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【コラム】目盛りでコロシアムっちゃいNA!?

「やっぱり今回はメートルキログラム条約の成立や騒乱のドラマの話をするのですか鴉野さん……って」


 仮想人格の彼は周囲を見回した。なんか刀持っていてものものしい人ばかりだ。というか臭い。ここは日本か?!


「どこっすかここ」

「戦国時代の日本だな。斉藤道三のいた時代だ」


 俺も見るのは初めてだがと鴉野。ロケーションをコロコロ変えられるなんて優秀な仮想人格だ。


 家畜があっちこっち。子供もうろちょろ。ならず者と女どもがギャアギャア。


「どうざん……楽市楽座の」

「それは信長。歴史の授業はどうした」


「寝ていました」


 それで成績いいなんてと呆れる鴉野。

 鴉野さんと違って要領は良いのですと肩で語る彼。


 泥とその他で汚れまくった道を嫌そうに踏みしめながら男たちは歩く。


「大山崎油座ってのが昔いてだな」



 鴉野の母が愛読していた『国盗り物語』(司馬遼太郎)にも出てくるらしいが。


「油座とやらが何かあるのですか」

「神社仏閣を維持するには明かり……大量の油がいる。東西問わず古くから神社仏閣は油や蝋燭利権を持っている」


「ふみゅ?」

 おまえは本編のファルコ・ミスリルか。

「ほら。あれが有名な油売り。一問銭の穴に油を通して、一滴でも穴から毀れたら御代は要らないってやつ」


「なんかバナナの叩き売りみたいな口上っすよね」


 国盗り物語の一文はまだ著作権に触れるはずなので勘弁していただきたい。

 見事な口上と技術に拍手喝采。

 鴉野たちも手を叩いてみせる。


「神人たちは神輿を持ち出しちゃ、幕府とかが言うことを聞かなければ神輿を放置プレイして迷惑をかけて強訴していたんだが」


「You! 壊しちゃいなよッ」


 まぁ日本の神様とは自然現象や災害への畏怖こそが本質だろうしなぁ。



「人間ごときの思惑でそんな使い方されちゃ神様だって迷惑でしょ」

「ま、まぁ……」


 神社仏閣は戦国の時代、既得権益と強訴と暴力で決して武士たちに負けることはなかった。


「というか、何処の糞尿や塵処理業者さんですか」

「……ある意味神様じゃん」


 ちなみに、日本における糞尿の神様の地位は高いぞ。


「タタリ神だし」


「納得」


 あと、日本は温暖湿潤気候で、人糞を発酵させて堆肥に出来るのも。


「GHQが寄生虫だらけとブチキレて殺虫剤を日本国民にばらまきましたっけ」

「あいつらサラダ食うからな」


 日本では人糞も立派な経済対象なんだが、今回は割愛。というか調べるの面倒だから油座の話に戻る。

 神人たちはやがて儀式で使う明かりや油を自分で取るようになる。

 で、当時の主流はごま油。



「キレたら市役所の前に塵処理車や糞尿回収車を停めて無言の抗議で」


「ばか。違う。……のか」


「いや。神輿壊すタタリより、ウンコやゴミだらけになるタタリですよ。マジで」


 ちなみに作者は中学を卒業したらゴミ処理業者や糞尿処理業者に就職するつもりだった。高校くらいは出ろと母に阻止されたが。


「他の子供は高校を卒業して卒業証書貰ってくるが、お前は代わりに何もって来るんだって言われて反論できなかったのでしたっけ」


 うん。そー考えると糞尿処理は今の神様だなぁ。


「ご利益ありまくりですしね」


 あの~。油の話したいんですけど~? 面白いんだよ? 戦乱も油業者側から見たらとか、菜種油に移行していくとか、成りあがりの象徴の道三が既得権益の象徴である油で財を成し、座と関係ない商売やってぶっ壊されたり、信長が楽市楽座で座を破壊したり、秀吉が座を保護したけど結局つぶれたり、それでも油の神様として今でも信奉されていたり、その油業者の血脈がいまだ山崎で勢力を……。



「歴史の話なんて眠いですし」


 おい。

 余談だが山崎は大阪と地下水でつながっているし、西国街道で山陰ともつながっている。

 現在のJR山崎駅も大阪府と京都府の間にあるし、天王山って言うのは戦略拠点の代名詞になっている。


「今の山崎と言えばサントリーですよ。ハイボールで一杯やりましょうよ」

「あはは」


 確かにね。


「おーい! そこの武士さんもお姉さんも油売りさんも! こっちこっち! こっちのアンちゃんの全部おごりだからっ! お題はイラネェ御の字だッ?!」


 やめんかっ?! 山崎は俺の給料からみると高いんだぞッ?!


 現代の良質な酒に大喜びの群集に呆れつつ、鴉野は自棄酒をあおる。


「酒も大きなマスに入れれば小さな目盛りで大きな違いだなぁ」


「小さな差でも大きな幸せになりますよ」



「俺は、下克上して殿様を目指すんだッ!」


 油売りの少年が酒を飲みながら叫ぶ。


「なら私はその奥さんッ!」

 少年の妻らしい年上の女性が笑い、人々が未来を語る。殺し殺されの戦乱の時代でもギラギラした希望をもって生きる。

「俺も俺もッ」「俺もだっ! 俺は家来だなッ」


「小さな差で大きな不幸にもなる……か」


 山崎を呑まれてブルーになった鴉野はその様子にセンチメンタル状態。


「だから、目盛りを合わせたり、合わせなかったりするんでしょ」


 そーいえば今の某世界一の軍事大国はいまだメートル法使っていないのだった。


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