるのです。

 ここは現実ではないので手を抜く事自体は別にいいと思います。けれど、せめて初めての毛糸作りは丁寧にやるべきだと思うのです。


「めぇ」

「あ、ご飯だね。ちょっと待ってね」


 取り出したグラスサイレージをはまるんの前へと置く、というか、落とすが適切でしょうか。

 サイズが巨大と言言いますか、質量の暴力と言いますか。……これ、もしかして一匹のご飯として販売されてる商品ではないのでは?

 はまるんのサイズだからこそそこまで違和感はないものの、実際にこのサイズの商品を一匹で食べるとなるとそれなりに日数がかかるのでは? それとも草食動物って結構食べると聞いたことがあるのでこれで普通?

 まあ、はまるんの毛で沢山買える値段なので問題はないけどね。


 ───Prrrrrrrrrr.


 唐突に頭の中でベルが鳴りました。頭の中で、頭に響くベルが鳴りました。……気持ち悪い。

 メニューを開けば電話のマーク、いわゆるフレンドチャットで、相手はアーデルハイトなので迷わず受話器のマークを押しました。


「もしもし、ドゥムジです」

「お前にぶっ殺されたアーデルハイトです、今何処ー?」

「えっと、農場地帯の近くの水場。あとさっきはごめんね」

「どうしてそんな所に? あ、それとさっきの件は別にいいわ、精々デスペナルティでちょっと辛い程度だもの。今日は経験値狩りに行く予定はないから大した痛手じゃないし、初心者ほったらかしで寝てた私も悪かったもの」

「そう言ってもらえると助かるよ、それはそうとこれからどうするの? 私としては今日はもう予定ないけど」

「予定ないのにそんなとこにいたの? 相変わらずね」


 正確には予定があったけどよく考えたら出来なくなっただけなんですよね。

 まあ、それはそうとはまるんの毛をかき分けながら乳瓶をおっぱいに引っ付けます。話している間、何もしないのはもったいなかったので。

 それに毛糸が作れないならこっちを採取しようとふと思いついたのでした。


「もともと毛を洗って毛糸を作ってみようと思ったんだけど手順的に今は無理だったんだ。ぬるま湯もないし、一晩水に漬けて放置できる環境がないからもう暫く無理っぽい」

「それくらいならクラン入ってもらう必要があるけど用意できるわよ?」

「じゃあそれ入る」

「即断即決素晴らしい。それじゃ街に戻ってきてくれる? 噴水広場に来てくれれば問題ないわ」


 それだけ告げると声は途切れました。

 私はゆっくりと立ち上がって伸びをして、はまるんの頭を思い切り撫でる。……乳瓶は半分くらい溜まっていた。

 早い、現実では考えられないくらい早いのでは?


 〝黄金羊の生乳〟黄金羊はまるんの生乳。脂肪分が多い為、飲むよりもチーズなどに加工などに使うのが一般的。風味が独特で賛否が分かれる。素材アイテム


 まだ瓶は一杯ではなかったので付けたまま動けるか確認しましたが、特に問題なかったので、付けたまま街へと向かいます。

 あちらにつき次第回収しましょう。それまでには一杯になっているでしょう。




 そうして辿り着いた場所で待っていたのは昨日とは違う服装のアーデルハイトでした。

 昨日は所謂シスター服だったのですが、今日は素朴なエプロンドレスでした。一見華やかさはありませんが、それ故に本人の魅力が映える素敵な衣装だと思います。……それはそうとおっぱいが強調されて色々とアレですね。アバターでも肩こりとかなるんですか? 私、気になります。


「多分凄く色々とアホな事考えてるドゥムジさんや、そんな事よりクランに行きますよ」

「そうだね、早く行こう」


 それじゃあこっちに、と案内された場所は小さな一軒家。……なる程、こちらを貸していただけるのでしょうか。

 そう思ったのですが、中は所狭しと色々な物置いてあるのでこちらは倉庫のようです。……どこにも水場などは無い様なんですが?

 周囲を見渡して百面相している私に小さく笑いながら、彼女は真っ直ぐに部屋の奥にある鏡へと向かっていきます。

 ……化粧直しでしょうか? わざわざ姿見など使わずに手鏡でも持てば何処でもできますよ?

 などと考えていた私の目の前でアーデルハイトは鏡の中へと沈み込んでいきました。……どうやらアレは見た目通り鏡、と言う訳ではないようです。

 慌ててその後について行った私とはまるんは、鏡の中の世界という奇妙な物を見る事になりました。

 只管に青い。そして乱反射するかのように眩い。それが数秒続いたかと思うと、


「いらっしゃいドゥムジ、此処が私と友人達のクラン【モラトリアム】よ」


 スカートの端を摘まんで、エントランスの様な場所で一礼するアーデルハイトの前に移動しました。

 ……それ、もしかして練習してた?




【アバター】ドゥムジ【職業】羊飼いLV2(1/50)【成長点】0

【スキル】羊飼い─牧羊犬召喚、薬学、植物知識、羊知識、投石技術、神聖魔法の複合スキル─羊飼い七つ道具─剪毛鋏、牧羊杖、乳瓶、蒐毛袋、たらい、糸車、編み棒─

【装備】若草色のシャツ、ジーンズ、サンダル、羊飼いのコート

【ファミリア】黄金羊のはまるん/再生(毛)【性格】甘えん坊、短気、感情的

2018/2/17誤字修正

誤字報告ありがとうございました。

2018/2/22誤字修正

誤字報告ありがとうございました。

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