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ファンタジー世界de『貸し自転車屋さん』始めました  作者: 鴉野 兄貴
第二章 幕間『ジテンシャはなぜ走る?』
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【コラム】猿の王国

「なろう小説でよくあるギルドカードだが、『夢を追う者たち』の時代にはない」


「? あった方が便利じゃないですか」


 彼は不思議そうに呟くが便利だからでポンポンつけてりゃファンタジーにならん。この御話は特にSF要素である思考実験を入れているし。


「ギルドカードを語るとなると。身分証明。履歴書。各種資格の免許証。住所証明。雇用主の証明。場合によっては電子マネー。これを全部やっちまう夢のカードになる。しかも遺伝子レベルでの故人特定を行う」


「とんだチートカードですよね。現代に一枚欲しいです」


 いつでも召集できる停戦状態の韓国を真似して住基ネットを作ろうとして、中途半端に導入してしまったものより性能いいしなあ。


「数千文字で語れるテーマじゃない。そもそも遺伝子解析の最初のひとりが実現するまで人類は一万年以上の時をかけているんだ」


「冷静に考えたらトンでも技術?!」

「よって、全体のテーマと絡めて語るしかない。

 誰だよ安易に変な設定考えた『賢い』ヤツは」



 おかげで廃止までの物語を作る必要が出来ちゃったじゃないか。ああ、そうそう。実はこれを導入すると戦争の概念すら変化することが某ネットゲームで証明されているのだが、これは後日に語る。


「ところで、ラスト。アレなんすか?」

「うん?」


「思いっきり犬娘と魔族娘に萌えさせて、あのダークな〆」

「ああ。最初に王女だして、犬娘と魔族娘の奴隷ってなろうテンプレらしいぞ。

 最初からプロットが出来ていて楽だわ」


「プロットがまんまなろうテンプレなのに……」


 作者の人格が出るな。自分で言うことではない。

 筆が滑って萌えに費やした。今では反芻はんすうしている。さて、カネの話を語ると、どうしても避けられないテーマがある。


 人間とは何か。人間社会とは何かという抜本的な話だ。


 人間は社会を巨大化していく過程でカネという発明を生み出した。

 腐らず、壊れず、携帯性に優れ、いつでも新鮮な食料と交換できる一枚の板を。



 それ自体に食品としての価値はなく、素材としての価値は薄く、人間社会がそれの価値を決める世を。


「主人公が言っていたが、カネ、経済、政治は人間の基本的な営みだ。言語や文字もだが」


「ですね」

「故に、あの発想になるのは致し方ない。というか少しでもSFかじってりゃ心の隅によぎるだろ。『異種族』を人間の社会に納めていいものかと」


「……」


 怖すぎて逆に誰も触れたくないだろうけどな。

 トールキン先生だってエルフやドワーフが人間と協力する話は書いたが、人間社会の一員と描いたわけではあるまい。


「人間の条件ってなんだろ」


「ホモ・サピエンスであることでしょうか」

「だとすると彼女たちは人間ではない。現代における猿と同じとすべきか」


「……」

「猿に手話を教える実験をしたヤツがいる」


「あ、聞いたことあります」



「自分の家族を人間にうち殺された悲しみを語ったと聞く」


 押し黙る彼に話を続ける鴉野。


「犬や猫の中には、小遣いを手に主人の代わりに買い物を行う者もいるし、鳥類の中にはある程度の意思疎通を人間と行う固体もいる」


「ええ。一部ですが」


 ここで話を変える。


「ローマ帝国とその他の文明圏では神の国と原始人並みの技術格差、社会、法律の格差があり、ローマ人以外はバルバロイと呼ばれて奴隷として扱われたが、あの世界での『人間』の定義に当時バルバロイである我々は当てはまるのだろうか。確か弥生時代と記憶しているが」


「かつての黒人やアジアでの植民地での有色人種の扱いは言うに及ばず。オーストラリアではアボリジニをマンハントして楽しんでいたと聞く。


 そもそも我々日本が国際連盟の常任理事国でありながら脱退した真の理由は中国大陸というパイケーキ争いに負けただけじゃなくて、『有色人に人並みの権利を』求めたことが原因じゃないのかな」



 所説色々あってあくまで鴉野の甘い認識にすぎません。


 後の中国大陸やアジア諸国での地獄の戦いは教科書にも載っているので省くが、普段カネは払わんし日本は批難する中華民国も票決で『賛成』に票を入れていることに触れておく。


「あの時代は『黄禍論』がまかり通り、インチキ科学で有色人種の劣等性を有名な学者が展開していた」


 現代においても、イルカや鯨の権利を主張する人間は絶えない。これはキリスト教の原罪なる概念で、水の中にいる生き物は原罪から免れたなる考えが根底にあると思われるのだが、今でも我々はオーストラリアの公共の電波の上でモリの玩具で『ふざけて』撃たれる立場だ。


 それも芸人ではないタダの観光客がだ。


 彼らはイルカや鯨の権利を代弁するが、イルカや鯨が人間の世界に社会参加しても認める基盤を我ら人類は持っているといえるのだろうか。


「ああ。そうそう。島原の乱その他で秀吉や江戸幕府の残虐性を訴えるのはナシな。なんせキリシタン大名どもは人間を火薬樽一個で売り買いしていた。肌の滑らかな日本人女性は当時人気商品でな」



 おかげで今でも日本ではキリスト教は流行っていない。


「むしろ。聞きたい。知りたいのさ。俺たちは『人間』だろうか。『人間』でいられるのだろうか」

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