第一章 人魚姫の住む島
輝く貝殻をちりばめた島
手紙をたよりにやってきたその島には、『人魚姫』を名乗る少女が住んでいた
その日は珍しい冷夏だった。
━━━ 島 ━━━
朝の潮風が心地いい
ここはいつもと違う島だ
今日オレたちはここへ商談をしに来たのだ
浜辺には、赤・青・白にキラキラと光る━━━
「うふふ♪」
刹那、暗闇、響く笑い声
いったい何が━━━
次の瞬間、ぐわんと意識を引っ張られる感覚に襲われた
扉の閉まる音を最後に、まるっきりわからなくなった
━━━ 部屋 ━━━
……?
誰だ。誰かが声をかけている。仲間だろうか
━━━博士ならいいなあ
「ん…ん~っ」
めいっぱい伸びをして、スイは目を覚ました
「ようやくお目覚めになりましたわね」
そこには見慣れぬ少女、見慣れぬ部屋
そして、見慣れたバンダナが少女の手に
「あっ…!」
慌てて隠そうとしたがもう遅い。見られてしまった
寝癖の立った左右の緑髪からは、ちぢこまった小さな角がのぞいていた
「か、返してくれん?それ、オレの大事な」
「もう隠す必要はなくてよ、龍王様」
「っ!?なっなんで…」
「何故と言われましても…恥ずかしくて、言えませんわ」
「君は、誰?」
「あらやだ、私ったら…貴方に見とれて自己紹介を忘れてしまうなんて…お恥ずかしいですわ」
少女はこちらに向き直った。車椅子が見えた
「私は人魚姫と申します。以後、お見知りおきを」
そういうと彼女は、うやうやしく頭を下げた
「人魚?」
ちらと足の方に目をやる
「ああ、申し訳ありません。乾燥予防のため、普段は濡れタオルでぐるぐる巻きの状態で…見苦しくてお見せできませんの」
人魚姫は、足先までをすっぽりと包む、しっとり濡れたロングスカートをつまんだ
「へえ、乾燥か、大変やなあ。オレ気にしとったことないさかい気ぃつかんかったわ」
「まあ、そうですの。━━━でも、龍王様は、お優しい方ですわ。私に気を使ってくださるなんて」
「え?そ、そうかなあ。ああ、たぶん、久しぶりに海の仲間と会うたさかい、気が緩んでんのかもしれんな」
「うふふ♪私もですわ。きっと、これって、運命…ですわね、龍王様」
姫がゆったりと体をもたせかけてきた
吐息が首にかかる
「うん…めい…?」
「ええ」
真珠のような肌
長く艶々としたまつげ
姫の鼻息を、ふるえるため息が包み込む
「龍王様━━━」
ほっそりとした腕を首に回し、不気味で美しい笑顔を向けた
「私の夫になりなさい」
姫の顔はもう見えなかった
見えるのはただ、閉じられた二重のまぶたのみ
━━━人魚姫との出会いは、これから始まる“最悪”の幕開けとなった━━━
初投稿作になります!!
まだまだ拙いですが、頑張っていきたいと思っておりますので、応援していただけたら幸いです!
Twitterのほうもよろしくお願いします↓
@pescaferrovia06