表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロジェクト・スター  作者: 森林
2/9

この日々は

拙い文章ですがよろしくお願いします。

 夏は素晴らしい。

 夏は美味しい野菜が多い。トマト、スイカ、ナス、トウモロコシ、etc……。

 夏は素晴らしい。

 夏は人の心をオープンにする。それは夏になると人が皆、薄着になることから証明できる。

 夏は素晴らしい。

 夏には海水浴がある。太陽と決別し、夏を満喫できないこの身であっても後ろ髪を引かれる思いである。

 夏は素晴らしい。

 もういい本音を言おう。心がオープンとかはただの建前である。薄着になるのは暑いからだ。俺が言いたいのはつまり…ミ・ズ・ギ! が見たい。ただそれだけである。


「ということでご登場いただきましょう。ユウキさんです! ハイ拍手!」

 パチパチパチ……。

 もちろんこの場には俺しかいない。自作自演だ。

「は……恥ずかしいんですけど…………本当に見せなきゃいけないんですか?」

 当たり前である。

「その水着高かったんだぞ! 七万スタドルだぞ。他にもいろいろ買ったし、欲しがっていたものだって買ってやったじゃないか」

 ユウキにはこの夏限定100名限定の星型のネックレスを買ってあげた。ものっそい高かった。

「うぅ〜分かりましたよぅ……あんまり見ないでくださいよ……」

 いやだ、と思いつつも本心を言ってしまえば出てこないのは目に見えているのでここでは見ない見ないと言っておく。

 そこから二、三分仏のように波ひとつない水面のような心でじっと待つ。

「大丈夫だ。俺の心は仏だ。出てきても何もせん」

「本当ですか? い、行きますよ」

 そう言って画面に白い艶やかな足がフレームインする。

 ほちゃーんと、一滴の動揺が俺の心に落ちる。

 そこからぽんと画面に入ってきたユウキの姿はまるで現世に舞い降りたセイレーンのようだった。

 白磁のように白い肌、その胸では少し小さいであろう紺のスクール水着、白いゼッケンに書かれた『ゆうき』の文字。最高にエロス。俺の心は大シケになった。

 イエス! 

