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ファンタジー世界de『貸し自転車屋さん』始めました  作者: 鴉野 兄貴
第二十二章 天使と猫と『はなみずき』
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【コラム】あ~! やだやだ! 仕事に行きたくないでござる

「ほら、こうだよこう。なんでできないんだ」「鴉野さん。大阪なまりです。ここは何故。でしょう」

男たちはネクタイの結び方で揉めていた。何をやっている。


「だから、大剣をこう回して、サンカクを作って、それをピッチリと回して。この時点で形を決めてディンプル(溝)をどうするか決めてしまうんだ」

すっと通すと綺麗に決まる。会心の出来である。

「大剣の斜めで出来ないって話だが、それを逆に利用するんだぞ」


 そもそも、お前が言う『曲がってしまってカッコよくない』とかも洒落のうちなんだが。鴉野が告げると彼は頬を膨らませる。

「いや、そうですけどね。まっすぐで綺麗な三角もいいじゃないですか」好みの問題だね。上司次第では気にするけど。


「よくわかんない」少女は男たちが相手してくれなくてすねていた。小石のようなものを動かしてナニかやっている。

「いや、だってネクタイを結んだほうがモテるっていうじゃないですか」「まぁその真偽はさておき、酔っ払いのサラリーマンを相手にする時はラフなスタイルよりは良いみたいだな」服装自由でアロハとか着てた時よりは絡まれることが少なくなったと鴉野が告げると少女が目を丸くする。

「そーなの? カラスノ? 」「うん。まーね」やっぱり格好にあった発言をするようになる。

カッコよく決めているとヤクザな発言は慎むようになるし。


 ニッポンのひと、大人しいって印象だけど。

少女が告げると鴉野は「酔うと凄いことになる」とだけ告げる。

「飲まなきゃいいのに」にべもない。宗教的に飲まないし。


「鴉野さんの結び方って独特ですよね。サンカク三つって」「普通の結び方だぞ」

ブレーンノットを結んだあと、小剣を左右に結んで固めただけだと解説する鴉野。

「変なの」「フォーマルではやらんよ。もっともフォーマルで呼ばれることは絶対ないと断言できるが」

鴉野は「こうしないと首絞められたとき危ない」とつぶやく。少女はドン引き。


「鴉野さんは月に一度は襲撃を受け、襲撃が無い雨の日に店番していればミゼットという小型トラックが突っ込んできて、

襲撃を受けた次の日に別の襲撃を受け、店の前で待ち伏せを喰らって肩をはずしたままズームパンチを連打し、、見回りに出れば酔っ払い五人に襲われ、タバコ一本のトラブルで病院に搬送され、コンパに行けば女の子たちが意気投合してハブになり、バレンタインにチョコを貰えるのは男から。逆ナンパされたかと思ったら女芸人の弟子になっていたという人ですからね」実話です。


 閑話休題。

「やっぱノータイではダメな時がありますからねぇ」


 サマーベストとワイシャツ。ピシっとした細い濃紺のジーンズを纏った青年は絵になる。

くるりと回転してポーズを決める彼に拍手する少女。鴉野は無視する方針を固めたらしい。賢明な判断である。

「で、鴉野さん。コレなんですか」「ビットコイン。ネット通貨。知らないか? 」

 相変わらずWebデータの世界に三人はいる。

本来概念に過ぎない存在がコインの形で少女の手の中で踊る。

小石と思ったらとんでもないもので遊んでいた。


 「びっとこいん? 」「ヴァーさんの意気な企み? 」そりゃVITだ。

ビットコインというのは1998年に提唱され、『中本哲史』を名乗る謎の人物、もしくは団体によって実用化された仮想通貨だ。


「誰? その人」「一部のハッカーは日本人名を名乗ることがある」理由は知らん。

「なんで正体不明なの? 」あえて名乗るハッカーやスパイは別の仕事を見つけていると思うぞ。

誰か解らない普通の人が実は凄いってのが快感なんだし。匿名の快感って奴かな。


「匿名の情熱。です。ググりました。長尾剛氏の『ファンタジーRPG100の常識(富士見文庫、の275ページ)』にあるそうです。引用元は正確に、原文をしっかり考えましょう」そういえばここWebの世界か。便利だな。


「いみわかんない」首をかしげる少女に鴉野は解りやすく解説。

「朝起きたらおはようと人は挨拶をして笑顔でお仕事に向かう。

その笑顔を見て、誰かが笑顔になる。そう思うと嬉しくなるだろ」「違うと思います。鴉野さん」

長尾氏が提唱するに、名演説のゴーストライターであった一人の人間は、自分の名が残ることより業績が永久に残ることを喜びとした。そうだ。

「多重スパイもそうだな。誰もが自分の仕事を頼りにしている。どの勢力にどの情報を渡すかは自分が決められる。一歩間違えれば殺されるが、それでも秘密の全てを胸に死ねる。自分が世界を左右できる喜びをもって」

