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プロジェクト・スター  作者: 森林
8/9

輝く思い

これで本編は終了です。

特別編がでるのでよろしくお願いします。

拙い文章ですがよろしくお願いします。

 開会式が終わり、天の川が満天に輝く下で、俺たちは関係者席で一人目のダンスが始まるのを待っていた。俺たちといってもユウキを除くみんなだが。

「ユウキ……大丈夫だった?」

「ああ、火がついたって感じだったな」

 あの時のユウキはカッコよかった。

「あの時もったいぶって言わなかったことちゃんと言ったお?」

「ああ、と言っても大事なことはあいつわかってるし、大事なことはとっくに行ってあったからな、ちょっとしたことしか言ってない」

「ならいいんだけど……」

 なんか少しどんよりした空気が俺たちの間に横たわっている。

「もしかして、信用されてない?」

「……みぃ、心配した」

「時間に遅れるような人は信用できないね」

「俺のせいかよ」

 ユウキだってわからなかったんだよ? これが女尊男卑か。

「エスコートぐらいちゃんとしてください」

「……はい」

 などと説教をくらう俺。ユウキが恋しい。

 もう嫌だ、帰りたい。

 でも、緊張と不安はなくなった。

 だから俺は小さな声で「サンキュー」と呟く。

 俺の声はみんなに届いただろうか、聞くのは野暮だしそんなこと聞かなくてもわかるんだ。

「さあ、一人目が来ますよ」




 時間は開会式が終わる三◯分前にさかのぼる。

「やっ……やぁっとつきました〜」

「ああ……ついた」

 砂漠から向け出したのごとく疲弊する俺たち。待っているのはオアシスかと思ったがそんなことはなかったぜ。

「タロー、ユウキ、遅い……」

「ご…ごめんよ、みぃちゃん」

「みんな心配してた」

「ごめんねみぃちゃん」

「まったく、どうしようもないですね、こんな時に迷子だなんて、ここに来るのは初めてじゃないでしょう?」

「……そうなんですが……」

「言い訳してる時間はないお、もう開会式は始まっているお、僕たちは観客席に移動しないと」

 デイブは俺を強引に掴むと、そのまま客席に向かおうとする。

「ちょっ、ちょっと待って!」

「……どうしたの?」

「ユウキと最後の話をしてない」

「そう、じゃあどうぞ」

 アカネがそう急かす。

 いや、あの……

「二人きりにしていただけませんか?」

「さっきまでずっと二人きりだったお」

「うっ、でも話してないし、こういうのはムードだし……」

「あんたは何を言うつもりなの?」

「聞かれるのが恥ずかしいんだよう」

「そうですね、ここは二人きりにさせましょう。私たちは先に行ってます。タロー君席はわかりますか?」

「大丈夫です」

「それではまた後で」

 そう言うとみんなはぞろぞろと歩いて観客席に向かう。

 その後ろ姿を見守ってるとみぃちゃんがこちらを振り向く。

「最後の話じゃないよ」

 はっきりと力強く

「〝これからも〟の話だよ」

 そう言った。

 その言葉に俺とユウキは無言で手を振って答える。

 するとみぃちゃんは満足したようにデイブのたもとに戻っていく。


「ユウキ、明日は何をしよう?」

「突然なんですか? なんかフラグっぽいこと言って」

「フラグだよ、明日も二人でいれますようにっていうフラグ」

「それ、フラグじゃなくてお祈りじゃないですか?」

「そうかお祈りか、なら俺の神様はユウキだな。お前に祈るよ」

「神様が願いを叶えてくれたことってありましたっけ?」

 悪戯っぽく答える。

「でも俺には祈ることしかできないぞ? どうすればいい?」

「じゃあ〝思って〟てください」

「思って?」

「はい」

「何を?」

「おまかせします」

「おまかせって随分と無責任だな、でもわかった」

