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Fünf.視察

 この世界には、地球と違って魔法という概念が存在する。ファンタジーにありがちな、魔力を消費して炎を出したり水を出したりするアレだ。かなり近代化している所為で分かり難いけど、この世界はファンタジー世界なのだ。剣は無いけど。


 そんな魔法だけど、創作の中でありがちな戦術・戦略級の威力を持つ魔法は無い。中二っぽいポーズを決めて「メイルシュトロム!」とか叫んでも、精々が高圧水流がブシャー出来る程度だ。しかも魔力の消費は中々に激しく、燃費が悪い。


 それ故に、魔法が武力として用いられた時代は短かった。やがて道具や機械が発展すると、魔法はそれの動力として用いられるようになって行き、間接的な大威力を誇るようになる。地球で言う石炭や石油、火薬の役目を、この世界では魔法が果たしているのだ。


 しかし、それでも限界は存在した。魔法による爆発は大砲の弾を数百メートル飛ばすのが精一杯で、分厚い鉄板を貫く事は出来ない。動力として利用しようにも、石炭や石油のように動力を生み出し続けるには限度がある。


 加えて、魔法には発展の見込みが無かった。既に古代からの研究者によって確立された魔法理論は完全で、それ以上の威力・燃費の向上は不可能だったのだ。


 魔法使い達は誰もが諦めた。所詮魔法など中途半端な代物。将来は道具に淘汰され、魔法の存在を忘れ去られる時が来るであろう、と。


 しかし、一部の魔法使いは諦めなかった。狂人と嘲笑された彼らは魔法の将来を切り開く為、あらゆる分野で研究を行った。それにより、今に伝わるあるひとつの技術が生まれる。


 魔導――魔法回路を利用し、予め設定された現象を発生させる技術である。






「お、おぉぉ……」


 ギュイーンという機械特有の作動音を響かせながら、巨大な砲弾が三つ、下から上へと押し出されて来る。大の大人数人掛かりでも持ち上げる事が困難であろうそれは、そのまま砲身の中へと吸い込まれて見えなくなった。


「如何です、この五十口径E型VFFV砲の魔導式自動装填装置は! これにより、装填時間は十二秒にまで短縮! 装填手の削減にも成功しました! 勿論、有事に備えて手動装填も可能です!!」


 僕の隣に立つ背の低い土人の技術者が、興奮で飛び跳ねながら装填装置の説明をする。マンシュタイン中将が居たらガキかと罵るだろうと容易に想像出来るほどの興奮振りだけど、僕もそれに負けず劣らず興奮していた。


 魔導で動く機械が格好良いからとか、そういう理由ではない。純粋に、この自動装填装置の能力に感服している。VFFV砲――四十五.五四(45.54)センチ砲という巨砲の装填を、たった十二秒で済ませてしまう……なにそれ、凄すぎるでしょ!


「勿論、搬出も可能です! 要望に応えて、装填してからも弾種の変更が出来るようにしたんです!」


 技術者が嬉々として傍にあるレバーを倒すと、閉じていた砲身の尻が開いて装填されたばかりの砲弾が滑り落ちて来る。それを何時の間にか上昇していたエレベーターが受け止め、そのまま床の下の弾薬庫へと降りて行った。


「お、おぉぉぉ!」


 弾種の変更が出来るなら、今後予定しているように航空機が主力になっても安心だ。対空弾から徹甲弾への変更も、対空弾から徹甲弾への変更も簡単に出来る。今までのように一発撃ってから再び装填しなくてもいい!


 おっと、興奮の余り仮面が取れそうになってしまった。危ない危ない落ち着け落ち着けひっひっふっふっひっひっふー。


 さて。現在、僕はフライハイトの重工業を代表するクレーベ社の工場で、第二艦隊に配属される新型戦艦に搭載されている砲と同型の物を見に来ている。アドバイザーである僕には真っ先に見てもらいたかったらしい。


 アドバイザーと言っても、大した事をしている訳ではない。元々地球にあった機械がどんな動きをするのか、クレーベ社から来た人を含めた国中の研究者に教えただけだ。原理も教えていないし、中身も教えていない。本当に凄いのは、そんな状態から本当にそれを再現・発展させるチート技術者の方々だ。


 だからそこまで尊敬しなくても良いと言っているけど、この人達はそれでもと研究の成果を披露したがる。魔導に精通していない事もあって完全にちんぷんかんぷんなので、今では動いている所を見て喜ぶだけになっている。昔はちょっと口を挟んだりもしたんだけどね。


「このE型VFFV砲を三つ搭載したのが、こちらのG型三連砲塔です! 自動装填装置の搭載によって小型化した分重量の削減に成功し、大測距義を併せて搭載する事が出来まして、更に――」


 ごめん、これ以上は理解出来ない。とりあえず凄いって事は良く分かった。


「そしてこちらが、新型戦艦の副砲として採用して頂いた六十口径C型ZNDZ(20.32)砲です! 弾倉式大型自動装填装置を採用する事で三発の連射を可能にし、瞬間火力を底上げしました! 装填の手間が掛かりますが、魔導式エレベーターによって通常とほぼ変わらぬ装填時間に――」


 要するにロマンの塊って事ですね、分かります。


 一見、このロマン兵装達はロマン過ぎて問題を抱えているようにしか見えない。しかしそれは地球人から見た感想であって、魔導を知るこの世界の人から見れば極普通の事であり、ロマン兵器では無く実用的な兵器に見える。


 そもそもその魔導とは何なのか。一言で言うと、完全にプログラムされた魔法で稼働する機構だ。細かく言及すると立体魔法陣やら魔力強度やらと頭が痛くなるような言語がタップリ並ぶけど、簡単に言うならそれで間違ってはいない。


 原理としては、魔力を通しやすい素材で魔法陣を作る事で、魔力を流した時にだけ作動する疑似魔法陣という名の魔導回路を作成。それを分割した物をスイッチやその他で合わせる事によって魔法陣を完成、作動させる事でエネルギーを得る。電気に例えて言うと、素材が導線、魔法陣が電球や抵抗といった作用点、魔力が電源だろうか。


 この世界にある機械は、殆どがこの魔導を利用した魔導機械だ。砲弾を運ぶエレベーターも、艦を動かす推進装置も、全て魔導によって制御されている。更に言えば、砲弾を飛ばす事にも魔導は使われている。


 機構は簡単。爆発を引き起こす魔法陣を砲弾側と砲側で分割し、合わせる事によって爆発を発生させ、砲弾を飛ばすだけ。雷管も炸薬も、面倒で重い仕組みは必要ない。必要なのは、砲弾の尻に魔法陣を押し当てる機構だけ。ね? 簡単でしょ?


 他にも魔法と同じ現象を引き起こす魔導やそれを破壊する魔導もあるけど、ぶっちゃけ把握しきれていない。まぁ考えるな、感じろという言葉もあるし、細かい事は技術者や研究者に任せておけば問題ないのであまり考えない事にしている。


「見て下さい、この新型炸裂装置を! 導材に軟化ミスリルを使用する事で威力を底上げし、外装に硬化オリハルコンをコーティングする事で強度の問題を解決したんです! コーティング技術の開発には骨が折れましたが、完成した以上、もうこれを超える炸裂装置は――」


 嬉々としてこの世界特有の金属の名を挙げる技術者と一緒にはしゃぎながら、新型の兵装の視察を続ける。午後にはこのロマン兵器達に詰め込む砲弾や機関の視察もある。楽しみにしていよう。

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