グラスサイレージ
本日2話投稿 1/2
食事とお風呂を終えて、私は本日二度目となる仮想現実へと落ちました。。
落ちて、沈んで、浮かび上がる。浮かび上がったそこは街の中央に存在する時計台の下。
どうやら此処は始まりの街のログイン地点兼リスポーン地点のようで、苛立った様子で怒鳴る人が突然隣に現れたのでおそらく間違いないでしょう。……まあ、それはともかく、はまるん元気だった?
「めぇ」
「そっか、お腹空いたの」
とりあえず道具屋に草よりもいいご飯が売っているらしいので早速行きましょう。……本当はすぐにでもアーデルハイトに謝りたかったんですが、現実の方が忙しいようなので連絡も取れませんでした。まあ、実家が料理屋なので、手伝いと修行が忙しいらしいので仕方ありません。こちらに来次第、ぶっ殺してごめんねと謝りましょう。
はまるんの背中に飛び乗り街中を進んでいきます。はまるんのサイズがサイズなだけに周囲の人々の視線が集まりますが、……ふわもこで幸せなので気にもなりません。それよりもメニューで地図を開いて場所の確認をするとしましょう。
時計台が此処なので、──もう暫く進んだところを左に曲がるようですね。
指示を出してそちらへと向かう途中、不意に振り向いた先に子供達が列を成しています。進んでいくとその人数がどんどんと増えていき、その目のキラキラとした輝きの眩しさが強くなっていきます。まあ、興味はないのでスルーしましょうか。
そうして進んでいき、探していた道具屋に到着する頃には列は群れへと変わっていましたが、まあ、気にする必要はないでしょう。それよりもご飯を買いましょう。……はまるんは外で待ってるの? じゃあ買ってくるから待っててね。
重厚な木製の扉を開けると取り付けられた鈴が鳴り、何処か掠れたような声が聞こえます。
扉の向こう側にはまさに道具屋という光景が広がっています。回復薬らしき小瓶、鍋や包丁などの生活用品、豆を炒ったお菓子も置いてあるかと思えば、梯子が取り付けられた棚の上には目玉が不思議な色の液体に浮かんだ小瓶なども置いてあります。
それを物珍しいと見渡した後カウンターへと視線を向けると、そこに一人の男性が静かに椅子に座っていました。
眼鏡を掛けた精悍な顔つき男性で、所謂スーツ姿で珈琲らしきものを飲んでいました。笑顔などなく、まるで仕事が楽しくないと全身で言っているかのようにやる気のなさです。もしかしたら家族に無理矢理押し付けられたのかもしれませんね。
それはそうと、こちらの世界にスーツがある事に驚きました。なにせこちらはファンタジーなので、なんといいますか浮いているように見えます。なによりそのスーツの上から〝道具屋ぱるぱる〟と可愛らしい丸文字がペイントされた緑のエプロン付けているのはなんともシュールで、正直少し吹きました。まあそれはそれとして、
「グラスサイレージください」
「一塊200cとなります。所持金が足りないようですが何か売却しますか」
袋の中からはまるんの毛を取り出し、とりあえず一纏めをカウンターの上に置きました。
「黄金羊の毛×99束ですね。……総額で126,720cとなります」
「じゃあそこから10個分引いた分と、……あ、あれもください」
「それではグラスサイレージ10個とお釣り121,920cとなります」
「ありがとうございました、また来ますね」
「はい、又のご来店をお待ちしております」
〝グラスサイレージ〟草食モンスターの飼料として使用されるグラスを発酵させたもの。道具屋で購入可能だが、〝発酵技術〟を所有しているなら発酵ギルドで生産可能。栄養価が高く、モンスターの体調を整える効果がある。モンスター空腹度+10、20%で状態異常耐性+/30m
発酵食品だったとは。てっきり草の塊が出てくると思ったのに草の発酵食品の塊が出てくるとは予想外でした。
それはそうとはまるんは喜んでくれるでしょうか。美味しいと思ってくれると嬉しいんですが、……まあ、食べてみなければ分かりません。
店員さんにまた来ますと挨拶をしながら店を出ると、そこには子供達のベッドとなったはまるんの姿がありました。
総数20人くらいだけど重くない? ……どうやらそれぐらいは余裕のようで、極々普通に立ち上がって私のお腹に角を擦り付けてきます。うん、かわいい。けどゴリゴリするなぁ、ちょっと痛いなぁ。でもまあ、かわいいので問題ありません。
それはそうとこの子達どうしましょうか、この店の前に放置するのも選択肢の一つですが、はまるんがソレは流石にって目で見てくるので今回は広場に捨てる事にしましょう。親御さんが見付けてくれるでしょうし、問題はない筈です。
はまるんに乗ろうと思ったのですが、背中は一杯だったので諦めて隣を歩いて移動しました。こうして横になって歩くとより実感するのですが、やはりはまるんのサイズは規格外なのでは? 毛を含めたサイズは下手な軽トラよりも大きい気がします。まあ、それで困る事は特にないんですが。大は小を兼ねると言いますので良い事でしょう。
ようやく着いた広場にあるいくつかのベンチに子供達を寝かしていきます。正直それなりに重たいですし、何より上から下に降ろす関係上ダイレクトに重さが伝わって息が上がってきました。それでもなんとか全員を寝転がせた所で私ははまるんと移動しました。
此処ではゆっくりできそうにないので、アーデルハイトが来るまで外でちょっとした作業をしようと閃いたのです。
【アバター】ドゥムジ【職業】羊飼いLV2(1/50)【成長点】0
【スキル】羊飼い─牧羊犬召喚、薬学、植物知識、羊知識、投石技術、神聖魔法の複合スキル─羊飼い七つ道具─剪毛鋏、牧羊杖、乳瓶、蒐毛袋、たらい、糸車、編み棒─
【装備】若草色のシャツ、ジーンズ、サンダル、羊飼いのコート
【ファミリア】黄金羊のはまるん/再生(毛)【性格】甘えん坊、短気、感情的