ジュリーの過去(セカイカイトウ番外編)
ウィンバリー市、ルナ公園噴水前広場。
「ジュリー!」
「あっ!ノエル!」
公園の入口から一人の緑髪の綺麗な少女が私に手を振りながら駆けて来た。
あれ、今日はユメミルは連れて来なかったのかな?
「久しぶりです~!」
「久し…って、どうしたの?その喋り方。」
中学から転校して暫く会っていないせいか、言葉遣いが違う。
「すいません…日本という国に留学してたのでなまりが付いてしまったのです~。」
「え!島から他の島に行ったの!?」
この国(島)は住民を一切外へは出さない法律があり、それを破った者はその場で射殺、又は溺死にされるのだ。
「大丈夫ですよ~私の父が国王の側近だから特別に許可を頂いたのです~。」
(父の権力すごっ!)
ノエルは恥ずかしそうに顔を伏せた。
「でも、そんなノエルも可愛いよ?」
「そ、そうですか?」
「うん、じゃあ行こ♪」 最初に訪れた場所は『ウィンバリーショッピングモール』。国内最大のショッピング施設で、商品の質も良いし値段も意外と安い。私のオススメはこの中の『マリーのマジックカフェ』、ここのストロベリーチョコレートパフェが凄く美味しいくて有名である。
カイトウ様から長期間の休暇を貰った為、充分に楽しめそうだ。そういえば、今日はカイトウ様とタイホウが闘う日だった筈…。
「ジュリー、どうかしましたか~?」
「あ、ちょっと先に行ってて!」
「?」
耳に装着してある小型トランシーバーから、カイトウ様と会話が出来る。
「カイトウ様、大丈夫ですか?」
「ガガ…ジュリーか?ドド…こっちは気にしなく…バキュン…いい。」
「分かりました。」
どうやらバッチリ戦闘中の様だ。邪魔はなるべくしたくない。
「待たせてゴメンね!」「うぅ…お腹が空きました~。」
「んじゃ、入ろっか。」 カフェのドアを開くと、魔法使いの店員が元気良く挨拶をしてくれた。
「いらっしゃいませ!!」 私とノエルは一番奥の座席に座り、ストロベリーチョコレートパフェをとダブルベリーティーを注文した。
「ノエルはどう?故郷に帰って来た気分は。」「やっぱり、この空気が一番好きです~。」
「アハハ…。」
笑いながら外を見た瞬間、私の身体が一瞬凍り付いてしまった。(ヨシュア…!?)
私が小さい頃行方不明になった弟がいる!「ふぁっ…!?」
突然立ち上がった私に驚いたのかノエルが変な声を上げた。とにかく早く弟を追わなければ!店を飛び出し、通りに来たが弟の姿は既に無かった。
「ヨシュア…!!」
確かにあの時人々に紛れていたが、ヨシュアだった。
「どうしたんですか!?ジュリー!大丈夫!?」
ノエルが心配して駆け付けて来てくれた様だが、声が段々薄れていく。
(なんで…)
今、私の顔はどうなっているの?きっと涙でグチャグチャだろう。悲しみ、喜び、怒り、様々な感情が交差して心臓の鼓動が速くさせる。私があの時、あんな適当な返事をしなければ…弟は…。