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ファンタジー世界de『貸し自転車屋さん』始めました  作者: 鴉野 兄貴
第二十二章 天使と猫と『はなみずき』
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『まぼろしのもり』

 「人間は嘘をつく生き物だというが、私たちだって嘘はつける。意味がないからやらないだけだ」

『まぼろしのもり』なるエルフの長老はそういってのけた。ちなみに長老というが若々しいイケメンである。嫉妬MAX。

なんでも嘘をついても永遠に生きる彼らには名誉を損ずるだけでまったく利益がないらしい。

「逆を言えば、忘れ、自らに嘘をつけるから人間は強く生きられるのだがな」

このイケメン。ちょっと気に入った。


 『最初の剣士』の遺品管理の三国紛争の解決をするため、

『はなみずき』が嫌々呼んだ青年はトンデモナイ年寄りらしい。


 美しく成長した乙女と国王を一瞥した彼はこうつぶやく。

「しかし人間はあっという間に儚く散ってしまうな。先日君の娘たちに会ったときは赤子だったのだが」幾つだよ。アンタ。

『はなみずき』をニコニコと眺めながらエルフの長老はそう言ってのける。

「……」嫌そうにしている『はなみずき』をイルジオンと呼ばれた美青年はいい子いい子している。

「小父上。私は既に成人しているのだが」「む……」

「おしめを替えてやったこともあるぞ」「頼むから人前でそのようなことを言わないでくれないか」

神族の癖にフランクな男だ。燐光を放つわ畏怖感あふれる雰囲気あるわ森の香りがするわと黙っていれば神様神様なのに。



「おうっ! 久しぶりだなッ イルジオンッ 」「おうっ! 」

エルフという奴らはボディランゲージを交わさないと聞いたのだが。

ぼくらの目の前で国王と『まぼろしのもり』は華麗なハイタッチを交わして見せる。

この世界にハイタッチなんて習慣あったっけ。『はなみずき』へのいい子いい子もそうだが。

「いやぁ! 王様なんてやるもんじゃねえぜッ 言いたいことも言えないこんな世の中じゃ」「ははは。健勝のようだな」「何年も王様やってるとしがらみで動けん。お前が王やれよッ ていうかもう俺は引退したいッ?! 」「絶対ダメだ。人間を導くのは人間であるべきだ」

いつも思うが、このジジイ、もとい国王は何者なんだよ。



 エルフたちの主張を聞き入れ、嫌々宝物を彼らに返却した『はなみずき』はとてもとても機嫌が悪い。

反面、エルフたちが次々と出してきた歴史的事実や遺品、資料の数々もまた『はなみずき』たち関係者の頭を悩ませるものだった。

どれくらい酷いかというと歴史学者や神学者や政治家の半数が頭を抱えて慈愛神殿の施療院送りになった。

お前らどれだけ盛っていたのだ。呆れるわ。


「このタペストリも元は言えば此奴が」「なんで捨てなかったんだよ」


 『最初の剣士』の奇行を記したタペストリを手に楽しそうな『まぼろしのもり』に抗議する国王。

「父上はこの内容をご存じだったのか」「うん」

だから買うなと言ったじゃないかと告げる彼に頭を抱える『はなみずき』。

「此奴と酒盛りしているときにノリでラクガキしたものを後生大事に此奴が持っていて勝手にタペストリに」

「嘘をつかないでください。父上。あなたは何歳なのですか」「エルフって酒効かないだろ」トボけた発言をする国王に抗議する『俺』たち。

 ニヤニヤと笑う国王は「いやあ。大臣やらなんやらがやかましくてな。どうして人間ってこんなに自分や自分たちに縛られるんだろうな」とかぶっちゃけ発言を連打し、「それが人間だ」と『まぼろしのもり』に突っ込まれている。


「いやぁ! お前に会えなくて寂しかったんだよッ イヤホントッ 」「まだ返してもらっていない宝物があるのだが」

調子に乗る国王に突っ込みを入れる『まぼろしのもり』お前らは漫才師か。


 「父上。エルフというものは一部の変り者や物見を除けば人間と交流しないと聞いたのですが」

どうみても二人の態度は伝聞や『かんもりのみこ』に聞いた話にそぐわないと疑問を放つ娘にああ。いつの間にかエルフの怒りを買っただの、エルフは人間に干渉しないとか言われている件かと前置きしてから国王はこう平然といってのけた。

「寿命が違いすぎて、認識できない」

蠅が苦悩したと仮定しても人間に知覚できないのと同じだと告げる国王。


 「あの。神族と人間の絆が失われたとか言うのは」

「単純に次に話すときこっちの担当者が死んでいるからだが」国王がそう言う。

ぼくらはがっくりと背を合わせて崩れ落ちた。


 「宝物や歴史についての交流が無いのもッ? 」

「『次に』と教えてくれるのが二〇年、三十年、数百年単位だし、

宝物の返還交渉などのスパンが数百年単位でも彼らにとっては数年と大差ないから」

ダメじゃん……。異種族ダメじゃん……。


 「私も施療院に入りたい」「奇遇ですね。ぼくもなんです」

ぼくらが脱力して倒れ込んでいる間、国王と『まぼろしのもり』は勝手に店の自転車で遊んでいた。

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