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Vier.パーティー2

「デーニッツ元帥!」


 突然現れたコンラーリン・E(エーゲルベルト)・デーニッツ海軍総司令に、僕とレーダー提督は慌てて姿勢を正した。海軍のトップの突然の出現に、陸軍三人組も緊張した面持ちになる。


「そう硬くなるな。今夜の主役は私ではなく、寧ろお前達だろう」


 デーニッツ元帥はそう言って笑っているけど、僕達にそんな事は出来やしない。何せ、此処での行動や言動が全て後の出世や配属に響いて来るのだ。左遷なんてされた日には、もう……うぅ、寒気が。


 レーダー提督も同じ気持ちなのか、笑みを浮かべてはいるけど凄く引き攣っている。普段は毒舌ばかり吐くマンシュタイン中将でさえ、憐みの表情を浮かべていた。グデーリアン少将に至ってはもう半笑いすら浮かべている。


「……全く、君達二人は何時でも真面目だな。私の目の前で、引退した筈の総司令の席を押し付けられた話をしてくれても一向に構わないのだが」


 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべるデーニッツ元帥は、現海軍総司令であると同時に先々代の海軍総司令でもある。今は亡きティルピッツ元帥に総司令の地位を譲ってからは一線を退いていたけど、他に総司令に相応しい人材がいなかった為、こうして再び総司令の座に就く事になっている。


 そのお蔭で中央からの命令がスムーズに行き渡るようになり、デーニッツ元帥の手腕もあって海軍は無事に再編された。その後も後任が育つまでという条件付きで、海軍総司令の座に座り続けている。


 そんなすんごい上官の目の前で、若干失礼なその人のお話をする……そんな事が出来るだろうか。いや、出来ない。出来ません。


「ふふ、お遊びが過ぎたな」


 完全に固まって目を泳がせ始めた僕達を見て、デーニッツ元帥は漸く弄るのを止めてくれた。それに内心でホッとしつつ、僕達は再び姿勢を正しながらデーニッツ元帥と相対した。


「まずはレーダー大将。昇進おめでとう」

「ありがとうございます」

「昔は頼りなく覇気のなかったぼんくらが此処まで成長したかと思うと、私は嬉しく思うよ」


 さりげなくバラされたくなかったであろう過去を暴露され、赤面するレーダー提督をニヤニヤと眺めるデーニッツ元帥。この人、実はSなんじゃなかろうか。


 そのS元帥が、ゆっくりと僕の方を向いた。


「カイト・グデーリアン少将。昇進と第二艦隊司令への就任、おめでとう」

「ハッ。ありがとうございます」

「その若さと知識、これからも存分に振るってくれたまえ」


 幸いと言うべきか、S元帥の口撃は僕相手に発揮される事は無かった。そう思っていたけど、内心でホッと息を吐いている最中、僕の目にニタリと吊り上るデーニッツ元帥の口が映った。とても嫌な予感がする。


「君もそろそろ年頃だろう。艦隊司令ともなれば個人の時間も少なくなるし、今の内に何人か嫁でも見つけておいたらどうかね」


 確かに戦地へ赴けばそんな暇を見つける事など出来ないだろうし、戦争がすぐに終わるという保証もない。戦時中でありながら本土の安全が確約されている今の内に、生涯の伴侶を見つけるのは理に叶った話かもしれない。


 守るべき対象がいればその分兵は奮起する為、軍内部でも結婚は地味に奨励されていたりする。他にも戦時中の人口減少や人種の偏りを防ぐという意味もあり、軍人は年頃になればすぐに結婚している事が多い。


 加えて、この国では重婚が認められている。理由は、寿命も性質も違う種族達が共存する以上、その辺りは認めておかないと種の保存的にヤバい事になるから。人類学は齧っていないからよく分からないけど。


 結果として、国防を担う立場という事でモテにモテる軍人の結婚のハードルは非常に低くなっている。僕自身も結婚に対する忌避感などは無いし、相手がいるなら結婚しても良いと思っている。相手がいればね。


 僕の場合は、常に仮面を被っている所為か半分偶像化されていて、女性は囲むだけで近付いてこない。なら仮面無しのプライベートで知り合いはいないのと聞かれそうだけど、休日は滅多に寮から出ないので女性に友達がいない。ハハっ。


「ふふ、仮面を付けている男でも良いという女性がいたら考えましょうか」

「ほほう、仮面を付けていても良いなら考えるのか」


 あ、返答ミスったかも。


「そうだな……そういえばマンシュタイン中将の娘のエリカと言ったか。彼女は今年、主席で士官学校を卒業したそうじゃないか」

「は? はぁ、確かにそうですが……」


 陸軍の傑物であるマンシュタイン中将の娘さんは成績が非常に優秀で、士官学校を主席で卒業したとの話も確かに聞いている。イケメンである父に似て、容姿も非常に淡麗との噂だ。


 囮作戦の被害による海軍士官の不足を補う為の政策で、本人が希望していた陸軍士官への道が閉ざされたにも拘わらずこの成績。初めて成績表を見た時は、マンシュタイン一家は化物かと驚愕した事を覚えている。


 ……でも親がアレだから、周りの男性は全く近づいていないと聞いているのですけど。


「ほう、となると第二艦隊旗艦に配属か。どうだ少将、彼女なら分かってくれるのではないかね」

「…………」


 僕はそっとマンシュタイン中将を盗み見た。マンシュタイン中将は凄い目で睨み付けて来た。僕はそっと視線を戻した。


「いえいえいえ、そのような女性、僕には勿体ないですよ」

「ハッハッハ、実際に会う前から何を言っている。ま、その辺りは君にお任せするとしよう。ただ、早めに決めないと後で困るからな」


 朗らかに笑ったデーニッツ元帥は、そう言って別の所へと歩き去って行った。何とかやり過ごす事が出来た……と評しても良いのかな、今回の場合。


 溜め息を吐きながら振り返ると、ニヤニヤと笑うグデーリアン少将とロンメル大佐、そして相変わらず凄い目をしているマンシュタイン中将が目に入った。既に結婚している将官組は兎も角、ロンメル大佐には耳に痛い話だと思うんだけどな。


 何となくもう一度溜め息を吐くと、グデーリアン少将とロンメル大佐が僕の肩をガッシリと掴んで来た。


「で、カイト。本当にエトの娘を嫁にすんのか?」

「今の内に未来の父親に挨拶をしておいた方が良いのでは?」

「あなた達は何を言っているんですか。殺されますよ」


 再びの溜め息を吐いて二人を振り払い、グラスの中身を呷る。僕はまだ死にたくないし、顔を見てもいない相手と結婚する気にもなれない。気が合わなかったらそれはそれは悲惨な家庭になりそうだし、そんな事になったら互いに不幸になる。


 そうだなぁ、結婚するんだったらもっと、気心が知れていて、僕の事情もある程度知ってくれている人がいいかな。やっぱり気軽に接する事が出来るというのは、一つの魅力だと思う。


 そんな事を考えていると、レーダー提督が僕を見ている事に気が付いた。


「カイト……」

「提督……」


 そういえばレーダー提督は、お互いの言う事が大体分かるくらいには気心が知れていて僕の事情も最初から理解しており、尚且つかなり気軽に接している。それにまだ独身で、恋人なんかもいなかった筈。わぁ、凄い優良物件。


 僕が内心で感嘆していると、レーダー提督がグッと親指を立てた


「安心しろ、相手がいなかったら私が引き取ってやる」

「それ良いですね。そうしましょう」

「「「 ハァ!? 」」」


 結果。将来の独身フラグは完全に折れました。やったぜ。

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