「うーん。深い」「だねぇ」


 「アレですか。主婦の多くがどうでもいい理由で『自分へのご褒美』と抜かして宝石や毛皮を買い込んでクレジットカードの負債をため込んでいたり、

ひょっこり帰ってきた旦那に浮気の現場を押さえられて『あなた違うのよ』と叫ぶような」「違うわ。アホウ」

頭痛い。ここには浮気をしたら問答無用で殺される宗教の娘もいるのでやめてくれ。

あと、昨今のクレカはすべてリボになっている。年利20%で月1000円のみ負担なんて地雷もいいところだ。こまめな毎月全額決済をしないと家計はマッハだと言っておく。


「『かふぇ&るんばっ♪ 』で言っておいてくださいよ」連載中は知識がなかったんだよ。クレカ使う機会もネット代程度だったし。

例の東京旅行の請求額(活動報告参照)が少なすぎるので発覚した。

「金の管理が杜撰なんですね」うっさい。マジで1万円しか請求無くてクレカ会社に電話したわい。


 む? 鴉野の表情が動く。

「金の管理と言えば、なんか俺たち忘れてないか」「ビットコインの話をしてくれるって言った! 」

有能だな。この娘。美形の異性の仮想人格を相方にしていいのはリア充だけなのでアレだが。


「そもそも基軸通貨の話になるんだ。仮想人格! 以前言ったことを覚えているよな?! 」

「基軸通貨は世界征服に等しいって話でしたっけ」合格。俺は読み直すまで忘れていたが。


「ヒドイ……」「作者なのにこの酷さ」半年も長期連載するなんて初期プロットにはなかったもん。

「最初期プロットって主人公が『はなみずき』に刺されて終わりでしたっけ」「無駄に多い経済力は混乱を呼ぶだけ」

というか、初期プロットの話なんてどうでもいいだろ?


「基軸通貨を国に依存する危険性なんだけど。

話は古くなるが日本とアメリカがドンパチやると決めた時、アメリカドルが強かったんだ。当時決済はドル決済」「うん」

何故強かったかというと初期のアメリカは紙幣で金と換金できた。金本位制だったんだね。その名残が今も残り、アメリカドルは基軸通貨の強さを持っている。まぁ国債を買わせているんだが。

「あれって個人の土地から出た財産では……」ゴールドラッシュの話はするな。話が長くなる。


「で、仲が悪化するとさっそく日本は困った。何も買えない」マジで。

「昨今だと、マネーゲームで資金を拡大したビンラディンの軍資金を即座に凍結させていたな」水を絶つのは戦術の基本である。


「で、ビットコインですか」うん。国に依存しない基軸通貨として一時脚光を浴びた。


 アメリカもこの間のマネーゲーム(リーマンショック)の影響でひどかったからなぁ。

一時期千円で買ったビットコインが二万円になる騒ぎがあった。

ハッキングもあったそうでバブルがはじけたけどな。


「ビットコインはオープンソースだけどシステムを守ることで富の正式な分配も行われる」「へぇ」

データだけど不当に増えたり減ったり、国家の都合を受けないわけだね。そういうことで需要が高まっていた。

「データなのに現実の通貨を一時期超えていたわけですね」「国家のしがらみがないし手数料も不要だしな」



 「てか、不思議だよな」「なにがですか」

「いや、コピペして増えるデータって物理法則的にどうなのだろうと」「??? 」

増えたデータは何処から持ってきたんだという鴉野に失笑する彼。

「鴉野さん。コンピュータ音痴ですね」「否定しない」


 今回は増えるデータとして『人間』が対象になった場合、「わたし」はどうなるかってお話だったけど。

「『はなみずき』さんがいっていましたね。本質はコピーされても消えないと」彼女は強いね。

「ウンコにまみれてインキンもらうヒロインは一味違います」お前、斬られるぞ。


「歌だって踊りだってそうですよね。そりゃライブには劣るかもですが、悲しみに沈んだ人を喜ばせたりできるじゃないですか」「うん」

「それを成そうという思いのほうが重要で、大事なんじゃないですか。そりゃ著作権とか、アーティストの生活をどう守るかとか課題はいっぱいありますけど」そうだね。


 無限に増える情報だからこそ、再分配を考える。

無限に増える人生の記録をどうなすか。今後の人類の課題は大きい。のかなぁ。


「というか、締切守ってください。『夜明け』とか『宇宙に向かうフネ』とか『ナメクジ』とかエタッているのをしっかり書いてくだい」「うは……」

「あれなら彼らの世界に連れていきますが」「それは勘弁!!!!!! 」

笑い声と共に、彼らの姿は現実の世界へ。

「しかし、なんでアレ、動画サイトとか広告出すんだろ」「は? 広告代を貰っているからに決まってるじゃないですか」

「ビットコイン的な考えをやるなら、PC同士を繋げて巨大な仮想サーバーを作り、再分配すればいいんじゃない? 利用率が高い=仮想サーバーの割合が多いになる。加えて広告代を貰うくらいならtweetや閲覧動画、リプやRT、などから年代や性別や職業などで欲しい人間に直接欲しい商品を届けることが可能だ。謙虚な例は美容整形とか出会いとかかな。ほぼ確実に相手に合わせた容姿にしたり、相手の好みを把握して紹介可能になる。それが政府や大企業の役員向けならどうだい? 」「いや、個人情報保護違反ですよ!? 」「それ、Webの世界ではどんな企業も守っていないと思う」

「ほかにも読者の興味とか読者すべての言動から取材せずして平均的な人格や興味の統計、会話した相手の年齢や社会的階層や議題もデータ化できるんじゃないかなぁ」


「著作権とかビジネスとしては今後古くなっていく可能性があるよ。人間の脳みそそのものをコンピュータとして利用する研究は進んでいるし、そもそも一部の誰が見ても面白い小説とか動画に賞金を出して専属契約を結んで著作権で印税とって印刷してって感じより重要なのがある。

その公募に出した、出すに至らず未完結になったデータだ。

一人の人間の思想や物語がリアルタイムで入っている。これを知財として利用する……」「鴉野さんホントSF思考ですよねえ」

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