表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジー世界de『貸し自転車屋さん』始めました  作者: 鴉野 兄貴
第二十二章 天使と猫と『はなみずき』
80/128

『はなみずき』がふたり

「邪魔はしない。少しいいか」警戒と少し恥じらう表情を見せ、襤褸姿のその『幼女』は恐る恐るお店に入ってきた。

「どうした? 『はなみずき』」「大したことではないのだが」

『幼女』は尊大にまったいらな胸を張り、戸惑いの表情を浮かべながらつぶやいた。

「何故か身体が縮んだ。これでは剣も振うことができない」

絶句する僕に、その幼女。『はなみずき』は呟いた。



「こらっ?! やめんかっ?! 手打ちにするぞッ 」「可愛い。すりすり」「……」

もふもふもふもふ。普段は『はなみずき』が『つきかげ』に行う。

『つきかげ』に飽きたら『かげゆり』の長く黒い耳をぷるぷるぷるぷるしているのは良く見かける。

 その普段の行為への復讐なのか二人は突如現れた金髪の超絶美形の幼女を散々愛でだした。

あっちこっちからリボンを持ってくる。ボロをきた彼女に自分たちが着ることができなくなった可愛い服を持ってくる。大変な騒ぎだ。


 そこに。

がちゃん。新品の鎧の音を当て、まだ熟れる前の少女の香りを伴って『彼女』が現れた。

その声は愛らしさから大人の落ち着きを早くも見せだしている。


 『彼女』のまだ紅をさしていない唇が動く。

「久しぶりに来たのだが、改装でもしたのか? 妙に店が大きく見えるな」

爽やかな笑みを浮かべ、新調したての青銅の胸当てと脛当て、篭手を付けた『少女』騎士が入ってくる。


「久しいな。と言ってもそんなに経っていないのだが……その金髪の娘はどうした?」

完全に固まるぼく。『かげゆり』。『つきかげ』。そして幼女『はなみずき』。


「はっ『はなみずき』?! 」「……貴様。まさか隠し子など言わないだろうな」

年のころは一五歳ほど。見目麗しく、青い果実のような輝きを放つ彼女は頬を膨らませながらぼくを睨んだ。



 平和な午後だった。

最近来ない皇女を話のネタにぼくと『かげゆり』と『つきかげ』はのんびりお茶の時間を楽しんでいた。

とはいえ、『つきかげ』が言うには犬「おおかみだって。何年言わせるのよ」……狼である彼女にはお茶の類はかなり良くないらしい。犬猫にカフェインは良くないようだ。

いててててっ?! 久しぶりにかむなッ?!


「……」無言で優しげな微笑みを見せる魔族の少女は本当に見目麗しい。


 『つきかげ』の中身は基本的に変わりない。もう少し落ち着いてくれたら良いんだが。

それに反して『かげゆり』の厨二病はだいぶ収まりを見せてきた。

当時の言動を『つきかげ』がつぶやくと無口な彼女は頭を抱えて床を転げる。子供か。


 ティカップを指先で優雅につまみ、一人はサンカク耳としっぽふわふわ。もう一人は黒くて長い耳をユラユラ。

ぼくはぼくでボロボロの制服を脱いで少しいい服を身にまとう。『かんもりのみこ』が織ってくれた布地の服は現代の服飾技術で作られた服に匹敵するかそれ以上だ。そりゃ騎士団の皆も喜ぶ。

その騎士団だが、復興事業に各々の雑用にと超忙しいそうだ。ご愁傷様だが『保険』の維持のために頑張ってほしい。ぼくも入っちゃったし。


 そんな時に『幼女』と『少女』の『はなみずき』は入ってきたのだ。

めちゃくちゃびびるのは当たり前である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