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散歩

本日2話投稿 1/2


 汚吐女さんを落とし、はまるんとアルルカンと一緒に説教を終えた頃。


「ねえドゥムジ、ちょっと散歩にでも出かけない?」


 あまりに唐突にアーデルハイトに散歩に誘われました。……はて、アーデルハイトは人を散歩に誘うような性格でしたかと小首を傾げます。

 でもまあ、たまには友人と夕日の橙と、夜の紫が混ざったような空の下を歩くのもいいものでしょうと、私は小さく微笑んで頷きました。

 二人と一匹で歩くのは洋館から伸びる下り坂、私の家から覗く坂よりも緩やかに伸びていくその道は、まるで景色を楽しむためだけに作られたかのようで、灯りで照らされた町並みと、星と月が輝きながら夕焼けが蕩けていく空を見ていると映画のワンシーンみたいで素敵ですね。

なによりはまるんの毛が複雑な色に輝いて、二人して言葉を失う程に驚きました。……金色の毛は複雑な光を当てるとこんな風に光るようで、それはまさに私のファンタジーの象徴ですねと思わず笑いました。


 思えば私にしては濃い二日間を過ごしたものです。休日が短いと感じるのは私にしてはとても珍しい事でしょう。

 このゲームをしていない私の休日は、家事をして、本を読んで、眠る。それだけ。

 ですがこのゲームをしてから私はそれなり以上に充実してました。それははまるんという、私に怯えない動物の存在が大きいのでしょうが、それと同じくらい、多忙で忙しいこの友人と、遊ぶ時間を設けることが出来たからでしょうか?


「なあ有紀、質問をしても良いか」


 不意に、現実の名前で呼ばれ、そちらを見ました。

 そこには普段通りの、この顔ではない時の彼の笑顔が浮かんでいました。作り物めいた、どこまでも理想的な女性と、隠しきれない彼らしさを混ぜたような笑みではなくて、純粋に、何もかもが楽しいと笑えってしまえるそんな強い笑顔でした。私から見た、彼の好ましい部分です。


「何が聞きたいの?」

「あー、そのなんだ? お前さんをこのゲームに誘ったのだが、んー、……面白いか?」

「凄く楽しいけど?」

「いや、お前なんでもそう言うだろ? 学校の時もさ、バイトの時も、何でもそういう無表情(かお)で言うから俺は正直分からん。お前は良い奴だから人に合わせるし、それでいてなんというかマイペースで我を貫くし、だからさ、俺としては楽しんでもらえてるなら嬉しいなって思ってんだが、もうちょい分かり易く言えないか?」


 頭を掻きながら、なんとも情けのない顔で言うので思わず笑ってしまいました。だってそれはあまりにも大きな間違いですから。──友達と過ごす時間というのは楽しい物でしょうに。

 尤も、彼は多忙なので遊べる時間は限られますが。


「じゃあ一言。──ふわもこドリーム」

「OK、お前がはまるん以外に特に興味がないのがよく分かった」

「それ以外にも楽しい所はあるよ。──質問はそれだけ?」

「ああ、悪かったな変な事聞いて」

「別にいいよ」


 笑顔で答えると微妙に視線を逸らされる。

 小さな声で聞こえる笑ってるのか分からんという言葉に少しばかり傷付きました。これでも自分の中では渾身の笑顔だったんですが。

 なので少しだけ歩く速度を上げた私は、けれど余裕綽々とついてくるアーデルハイトに思わず不貞腐れてしまいます。

 現実でも、この世界でも、どうにも彼には足の長さでは勝てないようです。まあ、そもそも現実の私をそのままトレースしたようなこの身体が、現実の彼を女にしたような身体に勝てる道理はないのですが。……別に足の長さで人間の価値が決まる訳ではないけれど、多少は悔しいのです。


「……なんで怒ってんの?」

「別に怒ってないよ、ただ理不尽だなって」

「……何が?」


 同じくらいに産まれてどうしてこうも差が付いたんでしょうとか思ってません。でもまあ、それとは別に一言言わせてください。……いい加減、こっそりと私の頭を撫でようとするのは止めて。本当にそれ、恥ずかしいから。


「あともう一つ質問してもいい?」

「何を?」

「なんで口調安定しないの? 皆にも俺相手にしてる時みたいな口調でいいじゃん」

「……なんとなく、まだいや」


 というよりも友人以外にこんな口調で話すだなんて恥ずかしい。

 長い付き合いなのでそろそろ分かって欲しいんですが、──まったく姉さんは。

【人間】姉崎和樹【職業】高校生

【スキル】料理、睡眠学習(授業)

【家族構成】父、母、祖父【友人】複数

【性格】単純明白、家族思い

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