【コラム】侵略か名誉か
「てっきり今回のロケは某夢の国だと思ったのに」
「浅草花屋敷です」
近いからいっかと鴉野も納得。
日本で唯一街中を走るだの言われるコースターで嬌声を上げる三人。
「もう一回! もう一回!」
はしゃぐ子供にげんなりする鴉野。
「……まだ連れ歩くのか。お前は」
変な連れができてしまった。
「浅草花屋敷は歴史上日本で一番古いというけれども、
一時閉園していたので『ひらかたパーク』のほうが連続した歴史は古いかなぁ」
「何をおっしゃる鴉野さん。ひらパーの地下にスーパーロボット基地や帝国○○団の支部はないでしょう」
おい。あの辺はやかましいから触れるな。
「営業形式として、施設代と入場料双方を取るタイプ。施設の使用料を取るタイプ。入場料のみのタイプ、まったく金を取らないタイプとあるね」
「え。そんなのあるのですか。最後の。何ですか」
「普通の公園。あれも日本では遊園地という」
マジです。
「知っているか! 最初の公園は!」
「……日本では上野公園に芝公園、飛鳥山公園に浅草公園、あと深川公園ですね。ウィキ先生は偉大です。そして、さりげなく特撮ネタに持っていかないでください」
ちなみに、黒岩さんの名言はソース不明だった。
「王族が所有していたParkを市民に解放するという趣旨ですから一六四一年の清教徒革命以降でしょうね」
あながち間違いでもないらしい。
三人は花の香りを嗅ぎながら歩む。
「こうしてこの物語をかいていると、人間について何も知らんな~とか思うわ。歴史、経済、思想、政治その他もろもろ」
「私たちは人間なのに不思議なものですね」
「どっちにせよ、ファンタジー世界に遊園地や公園は出来ないと思うよ」
「自分で出しておいて」
「そもそも都市部に空きスペースができたらすぐ貧乏人が家を勝手に立てるじゃないか」
「あ」
日本でも延焼を防ぐためと称して明治以降に大々的に作るようになったらしいけどね。
「でも鴉野さん。金持ち区画は」
「庭を持つのは今も昔も贅沢。『無駄』だしね」
公開する金持ちもいただろうけど。
「じゃ、○○伯爵の植物園の一般公開みたいな使い方がイイのでしょか」
「それだって酔狂だろ。中世の貧乏人のモラルの低さを舐めちゃいけない」
「でも、遊園地ってあると地域にお金集まりますよね」「流行らないと遊園地がつぶれるぞ」
地域も一気に冷え込む。
余談だがひらかたパークは地味に存続がモットーらしい。
「そういえば鴉野さん。鴉野さんはあの園のイメージキャラクター・『ノームとなかまたち』が生まれた年を調べようとして断念したんでしたっけ」
「情報少なすぎてな……俺も調べて初めてあいつらの名前知ったわ。大阪在住なのに」地味すぎるだろ。
「今回は『タタリ神を慰める』日本の神社の考えをもとに、遊興施設とあの世界独自の思想性、維持費や政治の掛け合いで遊園地が誕生しましたけど」
国境で対立する国家同士が相互運営する遊戯施設は知らないけど、日中戦争で夜になったら同じ井戸で煮炊きして補給を行う日中両軍の話や、戦場にて敵味方でサッカーしたりする話は聞いたことがあるなぁ。
「あ。でも敵対国家同士が相互運営する農場とかはある。A生さんの仕事」
「パレスチナでしたっけ」
Beeタワーから眼下を眺め、はしゃぐ子供や喜ぶ観光客を眺める三人。
「実際、某夢の国を作ることやファーストフードの拡大を文化侵略とみなす考えがある」
「ああ。それで某夢の海では入ってすぐのところにコロンビア号の模型があったりするのですね。意味判んなかった」
郷愁を誘うからね。
「アメリカ人以外の人には別の印象を与えると思うけど、独自の世界観を演出している遊園地も多い」
ベンチに座り、飴を舐めアイスを食べる三人。
「平和っすね」
「だねぇ」
平和といえば。
「無血革命って自分たちの名誉を重視して、自分たちでやったように語る人が多いけど」
「日本だと江戸城明け渡しとかでしょうか」
「外圧だの思想だの、一皮剥いたら血なまぐさいんだよなぁ」
大人のつまらない話を無視して仮想人格の肩の上ではしゃぐ少女。この子が人間爆弾やったなんて思えないな。
「もういっかい! もういっかい!」
「子供は正直ですね」
「俺みたいにひねくれたガキもいるが」
「鴉野さんはイイ歳でしょ」
「ガキってのは年齢じゃないのさ」
「ね、ね! 次々! 次乗りたい~~!」
三人はまたどこかへ。