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ファンタジー世界de『貸し自転車屋さん』始めました  作者: 鴉野 兄貴
第二十二章 天使と猫と『はなみずき』
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「コクサイホー? それはなんだ」「……」

「まず。重要な事ですが」「ああ」


 不毛な争いで大荒れの店内を無気力状態の騎士団が幽鬼のような表情でノロノロと整理していく。

「その『盗まれた』という記録です。その記録が残っているなら第三者機関を通して相手国に提出すること、なおかつその証拠が今作ったばかりの捏造でないことの証明、そして「どうして今まで返還要求をして来なかったのか」を第三者機関の前で説明する必要性があります。さもないと永遠に奪った奪われたと揉めることになりますから」


 例を挙げると韓国の仏像窃盗団事件は『韓国の文化財を日本が奪った』との韓国政府の判断により返却を拒否したものの、奪われた当時の記録とどうして今まで返還請求をしなかったかの説明が欠けているということになる。


 然るべき手続きを行うべき皇女様の反応は実にわかりやすいものだった。

「よし。書類を偽造しよう」「許されると思っているのですか」

書類偽造で取り戻したら他の正規の手段で取り戻したタペストリまで返還請求来るぞ。


「だいたい、エルフが作ったのか君の祖先が作ったのかをはっきりしないと」「うっ 」

ぼくの冷たい視線をうけてうわごとを繰り返し、たらたらと冷や汗を流す彼女。



 ちりんちりん。

ああ。もう。お客さんたちが帰ってきた。君も手伝え。『はなみずき』。

「お帰りなさい」「またのご来店をお待ちしております」


 作業をしながらもタラタラと苦し紛れに弁明する『はなみずき』だが。簡単に述べるとこうなる。

「各国の王族は皆『最初の剣士』の親族や関係者を名乗っている為、それらの業績はちゃんと突き詰めると極めて怪しい」……だろうな。


「あれだ。エルフに聞けば一発だろ」


 伊達に彼らは無限に生きるわけではない。

「それを聞くと諸々の余計なことまで発覚するので各国ともおこなわない。行えない」あのな。どうしろというのだ。


 まぁ国家を維持していく以上、自虐史観的なことを子供に教えていては簡単に国力低下につながる。

戦乱の世のこの世界において致命傷になりえるわけで、『はなみずき』が苦悩するのもわかるが。


「あれでしたっけ。魔剣や『最初の剣士』の遺物は持っていれば持っているほどその家の権威が増すんでしたっけ」「そうだ」

ぼくが知るだけで失われた魔剣『霧雨』、『ゆうたまぐさ』『最初の剣士の辞書』などがこの国にはある。

「そのうち人類の発祥は我が国とか文字を開発したのは我が国とか世界初の活版印刷を考えたのは我が国とか」「なんだそれは」

呆れる『はなみずき』。そういう歴史の作り方は反感を招いたり自意識過剰な国民を作ってしまうとのこと。

なにより。「お前はこの世界の情報伝達速度を誤解している。人々は吟遊詩人の歌を通して遥か遠くの異国の様子を速やかに知ることができる。そのように恥ずかしいことを国家が吹聴していると王家の権威を貶めることになる」……だそうだ。

なんでも娯楽が少ないがゆえに詩人の齎すニュースはとてもとても早く伝播するそうで。

「嘘をつくにしても、まだ許せる嘘にすべきであろう? 」その通りです。でも書類を偽造しようとたくらんだのは君だからね。


「つまり、三国会議の議題にする案件だということだな」当たり前です。

「今までこういう問題が起きたらどう対処していたのですか」「戦争の結果や政治的判断の数々で」ややこしいな。


「最初から『最初の剣士』の遺物に関して返還ルールを用意することをおすすめします。三国とも戦費の供出で苦労しているのですから比較的あっさり通るでしょう」

「だが、それは最初に決めた奴らが一番得するではないかっ?! 」


 国際法を真っ先に考えた奴って。賢いよな。

ぼくはキーキー文句を言う泥棒皇女を目の前にして呆れかえっていた。

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