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銀色の終焉

作者: 末吉

反省も後悔もしていません。

「ごめん、みんな。僕はもう、“そちら側”へはいけないよ」


 一人の少年が、集まっていた六人に対して言う。

 その少年は五歳くらいで黒髪黒目。幼いからか人懐っこい印象を与える顔つきだった。


「どうしてだよ……」


 六人の内の一人、赤髪の少年が俯きながら言う。


「どうしてお前はいつもそうやって一人で決めちまうんだよ!」


 その言葉を叫ぶと同時に、彼は駆けだした。

 ただ駆け出しただけではない。彼は両手に炎をまとって駆け出したのだ。

 それを見た少年はただ嗤う。

 儚げに、そして哀しげに。

 それを見た少年は俯いてそのまま走り、あと数メートルのところでジャンプして右こぶしを引き、落下している中で彼は呪文を唱えた。


「燃え盛る炎よ、我に宿る炎を極大せよ! 獄炎(ボルケーノ)!!」


 その呪文で両手の炎は大きく燃え上がり、触れようとした瞬間に燃えてしまいそうなほど勢いが出来た。

 そのままの状態で身をよじり、相手の顔に向けて思いきり殴った。


 ゴォォォォ! そんな音を発しながら、嗤っていた少年は燃えた。

 そうでなければ・・・・・・・いけなかった・・・・・・


「なぜなら、僕は何もしていないから・・・・・・・・・

「「「「「「「!!?」」」」」」


 殴った少年も、それを見守っていた他の五人も、驚きで声を失っていた。

 殴った少年の両手に宿った炎が消え、殴られる前と同じ状況に戻っているからだ。


「僕はもう魔法を遣えない」


 一人で反対側に立っている少年は唐突にそう言った。

 他の六人は未だに現状を理解できていないのか、何も言わなかった。


「『天才』を冠した頃とは違う」

「簡単な魔法ですら遣えない」

「でも、代わりにこれ(・・)が遣える様になった。君達、いや、世界にとって脅威な力を」

「だからもう、君達とは共に行けない。僕らはもう、敵同士だ」


 少年は言うだけ言うと踵を返した。


 すると、一人の少女が待ったをかけた。


「どうしてですか兄さん!」


 しかし少年は答えようとせず、代わりにこう言った。


「世界は回る。輪廻と共に

 世界は変わる。境界と共に

 世界は終わる。力と共に


 輪廻は必定 境界は当然 力は不明

 共に歩かんは世の理」

「……それって」

「終焉へ誘うは全て 始まりへ誘うは一人

 神よ神よ神よ全てを救えないのならどうか」


 全てを滅ぼす力をください


 最後にそう言うと、少年は歩き出した。

 とても、楽しそうに。





 残された六人は、ただただ立ちすくんでいるだけだった……
















 あれから11年。

 少年の存在はなかったかのように扱われたが、六人は今も少年の事を気にかけた。

 強く、優しく、なんでもできた彼のことを忘れることなんてできなかった。

 そして彼を目標に彼らは頑張ってきた。

 その努力は実を結び、彼らの家にとって自慢できるものになった。


 そして現在。


「皆さん入学おめでとうございます」


 一人の少年が新入生に対し挨拶をしていた。

 その少年は見事な白髪で、それに伴ってか肌も色白く、まるで雪のように、触れたら壊れそうな印象を受けるものだった。

 彼は壇上から生徒を見渡して言う。


「この学校に来てくれた皆さん、これからの学生生活を頑張って過ごし、世界に羽ばたける術式使いになってください」


 その言葉で礼をし、彼は壇上から降りた。

 会場から、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。







  ―――――――――――――――――――――――――







 ――――それは突然だった。


 入学式の途中で、何の前触れもなく消えた・・・体育館の屋根。そしてその部分から降りてくる一人の影。

 フード付の銀色の外套を身に着けているその人は新入生と保護者席の間に立つと、ざわめく声を無視してこう言った。


『さぁ破滅させよう。この腐った世界を終わらせる為に』


 そう言って指を鳴らした瞬間、体育館が跡形もなく消えた。


 理解が追いつかない新入生と保護者に、教師とこの場にいた在校生の行動は迅速だった。

 マイクを持っていた人間は電源が切れたマイクを片手に新入生や保護者に逃げるよう叫び、近くにいた人間たちは彼らを誘導していった。


 が。それに対するフード付の銀色の外套の行動は簡単だった。

 拳銃を取り出し、片っ端から撃っていった。

 そこから広がる阿鼻叫喚。最早教師たちの誘導も聴かず、散り散りに逃げていったのだ。

 しかしそれすらも予想していたのか、逃げた先々に同じくフード付の銀色の外套を身に着けた人たちがおり、立ち止まった瞬間斬られたり、撃たれたりした。

 辺りに散らばる死体。そこかしこで漂う血と薬莢の匂い。

 小さな戦場と称しても異存のないこの場を作った張本人は、銃のマガジンを変えていたところで6人の生徒に囲まれた。


 6人を代表して、赤髪の少年が訊ねた。


「どうしてこんなことをした」


 囲まれたその人は、フードを外しながら言う。


「どうして、ね……。僕は言ったはずだよ。『君達とは敵同士だ』とね」

「なっ」「え……」「ウソ……」「本当に……?」「君は、誰だ?」


 その顔に覚えがある人間は驚きで声を失い、見覚えのない人間は首を傾げる。

 そんな彼らの反応を見た少年・・はその場で跳んで人の垣根を飛び越え、捨ててあったマイクを拾い、どこか・・・に向けて言った。


『世界に住む術式使いよ。君達はもう、終焉へと片足を突っ込んでいる。後はもう、我等に殺されるだけの存在となったのだ。

 我等は君たちを根絶やしにする。それが我等の――『破滅龍』の目的だ!』


 ――同時刻。某大陸国。


『くそっ! 術式が効かないだと!? 奴ら一体どうなってやがる!?』

『銃弾も効かねぇ! 俺達の攻撃、一切効かねぇぞぉ!』

『……この化物め!!』


 ――同時刻。某連盟国。


『……応答を! 応答をお願いします!!』

『こち、ら……α。もう……ダメだ』

『状況を説明してください!!』

『一切、効かない。奴らは……銀色のガァァァァ!』

『αァァァァァ!!』


 ――同時刻。新興帝国。


『こちらロシア軍! 首都はどうなった!? 応答を願う!!』

『……ザザ……こちら、首都軍……首都は、首都は…………陥落、しグワァァァァァ!』

『首都軍!? 首都ぐぁぁぁぁぁ!!』


 全世界同時テロ。各国の軍は壊滅状態に陥り、死亡者の数は億を超えた。

 襲撃したグループの名は『破滅龍』。

 銀色のフード付外套を身に着けている以外のパーソナルデータなし。


 彼らの名を知らしめたこの事態と、全ての国のトップがこれにより死亡するという事態が重なり、人々はこう名付けた。


『世界の終わりが始まった日』と。

















『さぁ。次の破滅ゲームを始めよう』

トライストーリー ~三人異聞録~は頑張って書いてます。

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