 …………

「なんか言って欲しい言葉とかあるか?」

 とりあえず微妙な空気なので茶化すためにいってみる。

「大丈夫です、言いたい言葉しかありませんから」

 言いたい言葉……

「じゃあ言えよ」

「あとで言います」

「それフラグ」

 そう言って二人笑いあう。

 この会場の空気がそうさせているのか、それとも元から俺たちはこんな感じだったか、なぜか笑いが止まらなかった。


「じゃあ頑張ってこいよ」

「今までで一番すごいの見せますよ」

「期待してる」

 俺はユウキに背を向けデイブたちの元へと歩いてく。後ろを振り返ることはしなかった。




 そして時は過ぎ、たった今二人目のダンスが終わったところだった。

 二人とも序盤ということもあり、アップテンポな曲を踊っていた。歌唱力も振りもミスらしいミスをしない良いダンスだった。

 そして次は澄子ちゃんだ。

 声が出ないということは歌えないということだ。純粋なダンスだけで今まで勝ち上がってきたということは、相当な技術が要求される。敵ながら心が躍る。

「やあ、ぬいぐるみ君」

 声をかけてきたのは澄子ちゃんのご主人、島英・S・エムデナイとこ金髪だ。

「なんでここにいるんだよ」

「もちろんここが関係者用の客席で、今から僕の澄子が躍るから見に来たのさ」

「……今までどこ行ってたんだよ」

「ちょっとね。あ、ここ失礼しますよ」

 金髪は俺の左隣に腰掛ける。

「もっと離れろよ」

「どこでもいいじゃないか、それよりも始まるよ。澄子の世界を変えるダンスが」

 その言葉と同時にステージは白い光に包まれる。

 そしてそこから登場したのは、白を基調とした和をイメージしたドレス。

 それは完成された美、そのものだった。

 会場内はヒートアップする。

 澄子ちゃんはその場で一礼し、曲が流れるのを待つ。

「……澄子、終わらせよう」

 澄子ちゃんの姿に惹かれてか、会場内は徐々に静寂に飲まれていく。

 そして全ての音が会場から消え去った時、ダンスが始まった。


 静寂の中をピアノの一音が駆け抜ける。

 それは静かな水面みなもを撫でる風のよう、その立ち姿は水面に映る月のように儚い。

 そして一気にテンポアップ。

 ピアノの連弾、ヴァイオリンの旋律。

 指の先まで張りつめた流麗な動きには無駄がなく、表情には憂いが帯びて、一枚の絵画のように完成されている。

 細波さざなみのようにステージを舞い、花吹雪のように美しく、会場には音楽以外の音がまったくたたない。

 息ができない。彼女の動きに飲まれている。

 そして伝わる彼女の気持ち。

 自分への絶望、憤り、そして嘆き。

 それらが交わり、皮肉にも美しさを醸し出す。

 これが彼女の全て。

 金髪との出会いを経て、辿りついた結末。

 その曲にはどうしようもない諦めが漂っていた。

 だが、美しい。

 美しくて美しい。

 可憐? 違う。満開の花のよう? 違う。

 枯れゆく花の美しさ。

 命の灯火が消え、新たな命の誕生。望まない誕生。

 その瞳には葛藤があった。

 そしてその姿はとても哀しかった。




 彼女のダンスが終わる。

 俺を含めた観客は唖然としていた。

 皆が呼吸を思い出したかのように息を吹き返し、どわっとした歓声がスタジアム内を揺らす。

 認めざるを得ない、素晴らしかったと。

 俺は金髪の方に目を向ける。金髪はまだ澄子ちゃんを見つめていた。

「おい」

 と声をかける。

「……なんだい」

 金髪はこっちを見ようとしない。澄子ちゃんを目に焼きつけてるようだったり

「なんで世界を終わらせるんだ?」

「それは前に言ったさ」

「俺は本音が聞きたいんだよ、好きなんだろ」

「彼女はゲームのプログラムだよ」

「お前はそんな目で彼女を見てないだろ、俺と同じだ」

「キモいね、きみ」

