F70戦闘機(B92.5 W56 H90)舞い降りる
『わが生涯に一遍の悔いなし!!!!!!』
不運というかよりにもよってというべきか。『滅びの街』の温泉にお忍びで視察に来ていた皇女の裸を覗こうとした無謀な男たちは、事態を聞きつけ全裸で飛び出した勇気ある一市民に取り押さえられた。
「あれこそ女神」「天使が降臨した」「もう死んでもいい」「脱糞した」「おしっこちびった」「むしろ見即射」
黙れ。
「皇女さまのお役に立てて光栄ですわ」
異国の女性は穏やかに微笑む。
「驚いたぞ。『悠久の風』の都にいると思ったのに」
「私も現地でお会いするまでは皇女さまが『悠久の風』にいらっしゃるものとおもっていました」
女性にとって一人旅は危険の連続だ。
宿屋に泊れば即慰み者にされる。あるいは『女性はタダ』が公然とまかり通っている。よそ者の女は即拉致される美しい女なら縛られて無理やり妻にされてもおかしくはない。相部屋に無理やりされて鍵を渡される。そもそも鍵のない宿のほうが多い。
ギルドや神殿などのコネがない女は事実上家から一歩も出れないようなものらしい。
「でも、最近は宿屋さんも査察が入るようになりましたし、女の人の旅も前よりずっと快適なのですよ」
女性はそういうが、ぼくから見るとまだまだだと思うけどなぁ。
「ジテンシャに乗って色々きれいなものをみて、色々楽しいものが見れました。故郷では見れません」
夢見るようにほほ笑む女性はどうみても武装した男数人を素裸に棒切れ一本で撃退したとは思えない。
「私、強いですから」
華奢できれいな腕で力瘤を作るしぐさをみてぼくらは噴き出した。
まさか、魔力が身体能力や、本来体重的に振り回せない武器を扱うための力にもなるなど、想像もつかない。
初代『天使』アンジェラ。
数百年にわたって伝説とされる傭兵。
山賊団や略奪団同然だった傭兵たちの素行を改善し、傭兵騎士団や傭兵ギルドを設立。
街道を整備し、武装街道敷設部隊を新設。街道の安全に生涯を費やす。
後に女男爵と呼ばれるようになるなど、この時点のぼくらは知らない。