 プリティでセクシーでチャーミングな姿に思わずシャツを脱ぎ、上半身裸になる。

「ちょっ、何脱いでるんですかっ!」

 顔を赤くしながら手で目を隠す。

「いや、喜びの舞でもしようかと思って」

「いや、いいです! しなくていいです! 喜びの舞がどんなものかは知らないですけどしなくていいです!」

「そう?」

「ハイ、大丈夫です。お気持ちだけ受け取っておきます」

 ぎこちない作り笑顔でそう言われてしまえば何もできない。したかったな……喜びの舞。

「じゃあどうやってこの気持ちを表現すればいい?」

「えっと、それじゃあ……似合ってるって言ってください……」

「似合ってる」

「あぅ……」

 怖いわ、この子の可愛さが怖いわ。

 何、似合ってるって言ってくださいって? 何、言わせておいて赤くなってんの? 言ったこっちが恥ずかしいわ!! 恥ずかしさを紛らわす為にひとつ咳払いをする。

「ユウキ、俺は確かに似合ってると言った。だがしかしそれが完璧とは言っていないっ!」

「な、なんですってー」

 ユウキはわざとらしく棒読みをする。

「お約束、ありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」

 一同お辞儀。

「それで足りないものって何ですか?」

 確かめるようにくるっ一回りする。その姿にキラキラなエフェクトが見えた気がした。

 俺はコホンとひとつ咳をして間をおく。

「ユウキ、お前がいつもと違う服を着るときは大体いつもどんな時だ?」

 ユウキは人差し指を顎にやり考える。

「そうですねー私は雰囲気を変えたいときとかですかね」

「そうだ! その通りだ! 雰囲気を変えたいからいつもと違う服を着る。それだったら髪型を変えないでどうする! 服だけ変えても中途半端なだけだ!」

 俺の熱い台詞に心打たれたのか驚愕の表情を見せる。

「な、なるほど。そうですよね。その通りです。すごいです。ご主人様。見直しました。たまにはいいこと言うじゃないですか」

 純粋に笑顔でたまにはとか言われるとちょっと傷つく。

「で、具体的にはどんな髪型にしましょう?」

 そう言って自分の髪をふたつの束に分けたり、後ろに纏めたりしている。

「それは…………」

 どうしようか。実に困った。偉そうなこと言って考えてなかった。ここは本人に任せるべきか……いや、ここは俺好みにしたい。

 では考えろ、男、井原連太郎。可愛さ重視のツインテか、あどけなさを出すサイドアップテールか…………いや、決まっている……。

「ポ……ポニーテールで……」

 自分の好みを相手に伝えるのってすごく恥ずかしい。嫌な目で見られないだろうか。

「ポニーテールですかいいですよ、簡単ですし」

 どうやら俺の考えは杞憂に終わったらしい。俺が思ったよりポニーテールは一般的らしい。

「じゃあ結んできますね」

「あ、ちょっと待って」

「はい? どうしました?」

 思うところがあり、とっさにに引き止めてしまったが……これを言うのはポニーテールと言うより恥ずかしい。

「あ……えっと……俺の前で結ってほしいな……なーんつって……」

「えっ……」

 超ジト目で見られる。やっぱ恥ずかしいわ、性癖さらけ出すの。

 ユウキはちょっと不思議そうな顔をしたが、別にいいですと言ってヘアバンドを取りにいった。


「色はこれで良いですかね?」

 ユウキが持ってきたヘアバンドは薄いピンク色。ユウキはピンク系の装飾品をよく好んで身につける。

 ふむ、問題はなさそうだ。

「じゃ……結いますよ」

 ユウキは遠慮しがちに結い始める。

 最初にヘアバンドを口に咥え、両の手を使って髪を纏める。ヘアバンドはゴムて出来ている。ゴムで出来ているのだ! それを咥えるのだ! ……これ以上は何も言うまい。それだけではない! 両の手を頭の後ろに持っていくということは必然的に背筋が伸びる! するとただでさえスク水を着てラインがはっきりしているというのにアレがさらに強調されるという…………女の子が髪を結う姿ってこう……うまく言えないけど……ムラムラする。

「終わりましたけど……」

 少し遠慮がちに上目遣いでこちらを窺う。

 やばいな……似合いすぎてる。背中のラインに沿ってスーッとおちている髪は先端が少し癖っ毛がかっていて、可愛らしさを演出し、それとは反対にうなじは色っぽい女性としての魅力を醸し出していて可愛さと綺麗の割合が奇跡というほど整っていた。

 あまりの素晴らしさに俺はズボンを脱ぐ。

「ちょっ……何してるんですか? よく見えないですけど……スボン脱いでます?」

「うん」

「ちょっ! 何してるんですか! 今度は何ですか!」

「喜びの舞」

「それはもういいですから! 椅子に座ってください」

 そう言われれば何もできない。したかったな……喜びの舞。

「なら俺はどうすればいい?」

「とりあえずズボンを穿いてはいかがでしょう」


     □


 とりあえずせっかく水着になったので泳ぎたいが、一人で泳ぐのはつまらないと駄々をこね始めた。

 この日の為にホームにプールと擬似太陽を買っていた俺にとって、これは由々しき問題である。すごく高かったのだ。俺はプールに入ることはできない。画面に触れても液晶の感触しかしない。二人の距離の限界だ。

 このゲームMMOであるがホームには有線で繋がないと行けないようになっている。つまり他の電子少女を呼ぶには実際にプレイヤーに会わなくては行けない。リアルの知り合いで一人このゲームをやっている奴を知っているが呼びたくない。俺は二人の時間を楽しみたいのだ。

「うーむ」

 考えがまとまらないでいるとユウキも同じことを考えていたのか『デイブ』を呼ぼうと言い出した。

 デイブとはもちろん俺のリアルの知り合いだ。

「俺は二人の時間を楽しみたいのだが」

 そう言うと、ユウキはうんと考え込む。そしてあまり口に出したくないのか小さい声でこう言ってきた。

「なんでもいうこと聞きますから」

「もしもし? 俺だけど今来れる?」

 俺は見返りがあればなんでもする男さ。

「えっ? 今女の人と一緒に居るって? それってみぃちゃん? 違う? リアル? えっマジ? ……デート? 違う? なんだよ驚かせんなよ……で、その人と何やってんの? 取材? プロスタの? その人記者? ……その人も一緒に? でも部屋汚いし……取材費は出るって? わかった、何時頃来る? あと三十分? はえーな……わかった、待ってるわ……じゃあ切るぞー」

 するとこっちが切る前にプツっと通話が切れた。

「というわけで呼んだから」

「えっ? はい……」

「なんでもいうこと……だろ?」

 ことの重大さに気づいたのかユウキはこの世の終わりだというように顔を真っ青にする。

「まあ今すぐどうこうする訳じゃない。……楽しみにしとけよユ・ウ・キ♡。

「キャヤヤアアァァァァァ!!」

「さて……部屋綺麗にしないと」

 俺はユウキの断末魔を背に受けながら床に捨てられていたシャツを着て掃除を始めることにした。


     □


「……女性がですか?」

「うん?」

「女性が来るからですか」

 俺がしばらく掃除機をかけていると、さも不機嫌そうな顔をして呟く。

 俺は面倒だなと思いごまかすことにした。

「嫉妬か?」

 こう言えば、ち……違いますよ! と顔を真っ赤にして否定するだろう。そうすればそのままうやむやで終わる。楽、手っ取り早い。

「そうですけど……」

 俺の想像とは真逆な返答に思わず掃除する手を止めてしまう。

「どうしたんだよ? いきなり?」

 俺は掃除機の電源を落としてから問う。

「私のようなAIよりも……いえ、何でもないです。ずっと水着を着ていたからでしょうか、風邪気味かもしれません」

 そうにへらっと笑うと何事もないようフンフン言いながら奥に消えていった。


 ――――私のようなAIよりも――――

 の先が――現実の女の子の方がいいですか? ――――

 

 だったのなら、俺は一体なんと答えたのだろう。

 俺は――――

「ご主人様! どうですか? 眼鏡かけてみたんですけど」

「グレイト」


 俺の答えはユウキと蝉の声に遮られ、夏の空に溶けていった。

 



 




 

 






  

お読みいただきありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