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ファンタジー世界de『貸し自転車屋さん』始めました  作者: 鴉野 兄貴
第二十二章 天使と猫と『はなみずき』
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【コラム】娘は預かった。返してほしくば「いらない」

「ふはははっ! 娘は預かったッ! 傷つけられたくなければ」


 典型的な悪役台詞に嘆息する鴉野。

きゃあきゃあと楽しそうにはしゃぐ少女。


「いらない」鴉野には人間の心が無かった。

「はぁ」「だからいらん。そいつは俺を爆殺しようとした奴だし」

マヌケ面を晒す男に鴉野は何処からか現れたロープを引く。『がんっ! 』

空から落ちてきた水の入った金ダライの直撃を受けて男は卒倒した。何故に金ダライ。



「カラスノ―! カラスノー! 」「どうしてこうなった」


 大学生は何かと忙しい。

課題もあるしテストもあるしゼミもある。

学生同士で呑みに行くこともあるし、合コンに呼ばれることもある。

仮想人格の彼は長身に少したれ目、切れ上がった眉の端正な美男子である。ロリコンだが。


「合コンの応援に行くので今日の講座は休みにしてください。以上」


 置手紙を残され、鴉野はクソやかましい小娘の世話をする羽目に陥っていた。

「どうしてこうなった」「カラスノ。アイスアイス」

がっちり背中に食いついている少女に呆れつつ、鴉野はいやそうに道を歩む。

「だいたいお前の宗教は男女一緒に過ごさないもんだろ」「気にしない」

そういえば最初は仮想人格の奴のおんぶも嫌がっていたな。


「カラスノ。ネタが切れてきたね」「うっさい」


 危機を脱した二人は埃の舞う市場を歩く。

あちこちで黒い布を被った男女が勢いよく商売の言葉を交わす中、ジーンズと踵のついたサンダル、ワイシャツに『ちょうちんハット』を被って幼女を背に乗せた男の姿は以外にも場になじんでいた。


「今回はナニが言いたいかわかりませんでした」「申し訳ない」


 こいつ、読解力高いな。

鴉野は呆れかえりながらも袋小路を歩く。

「国際法なんだけど」「うん」子供に解るかな? 正直不安だ。

「うーん。うーん」「カラスノ。ウンコ漏らすな」おい。


「ええっと。国と国とは戦争しなくても喧嘩しながら手を繋ぐのが普通ってわかる? 」「う~ん? 」

解りにくいな。うーむ。


「正直、俺も良くわからん」「だらしないの」

二人は適当に焼き串を買い、口に放り込もうとする。


「あ。コレ豚だ」「あっ」

「鳥に買い替える」「うん」


「美味しい」「だなぁ」でも豚肉食いたかったな。


「次はアイス」「さっき食っただろ」「アイスアイスアイスアイスッ?! 」


 昔の人は泣く子と地頭には勝てないと言ったが。

子供の一番やっかいなことは妥協をほとんどしないということだな。

「まぁ。そうでなければ可愛げがない」「なんかいったか カラスノ。怖かったんだぞ」すまんすまん。

「でも、二人なら助けてくれるって思ってる」「あっそ」


 遠くから見守る金タライを落とされた男は『変装』を解いて苦笑い。

「ちぇ。せっかく変装したってのに鴉野さん。あっさり見破るんですもん。やってられませんよ」

でもまぁ、仲良くなれてよかったかもしれません。

そういって彼は路地裏から飛び出した。


「からすのさーん! 」「お前コンパ行ったんじゃないのか」「わーい! 」

鴉野の背から飛び降り、青年に抱き付く少女。


 ちょっと背中の名残を感じながら、呆れて見せる鴉野に話しかける青年。

「ロリコンにはコンパなんて地獄のような体験ですッ 」「いや、ロリは辞めろ。前から言っているが」「ロリコン無罪! 紳士は無罪!! いつも心に『 YES ロリータ NO タッチ 』です!!!! 」「ダメだこいつは」「あはは」


 意外と人の絆も国の絆も利害の一致や感情で動くと思えば単純なものかも知れない。

だからこそこじれたら治らないのだろうけど。

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