「お前ほどじゃない」

 金髪はふっと息を吐き、こちらを見つめる。

「僕はね、この世界を終わらせて新しい世界で澄子と会うんだ」

 さも当然というようにいってみせる。

「……新しい世界の澄子ちゃんってのはこの世界の澄子ちゃんか?」

「違うさ……記憶はどうあがいても引き継げないらしい」

「それでいいのか?」

 腹の奥が熱くなるのを感じる。

「澄子が望んだことさ」

「……そこにお前の気持ちはあるのかよ……」

「必要かい?」

「…………そうか……それがお前か……澄子ちゃんが本当にそれを望んでると思ってんだな」

 さっきのダンスを見て俺が感じたこと、それをこいつが感じていないわけがない。

 どっちにしろもう遅い。こいつの決意は固まっている。

 なら俺は何もしない、できない。言葉じゃ変えられない。

 だからユウキが変えるのだ、俺たちの未来もこいつらの未来もプロスタを愛する者全ての未来も……ユウキのダンスで。


 ユウキ、もう逃げられないぞ。


 それから八人のダンスが終わり、ついにユウキの出番がやってきた。




「……ふう」

 深呼吸をする。もう何回やったかもわからない、でもやらずにはいられない。

 澄子さん、凄かった。動きひとつでここまで魅了されるとは思っていなかった。

 そして伝わってくる気持ち。

「頑張れ、わたし」

 自分を鼓舞する。

「……ふう」

「ユウキさん、スタンバイお願いします」

「は……はいっ」

 ついにきた私の出番。

 動こうとしてもなかなか動かない足を叩いて前に進む。

「ここで待機してください。ここからステージにワープするので、行くときはこちらからカウントダウンしまーす」

「はいっ」

 落ち着けユウキ。私はできる。ご主人様と一緒に居たいから、いつでに世界を救うんでしょ。

 思い出せ、今までの思い出を全部。それは私に力をくれるから。

 思い出せ、昔はどう踊ってたか、どう歌ってたか。

 そして作り出せ、新しい自分を。

 そして生み出せ、未来を。

「いきます、五秒前……三、二」

 もう未来は目と鼻の先だ、わたし。

「一、」

 あとはしっかりと見据えて飛んでいけばいいだけだ。

「GO!!」

 真っ直ぐと連太郎(・・・)の元へ。




 光に包まれて現れたのは俺の愛しい相手、ユウキ。

ピンクと白を基調としたレースの衣装。奈津時さんがくれたものだ。

「見とけよ、金髪。お前の好きにはさせないからな」

 金髪は何も返してこない。

『皆さんこんばんは、ユウキと言います。よろしくお願いします』

 ユウキは深々とお辞儀をする。声に緊張は見られない。

 沸き起こる歓声。最後ということもあり観客のボルテージも上がっていく。

 本当、奈津時さんには頭が上がらない。

『踊る前にひとつ、私事わたくしごとで申し訳ないのですがひとつ、ご主人様に伝えることがあります』

 えっ? おれ?

 ユウキはひとつ深呼吸をし、決意に満ちた瞳で

『ご……ごしゅ…………た…たろ…………』

 何かを言いたげでそれでも言えない、何も知らない観客は動揺している。

 それは俺には出会った頃のユウキを連想させる。

『れ……連太郎っ! 大好きです! 大大大好きですっ!』

 マイクで拡張されたユウキの声、それはパソコンのスピーカー越しに俺に伝わってくる。

 そしてこれは今のユウキ。踊ることができなくなって、それでも進むことを選んだユウキだ。

 ていうか言うのかよ、終わった後って言ってやがったのに……やべぇ、顔がニヤける。

『よしっ、すいません皆さん、お騒がせしました。そろそろ踊りたいと思います』

 もうユウキが踊れないんじゃないか? という疑問は無くなっていた。

 プログラム的に不可能なことをしたんだ、踊ることぐらい余裕だ。

 さあ見せてやれ、お前の全てを。


『曲名は〝太陽に届く翼で〟』

 

