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月の世に捜しませう  作者: 紬人
1/1

生首とて生きております

今は昔たけとりの翁――以下省略。まあ、竹取物語あるだろ?授業で習ったあれだあれ。

とりあえずその全文とは言わねぇ。そうだな。不死のヤクのところ思い出せ。

ヤクじゃねえクスリだって?ンなもんどうだっていいんだ。飲んだらふわふわした感覚あんだからもうヤクでいいだろ。まあ、そんなことどうでもいいんだ。落ち着けよ。落ち着いて俺を見てくれ。



舞い散る赤。


長い棒は凶器だ。

その凶器を振りわまして、私は大変スプラッタなことをしてしまった。

ちょっと、ハッスルしてしまったんだ。

ここには私と学校の王子様(笑)しかいなくて、私が学校の備品室でハッスルしてなぜかあった物干しざおを振り回した結果、学校の王子様(笑)の首がぶっ飛んだのは間違いない。明らかな加害者じゃないか私は。

生首王子(笑)とか思ってる暇などありませんでした。結構なトラウマものでした。ペンをもったまま後ろを振り返ったらペンが隣の席の子に刺さった時以上のトラウマだった。

「てめえ、聞いてんのか」

とりあえず、生首王子(笑)が何故か声を掛けてきたんだけどどうしたらいいのだろう。

言葉遣いとかがなんというか中高生にだけ許されるような言葉遣い…要は王子様(笑)に思えないくらい悪いんだけど。

竹取物語?ヤクって…ヤクっておい。落ち着け?落ち着けなんて…

「私は落ち着いています。落ち着いて刑務所で絞首刑に処されてきます」

「落ち着けって言ってんのが聞こえねえのかこのクソアマが黙って竹取物語を暗唱してろ」

クソアマって…このご時世そんな煽り言葉使う人間がいるのか。

「なんで学校の王子様(笑)の頭と胴体がスッパーンと豪快に離れてしまって生首王子と胴体王子に分かれてしまったという緊急事態に美女がちやほやされる話を思い出さなきゃならんのです。だいたい、生首王子は」

「まてまてまてまて。生首王子と胴体王子って何だどういうことだ。あと、(笑)を口に出して言うな。嫌がらせか畜生」

クソアマなんて言うから対抗したまでだけど。

「まあ、強いて言うなら常々そう呼んでいたので板についてしまった。ということです」

「常常?!おまえ、こんなクズみてえな性格出す前から俺のことをそんな風に呼んでいやがったのか?!」

何言ってるんだろうかこの生首王子(笑)は。

「学校の王子様なんてキャッキャウフフされているイケメンの本性がクズなのは何年も前からのセオリーですよ?むしろ1話からガンガン爽やかで押していると2話目からクズの俺様になるのは同然のことです」

まあ、風早くんは例外。

「……現実、見ろよ。現実だとイケメンは大体みんなから優しくされるから良い奴だぞ?俺は例外だが。世の中には性格の良い不細工は少ないし性格の悪いイケメンも少ないぞ?」

「そんな目で見ないでください。諭さないでください。だから私は二次元を愛するのです」

ちょっと待って。私は生首王子(笑)と何の話をしているの?生首相手にどうして加害者の私は呑気に話してるの?前々から思ってたけど私はもしかしてバカなの?それともだいぶパニックってるの?

落ち着こう。うん。

「私、竹取物語は帝のシーンで頭がいっぱいで」

「ふざけんなアホ。あのくそ帝のせいで俺がこんな目にあってん――っ!伏せろっ!」

!?

咄嗟に反応する体。

え。これはお決まりの『説明中に奇襲するぜてへぺろ』なの?じゃあ、まさかこの備品室の窓が割れて敵がドカーンととか?生首王子(笑)を守らなきゃ的な?

「……」

「……」

いやいや、そんなまさか。ここは三次元ですよ三次元。なんでか生首になっても言葉が話せるハイスペック王子(笑)がいるだけの三次元だよ。だから、敵なんて来ないって。

「……」

「……」

「私、此処の掃除が終わったら自首するんだ」

「……」


今、私さ、フラグ立てたよね?ちゃんとフラグ立てたよね?うん……


「どうして私は伏せをさせられんですかあああああああ!」

「うるせ――――!俺だってなあ!月の奴らの匂いがしたから『来る!』って思ってお前の為に伏せをさせただけだっつーーーの!」

だっつーーのじゃねーーーよ!

