婚約破棄の結末はじゃんけんにて・・・
婚約破棄のアホなやり方のつもりで書きました。
さらっと読むことをオススメします。
では、どうぞ(  ̄ー ̄)ノ
「アイナ・テスタルト!貴様とは婚約破棄する!!そして、俺は愛しいネリエルと結婚する!!」
「すみません!アイネさん!私は彼を愛してるんです。なので、彼のことを解放してあげてください!」
中庭に呼び出されて早々に、そんなことを言われた私は思わず顔をしかめてしまった。
婚約破棄を突きつけたのは、私の婚約者で、この国の第5王子のアルマ殿下だ。
そして、その隣で解放しろと叫んだのは、ここ最近王子に付きまとって、先日、完全に王子を攻略したネリエル・ネストール男爵令嬢。
そんな二人に呼びだして早々にこんなことを言われたら思わず表情が崩れてしまうのも仕方ないだろう。
私はなるべく表情を殺して淡々と二人に言った。
「婚約破棄は承知しました。では、契約の通りにじゃんけんをいたしましょう。」
「なんだと?何故そんな遊びに付き合わねばならんのだ!」
「おや?殿下はまさか我が国の最も大事なことをお忘れになったのですか?」
「大事なものだと?なんだ?それがじゃんけんか?くだらんな!」
「はぁ・・・そのご令嬢に会ってから殿下は色々堕ちましたね。」
「なんだと貴様!」
「いいですか殿下。我が国では古来より、個人の持つ“運”で様々なことを決めてきました。“運”とはすなわち、神からの慈悲が明確に表れるもの。より神から愛を受けているものこそ、“運”という形で出ます。特に契約などの時には“運”は個人の存在をより表すことになります。なので、王族の婚約破棄をされる場合は古来よりじゃんけんという形でその後の対処を決めます。なお、婚約破棄を突きつけた側がじゃんけんで勝てば、いかなる理不尽な理由にての婚約破棄でもすべて許されます。逆に負ければ婚約破棄をされた側は相手に好きな要求ができます。引き分けの場合は特にありまけん。その場合は一般的な婚約破棄の事例の通りに事を進めます。」
そう、この国では冗談のような話だが、“運”という目に見えないファクダーでの事柄が重要視される。
だからこそ、今回の婚約破棄も婚約破棄を突きつけた側の殿下は勝てば無罪、負ければ相手のどんな無茶な要求も呑まなければならない。逆に婚約破棄を突きつけられた側の私は、勝てば、なんでも命令でき、負ければ無罪で泣き寝入りがきまるのだ。
ちなみに、引き分けだと、特に出来ることはないので、あとは当人や家同士の話になる。
「な、なによそれ・・・」
「全くだ!そんなこと俺がするわけ・・・」
「あ、ちなみに勝負を拒否されると不成立として、こちらの要求がなんでも通りますがよろしいですか?その場合は勝負をされなかった殿下の責任なので、負けた場合よりもさらに酷いことになりますが。具体的には、私がそこの男爵令嬢との結婚を許さなければそうなりますし、あとは、王族の籍を外せと願えばそうなります。試したいなら逃げてもいいですが・・・どうされます?」
その一言に反抗的だった殿下と男爵令嬢はしぶしぶという感じで頷いた。
殿下の瞳は怒りに燃えていたようにみえたけど、まあ仕方ない。
「では、一回勝負です。いきましょうか。」
「ちょっとまて!三回にしろ!」
「三回ですか?まあ、何回でも同じなのでよろしいですよ?」
その言葉に殿下はにやりと笑った。
まあ、おそらく三回なら勝てると見込んでのことなんだろうけど・・・無駄なことを。
「では、いきましょうか。一回戦です。」
「「最初はグー、じゃんけん・・・ぽん」」
ここで私が出したのは“パー”。
対する殿下は・・・“グー”。
「では、初戦は私の勝ちですね。」
「ふん!まぐれだろ!次だ!」
私の勝ちが気に入らないのか不機嫌になる殿下に促されて次に進む。
「では、いきましょうか。せーの。」
「「最初はグー、じゃんけん・・・ぽん!」」
私が出したのは“チョキ”。
対する殿下は・・・“パー”だ。
この時点で私の二勝ですでに勝ちは決まってしまった。
あまりにもあっけない結末に私は呆然としていると、殿下は怒ったように声をあげた。
「まだだ!五回勝負だ!」
「殿下・・・本来それはダメなんですが・・・まあ、何回でも結果は変わらないのでいいですよ?ただ、この先は勝負が増えたので条件も増えますが大丈夫ですか?」
「構わん!次だ!」
「そうですか・・・後悔してもしりませんよ?」
「望むところだ!」
結果的に、このあと20回戦までやって、私は全勝した。
当然の結果に殿下は納得できていないようだった。
「出鱈目だこんなの!貴様が狡い手を使ったんだろうが!」
「そうよ!あなたが、後だししたりズルしたんでしょ!でなきゃ20連勝なんてありえないわ!」
言いがかりも甚だしいが・・・だったら、殿下には最後の引導を渡すべきかな?