 ギターが激しくカッティングし、少し遅れて力強いドラムがビートを刻む。

 デイブが作曲し、俺が作詞をつけたオリジナル。

 俺がユウキの全てを思ってつけた歌詞、それが今ロック調のメロディーとユウキの声に乗って俺のもとへ届く。


『気づかないを演じていた私たちは

  違う天井そらを眺めて 奇跡いま起こしたいんだ』


 流れるようなメロディーにがっちりと合わさるユウキの歌声、そしてメリハリのしっかりとしたダンス。出だしは完璧だ。

 

『あなたの空へ 翼広げ 飛び立て!

  もう迷わない どんなに遠くても 

   信じてるから 羽ばたく』


 ユウキの歌声はとても優しくて、温かくて、楽しくて、今まで思い出が光となって飛んでくるようだ。

 そうだ、これがユウキだ。

 いつも優しくて、ちょっとしたことで機嫌悪くして、でもそれは長続きしなくて、いつも俺に丸め込まされてるユウキだ。

 嫌なことも、悲しいことも、辛いこともあった。

 それは全部嬉しいことに変わったんだ。

 だから毎日が楽しくて嬉しくて、いつまでも笑顔を見ていたくて、その笑顔はとても素敵で可愛かった。

 その全てがこのダンスに詰まってる。

 もっと、もっと届いて。

 俺の思いも、ユウキの思いも、ここにいる全ての人たちの思いも、真っ直ぐ正しく愛する者の元へ 

 

 ――届け――

  ――届け――

    ――届け――

     ――届け――


『二人同じ空で逢いたくて

  あなたを探し 空を越えて 太陽目指した

   

 二人手のひら 合わせた温もり

  逢えた奇跡 ――重なる未来へ――』


 ユウキが指を天に掲げる。

 その先には満天の天の川。

 そしてユウキは満天の笑顔。


 ――届いたかな? 届くといいな――


 届いたよユウキ、ここにいる全ての人たちに。

「完敗だよ、タローくん」

 清々しい顔をする島英。

「これが俺たちだよ」

「ああ、わかったよ。君の性格が悪いってことが」

「……そうかもな」

 島英は席を立ち、歩いてく。

「どこ行くんだ?」

「澄子のところさ」

「そうか」

 それ以上は何も聞かなかった。聞くのは野暮ってもんだ。

 

「素晴らしかったです」

「すごかった」

「ドキドキした」

「さすがだお」

 四人が四者四様の感想を述べる。

「だろ」

「僕はユウキちゃんを褒めたんだお、タローは何もしてないだろ」

「そうそう」

 いいだろ、別に。

 それより早くユウキに逢いたい。


『優勝者を発表します。優勝は――』




「タロー、今日は何をしますか?」

「イチャイチャでいんでない?」

「いつもしてるじゃないですか?」

「イチャイチャっていう自覚あったのかよ……」

「……まあ、それは……その……はい」

 ウェディンググランプリで優勝した俺たちはいつものようにイチャイチャしていた。

 変わったことといえばユウキが少しデレやすくなったということだろうか。

「好きだ」

「そうですか」

「大好きだ」

「……そうですか」

「大大大好きだ」

「わかりましたから、もういいですっ」

「お前から俺に言うことはないの?」

「えっ……?」

「せっかくこんなにラブコールしてんだからさ、言ってくれよ、〝好き〟って」

 それにユウキはモジモジしながら

「大好きです」

 と答えた。

 マジ可愛い。

 と、こんな風に俺たちは幸せの真っ最中だ。これからも永遠にな。

 ちなみに俺たちが優勝して叶えてもらった願いは――


『優勝者のユウキ&タローさん、願いをどうぞっ』

 その言葉に俺たちは息を揃えてこう言った。

『いつまでも、二人幸せにいられますように』




 




 

 

 


 

 

 





 





 


 

 

 






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