羊飼いのドゥムジ
ゲームに誘われたのは今から2か月程前の事でした。
ソレに乗り、やり始めたゲームは所謂VRMMOと呼ばれる代物で、五感を体感できる仮想現実世界へと意識を飛ばして遊ぶという、ゲームダンディくらいしかやった事のない私にとっては何が何だかという代物で。
払った代金も何が何だか、という家電レベルの出費で目が飛び出るかと思ました。まあ、夏休みにバイト代を荒稼ぎしていたのでどうにか買えたから良かったのですが。
ちなみにそのゲームの題名は〝モラトリアム・ファンタジー〟──意味は一時停止でしたか? 他の意味もあるかもしれませんが正直ゲームの題名に興味はありません。
そのゲームは所謂職業制なのですが、ランダムで選んだ私の職業はなんとも珍妙な物となりました。
職業〝羊飼い〟──この職業の最大の特徴は私の能力の一部として一体の羊が常に傍にいる事。一応ユニーク。
まあ、何が言いたいかと言えば。
「私に戦闘能力など皆無という事ですね」
なんて、ちょっとセンチメンタルになりながらも、慣れた手つきで黄金羊の毛を刈る私がゲームの中にいます。
毎日の愛情を注いだ結果と言うべきか、レベルが上がった際に手に入ったポイント全てを我が愛しの[はまるん]に注ぎ込んだ結果と言うべきか、その毛は瞬時に再生して、すぐさまいつものもこふわドリーミーな姿に戻ります。実にいい。
何よりゲームなので不快な匂いなどありません。ふんわりとした毛は普段は草原の様な爽やかな香りであり、顔を埋めて吸えばあら不思議と干したばかりの布団と同じ匂いがします。実にいい。
本当は誘われた時、戦闘職になって姉さんとはちゃけようと思っていたのですが。ランダム職業でいわゆる外れ職を手に入れてしまった時に、おもわずこのつぶらな瞳のデフォルメ羊を見た途端、育てる以外の選択肢無くなっちゃったのです。もこふわドリームが最高過ぎます。
現実の私はどうしてか動物が怯えて逃げ出してしまうのですが、この世界の動物は私に一切怯えないのでとても嬉しい。戦闘で日頃のストレス発散するのも一興でしたがアニマルセラピーの方が、戦闘よりも平和的で実にいいんと思うんです。
「はまるんはどう思う?」
「めぇ?」
小首を傾げながら私のお腹に顔をぐりぐりしてくるのに癒されながら、でも角はちょっと痛いですね、というか最近ソレたまに炎噴き出す時あるけどどうしたのと聞くべきかなと思いながらもゆったりとした時間を過ごす私なのでした。……あ、搾乳忘れてました。
【アバター】ドゥムジ
【職業】羊飼いLV18
【スキル】羊飼い─牧羊犬召喚、薬学、植物知識、羊知識、投石技術、神聖魔法の複合スキル─、羊飼い七つ道具─剪毛鋏、牧羊杖、乳瓶、蒐毛袋、たらい、糸車、編み棒─
【装備】スリング、バンダナ、若草色のシャツ、ジーンズ、安全靴、羊飼いのコート
【ファミリア】黄金羊のはまるん(♀)/再生(毛)、赫焉、畜乳、一匹軍勢(小型)
【性格】甘えん坊、短気、感情的