「殿下。では、次の勝負に殿下が勝てば今までの勝負はノーカウントで、尚且つ殿下がなんでもこちらに命令できるようにしましょう。変わりに負ければ・・・」
「いいから次だ!その言葉を忘れるなよ!」
最後まで言わせて欲しいのだけど・・・まあ、大丈夫かな?
「わかりました。では、正真正銘最後の勝負です。ではいきましょう。」
「「最初はグー、じゃんけん・・・ぽん!」」
私は“グー”をそして殿下は・・・・
「私の勝ちですね。殿下。では約束通りに・・・」
「も、もう一度だ!」
「先程で最後と申しましたよね?なので勝敗は決まりました。」
「ず、ずるしてたんだろ!この悪女め!」
「なんとでも仰ってください。それに勝負は勝負です。では、約束通りに殿下とそこの男爵令嬢にはこちらの条件を“すべて”呑んでいただきますね。」
「な、なんだと!」
「なんで私まで!」
「なんでと申されても、先程そう条件を出したのに遮って始めたのは殿下ですよ?それに殿下は何度も勝負を延長したので賭けるチップはもうそれしかありませんよね?どちらにしろ私と殿下との勝負の結果と婚約破棄は今頃殿下の“影”の者たちが王宮に知らせたはずなので、無効にはできませんよ?さて、それではお二人には私の出す条件を受けていただきますね。」
「ふ、ふざけるな!」
「そうよ!悪役令嬢のくせにでしゃばるんじゃないわよ!」
「悪役令嬢?まあ、なんでもいいですが。こちらの要求は殿下の廃嫡とそこの男爵令嬢との永久的な結婚。あとは多額の賠償金・・・これはまあ、当たり前ですかね?お二人は愛し合ってるんですよね?なら、どんな立場ても大丈夫ですね?」
ほんとはもっと要求しようと思ったけど、後々面倒なのでこれくらいでいいかな?
見たところ、男爵令嬢は王子という肩書きに恋をしてそうだし、それならいい気味と言えるでしょう。
殿下は私の発言にポカンとしてから顔を真っ赤にして怒声をあげた。
「貴様!この俺を侮辱するのか!俺は王族だぞ!!」
「なんなのよそれ!冗談じゃないわ!王子じゃないなら結婚しても意味ないじゃないのよ!!」
「なっ・・・ネリエルどういうことだ!」
「私はヒロインなのよ!王妃になれないなら意味ないわ!!」
どのみち、第5王子では王にはなれないのだけど・・・知らないなら黙ってた方がいいよね?
ちなみに、今の男爵令嬢の発言で王子は完全に呆気に取られた表情をしたあとにその顔を絶望に染めた。
「う、嘘だよな・・・俺を愛してるって・・・なあ、ネリエル・・・」
「だって、アルマが王になれないなら価値ないじゃないの!私はヒロインなのよ!王妃になって贅沢して遊んで暮らすの!!お金がないならアルマと一緒になる意味ないでしょ!!」
その一言に王子の心は折れたようだ。
膝をついて悲しげに頭を垂れた。
私はそんな王子から視線をはずして男爵令嬢をみた。
「ヒロインでもなんでもいいですが、とりあえずあなたとそこの王子はこれで結婚できますよ?よかったですね。愛した人と一生一緒にいれて。あ、離婚とははできませんからね?まあ、婚約破棄の賠償金も多額ですが頑張ってください。ヒ・ロ・イ・ンさん(笑)」
「悪役令嬢のくせに生意気よ!なんなのよあんた!あんたなんて・・・」
「衛兵。連れていってください。もう“影”から事情は王宮に行って国王陛下も知ってるでしょうけど、一応説明をお願い。証人は“影”と中庭で目撃していた生徒よ。よろしく。」
そして、意気消沈な殿下と騒ぎ立てる男爵令嬢は連れてかれた。
後日、私の条件通りに、王子は廃嫡されて、男爵令嬢と結婚したそうです。
男爵令嬢は嫌がってましたが、決定なので仕方ない。
二人は辺境の地へと飛ばされて、そこで暮らすそうです。
たかが、じゃんけんでも“運”というものを本当に持つものなら結果は明白。
私は昔から人より“運”がよく、神に愛されてる存在とまで言われたので、たかが殿下に負けることはあり得なかった。
頭を使って勝負すれば多少は違ったかもしれませんが・・・殿下にはそんな頭脳はなくて、あっても直前で思ったのと違うのを出すことになったので、結果的には私の勝ちは揺るがなかった。
殿下。勝負するときは相手の実力を考えて挑むべきよ?
最初から私の勝ちは決まっていたから・・・
お読みいただきありがとうございます。
婚約破棄でした。
今回はアホな婚約破棄を唐突に思い付いたので一気に書きました。
ただ、アイナに恋愛させるの忘れてそこは反省・・・
ではではm(__)m