さぁ。帰ろうよ
「ふん。たかが人間ごときが」
笑わせると彼はつぶやくと、ぼくたちに背を向けて歩き出した。
思わず顔を見合わせるぼくたち。思わず顔が熱くなる。彼女の頬も、また赤い。
「近すぎる。離れろ」「こっちの台詞だ」
「この世界ではあらゆる物質や精神などが情報化されて納められている」『しんえんなるうみ』がそう告げると『ソレ』を手元から取り出して見せる。
「お前たちが言う『無限のバック』もこの原理で生まれている」
「……」「……」ぼくらは絶句。
頭がくらくらするきつい芳香。
舌が麻痺するかのような甘い香り。
「魔族の体液情報から作った最高級の媚薬だ」
赤い絹のベッドに豪奢な部屋。
「寝心地もいいぞ」
何故かくるくる回りだす丸いベッドに。
「「いらんわっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」」
ぼくら二人の声が見事にハモった。
「エルフどもと違って我らの生殖は人間のそれと大差ないのだがな」人の親切を無下にするなと彼。
『神』のくせにいらんことをする。いや、『神』だからか。
血を拭ったばかりの青銅の剣を片手に激昂する『はなみずき』を押さえるぼくと、
「コピーを貴様が討てたのは私の協力あってのものだ。実力を過信するな」と告げる『しんえんなるうみ』。
「なんでお前が回転ベッドを知っているんだ」「かいてんべっど? ……というのかコレは。なんの役に立つのか気になるが」
「ふむ。そちらの皇女は知らないか。ではこちらの解説情報を」「見せんでいいっ?! 」
いい年こいてこっちは全然だからな。この皇女様。
「ちなみに、我らはより『神』に近い。『大地』や『雲』と生殖を成した者もいる」どこのギリシア神話の神だよ。
「そうだな。たとえば同族の娘の衣服に掛かった体液と、その衣服の情報から産まれた同族の話だが体液情報を一度……」
『しんえんなるうみ』の解説を聞いて頭を抱える『はなみずき』。理解しがたいらしい。
この『しんえんなるうみ』。研究者肌らしい。一度話しだしたら止まらない悪癖があるようだ。
「あ、あの。そりゃそうと神様。俺たち元の世界に帰りたいんだけど」
よくわからんうちに『コピー』に連れてこられてしまったし、『悠久の風』の皆が心配していると告げるぼくに彼は告げた。
「迎えが来ている」と。
ふわり。
サンカクの耳をぱたつかせ、ふわふわのしっぽを揺らしてその娘はぼく等に手を差し伸べる。
「いた~~~~~~! 」春の香りのするその娘はぼくたちにだきついてきた。
「おお犬娘。会いたかったぞ」「おおかみっ?! 」
もふもふもふもふ。抗議する『つきかげ』を抱きしめながら皇女様は嬉しそうに振る舞う。
「なんでお前ここにいるんだ? 」ぼくが疑問の言葉を『つきかげ』に告げると。
「ないしょ♪ 」
しっぽを口元に回して、『つきかげ』はつぶやいた。




