表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/180

6<放物線と、母は強し>

 私は、思わずまじまじと見つめてしまう。

 その綺麗な目を。

「何見てんの」

「んー、まつ毛長いなぁと思って」

「長いか?ふつーじゃん?」

「長いよ」

「……包丁握り締めたまま顔見つめられると怖いんだけど」

「あらごめんあそばせ」

 そんなたわいのない(?)会話の最中。

「こンのエロガキ――!!」

 バシッめきょズシャ。凄まじい音と共に七緒が吹っ飛んだ。指でなぞりたくなるような、美しい放物線を描いて。よく飛ぶなーここ室内なのに。

「…っ何すんだいきなり!」

 と、頭を擦りながら七緒が怒鳴った相手はもちろん、たった今自分の息子に強烈すぎる鉄拳をかましたその女性。

「学校帰りに女の子の家に上がり込んで新婚気分inキッチンってか。あたしはそんなふしだらな子に育てた覚えはないよ七!」

「はぁ!?意味わかんな…」

「エロガキのうえに女装趣味か!こりゃアイタタだな。七、お母さんは悲しい」

 七緒は苦悶の表情で、自分が身に付けているエプロンを見た。

「こ、これは事情が……っ」

…えっと、とりあえず。

「こんばんは明美さん」

「あぁ心都、しばらく見ないうちに垢抜けて!あんた大丈夫?あのエロガキに何かされなかった?」

 背中まである赤茶の髪をなびかせ、東明美さん――つまり七緒のお母さん――は私を抱き締めた。

「ごめんなーうちのエロ息子が!」

「大丈夫だよ何もされてないし」

 昔からこういうノリの明美さんが相手だからこそ、こんな話題でもいちいち赤面したり慌てふためく事なく笑って反応できる。――少なくとも、私は。

「さっきから人の事エロガキだのエロ息子って、その呼び方やめろっつーの!!」

 あらぬ誤解をかけられてしまった七緒は、そう簡単に冷静にはなれないようだ。

「だいたい何で杉崎家にいるんだよ!」

「うふふ。お買い物の途中で会ったのよ〜」

 そう言って長身の明美さんの後ろからひょっこり現れたのは、上から下までピンクハ●スばりの派手な服装でキメた私のお母さん。

「せっかくだからうちで一緒にお夕飯食べましょうって事になって今2人で帰ってきたの。ねーっ」

「なーっ」

 母親2人は顔を見合わせにっこりと笑った。

 ふりふり命でピンク大好き、鳥肌が立つほど少女趣味な私のお母さんと、へそピアスが眩しく性格も限りなく男前な明美さん――格好が年令不相応(ぶっちゃけ若造り)という部分以外は全く正反対なこの2人が、高校時代どういう経緯で無二の親友になったのか。昔から疑問に思っていた。

 何回か訊ねてみた事もあったけど、「うふふ若い頃は色々あったのよー」または「あたしもあの頃は青かったからさー」で片付けられてしまった。最近は私も諦めて、訊ねるのをやめた。

「きゃあ七ちゃん可愛い!とっっても似合ってるわ〜」

 お母さんがエプロン姿の七緒を見て瞳を輝かせる。

「七ちゃんみたいな可愛い子に着てもらえればそのエプロンも幸せねぇ」

「……う、嬉しくないデス」

 七緒は、素直だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑よろしければ一言いただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