ぱんつ おぱんつ~!
「アレが無い」
異世界生活も一〇年近く経つ。幼女が大人の女性になるのだから当たり前だが。
「物資の不足は今に始まったことではない」と告げる『はなみずき』だが、そーじゃない。
「『はなみずき』。ちょっと聞きたいことがある」「なんだ?」
「干しておいたぼくのボクサーブリーフは? 」「急用を思い出した」
おい。ひょっとしてまた店のモノ持ち出したな。
「あと、洗濯する予定の下着が無いんだが、お前まさか」「では失礼!」
凄い勢いで自転車に乗って逃げていく皇女様。……知らないぞ。
「いや、これは良いものですよ」ポプラは楽しそうに告げる。
使い古しをくれくれと言うからやったが、正直日本人の穢れ思想的にアレな感覚である。
この世界には一応ふんどしに近い下着もないわけではないが、庶民はつけない。依然布が高価だし。
鎧兜をまとう騎士は衛生上の都合でそういったものを身に着けていたりするが。
「やっぱり、下着が無いと辛い」100円ショップでパンツが買えた時代カムバック。
「あんな良いものを日常的に身にまとえる公爵は凄いですよね」私も欲しいですとアンジェラ。
「『かんもりのみこ』に作ってもらったら? 」「下着を纏う習慣が無いらしいですよ。必要が無い限り食物を口にしない関係だそうです」
思わずしゃがみこんでつぶやく。
「『かんもりのみこ』はノーパン。『かんもりのみこ』はノーパン。『かんもりのみこ』はノーパン……」
ガウル。もげろ。もげちまえ。
その『かんもりのみこ』はノーパンだが、ガウルと旅立ってしまってツケの返済が滞っていた。
日本にいたときなら内容証明を突きつけてやるのだが、生憎この世界にはない。
数日後。
「貴様あああああああああああああああああああああああああっッ?! 私に黙って娼婦と何かやったなぁああああああああああああああっ?!!!!! 」
剣を手に駆け込んできた皇女様。覚えがない。というかぼくって結構我慢しているけど。
「ではこの……は。なんだ」ぼそぼそとつぶやく皇女様。恥ずかしいらしい。
ありえんが。まさか。
「穿いたのか。あれ洗濯してなかったんだが」「なにっ?! 普段『浄水』をっ?! 」
ちょっとたむしにかかりかけていて、『完全なる癒し』を『かげゆり』にかけてもらっていたが、アレって抜本的原因は改善しないんだな。たぶん菌の概念が無いからだと思う。
だから『浄水』のかかった服と着ただけの服は分けていたんだが。
「なんとかしろ」「というか、人の、それも男物の下着を盗んだ上に勝手にインキンタムシになって何を言う」どんな物語のお姫さまだってインキンタムシになったりはしない。
「これ以上に快適な鎧下に補助で着る服はこの世界にはない」「だからって男物を、それも着用済みを着るなッ?! 」どんな高度なプレイなんだよ。
こうして、風呂に毎日入ることでインキンタムシを極秘で治した皇女様は、
女性用下着の開発に乗り出すこととなった。国費で。
「あ、あの。復興予算は……」「なんとかなる」この国、早々に滅びるんじゃないか?