ふざけてる。この生首王子(笑)、とことんふざけてやがる。

「月?とか意味わかりませんし、来る!とかなんですか中二何ですか?イケメン腹黒性悪中二王子ですか?」

「うっせーー!!だいたいなあ!お前が物干しざおなんか振り回してたせいで生首になっちまったんだろうが!」

「首が取り外し可能なんて知らなかってんですー!」

「ったりめえだろうが!取れてたまるかよ!ケガはまだしも、首を取るなんて月の道具でしかできな……」


はっとする生首王子(笑)。でもね。そんなににらんでも物干しざおは月の道具とかじゃないと思うよ。月で洗濯物干すの?ねえ。さっきから竹取竹取言ってるのに、竹取物語の月の住民が物干しざおに着物干すところ想像できる?私はできないよ。あの着物がまず日干しなのかも分からな――ん?待て待て。月の住民=着物って発想はおかしくないか?確かに月の使者は着物だけど、時代的に竹取物語の時代が着物だったからじゃないの?だっらこの時代の月の住民は何着てんの?

「何流されてるの私は。問題はそこじゃないでしょうが」

大体、月に人間がいるとか。そんなファンタジックな脳内になっちゃったのかな私は。私は二次元を愛するけどなんだかんだでリアリストなのに。

「……おい、お前。今、なんっつった」

極悪生首がこっちにガンつけてくるんだけど。どうしよう。えーっと。考えてたから言葉にしたもの覚えてないんだけど。私は何かを呟いたの?うーん。口を開いた記憶がない。さっき、なんて考えてたっけ。

「月の使者はもう着物じゃないと思います」

「お前、この緊急時に何考えてんだ」

これじゃなかったみたいだよてへぺろ。

「ッチ……お前が『問題はそこじゃないでしょうが』って言ったんだろうが。それで思ったんだが、



俺の胴体はどこにある」


…………は?


「私が知るわけないです」

「いいや。お前は知ってるだろ」

「何を根拠にそんなことを言ってるんですか」

「俺は、生首になってから一度も胴体を見てねぇんだよ」

「まぬけですか」

「殺すぞクソアマ。てめえはさっき胴体王子(笑)って言ってんだよ胴体見たってことだろ?」

胴体……はっきり言ってそんなグロテスクなものマジマジ見てられないよ。トラウマだよ。

「大体、二次元みたいにモザイクがかからなくて血が飛び散ってるんですよ?ちゃんと生首王子(笑)のことも見てないのに、そんな年齢制限がありそうな遺体なんて見る気になりませんよ」

そういえば、この出血の量は大丈夫なのだろうか。血は抜き過ぎると貧血になるし。いや、生首の血の心配してどうするの私。


「遺体じゃねえだろ。俺の体だぞ?」

「ま、さ……か」

う、ううう、動くとか言わな

「動くに決まってんだろ」

「ぎゃあああああああああああああ!!!!」

「なあ、俺には分からねえ。どうして生首の俺をからかえるのに胴体が動くのはこわがれるんだ」

いやいやいやいや。だいぶ違うでしょ。意思の疎通ができるとかそういう問題とか、あと

「トカゲが自分の尾を自切した場合、しばらく動いてるそうですが、それがしばらくではなく随分動いてると怖くないですか?!そんな感じです」

「お前、俺の胴体が戻ったらバックドロップな」

そんな、自分でも良い例えだと思ったのに。


「というか、体を動かせるんでしたら早く動かして合体して血液を掃除していなくなってくださいよ。出来るだけ私に容疑がかからいないところまで行ってから息絶えていただきたいです」

「お前の性格、最低すぎるだろ。安心しろ。俺は死なねえし、体はおそらくテメェのせいで月の奴らに奪われた。このまま俺を放置してもいいが、お前が絞首刑になるまで精神をむしばんでやる」

「ごめんなさい。調子に乗ってました」

結局私が悪いんですよね、知ってた。

あんな狭いところで物干しざお振り回しただけなのに。

世の中理不尽だよ……


「さて、行くぞ。抱えろ」

は?

何処に?抱えろとかキモイんだけど

「お前、俺を抱えるのと自分の胴体明け渡すのどっちがいい」

私はタオルを生首王子に巻き付けえて持った。

ど、どうしよう。

「なんで白いタオルなんて選んだんだお前は。馬鹿だろぜってー馬鹿だろ。明らかに犯罪者じゃねえか」


うん。だから私は困ってる。


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