【コラム】街を歩けば君の姿見える
「なんでパリのシャンゼリゼ通りを俺たちは歩いているんだ?」
今日は街コンの話だったと思うが。
「そりゃ、道を歩いている女の子に気軽に声をかけて、打ち解けて恋人になる歌があるじゃないですか。おー・しゃんぜ●ーぜ」
ばか。なろうで歌詞を出すなッ?!
「今のは感嘆の台詞です」
「ウソだろ。絶対歌ってたよッ?」
石畳を踏みしめ三人は歩く。
「歌を歌うだけで権利団体がすっ飛んでくる。世知辛い世の中ですね」
「商店街でも最近は音楽流さないな。
というか、後ろにいるあいつに関してだが。いつまでついてくるんだ」
憂鬱そうな鴉野の視線の先には例の少女がアイスクリーム片手にご満悦。
「ずっとでいいんじゃないでしょうか」
「いい加減、何処かのロケーションにおいていくか、元のロケに置いておいてくれ」
「元のロケ? 論外です。というか鴉野さんだって子供好きじゃないですか」
「だってな……ん? なんだよ二人とも」
鴉野の服装を見て二人は眉をひそめた。
赤いジャケット。スカイブルーのシャツ。黄色いネクタイに黒いジーンズ。
「ル●ンIII世じゃないですか」
「???」
鴉野は『人類にもてないファッションセンス』の持ち主だ。
「いくらなんでも街コンの話をする以上は女の子をナンパするもんだろ! 基本基本! なのになぜ幼女を連れ歩く必要があるんだ!」
「ははは。幼女連れですからね。ぼくらは」
鴉野は子供が邪魔だとぬかしているが、彼のナンパが成功しないのは別の原因と思われる。
手をつなぐ恋人たちと別に鴉野と彼と少女ははしゃぎながら観光としゃれこむ。
「街コンは栃木県宇都宮市の『宮コン』を発祥とする。2004年の話だそうだ」
「2001年のスーパーフリー事件の傷痕がまだ残っている時代ですね」
Web小説の世界では一年前は『昔』で一〇年前は『歴史』だからなぁ。
「実際問題、当初は地域のイベントだったんだけど、そんなおいしいネタを仕切り屋どもが逃すわけない」
「ですねぇ」
アイスを舐めながら三人は歩く。
「鴉野さんは参加しないんですか」
「しようと思ったら例のバイトの予定がぽこたんインしたおだよッ」
興味はあるんだがなぁ。
「普通にクラブ行きましょう。クラブ」
「はぁ」
「というか、私がいるから気にしない気にしない」
ニコニコ笑う少女に二人は呟く。
「どの口が言うかな? どの口が」
「美少女アシスタントキャラを持って許されるのはリア充だけだっ」
「ひっど~!」
三人の歩みはきらきらと輝く川面に浮かぶ舟に向けて。