表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したら知識神のスキルがチートすぎて、 冒険者なのに国家と神と魔王に目をつけられました  作者: 蒼月アルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/25

第9話 同時演算

王立魔法学院の訓練場は、静まり返っていた。


本来なら生徒の声で賑わうはずの場所だが、

今は結界が張られ、外部の音は完全に遮断されている。


「ここなら、多少派手にやっても問題ないわ」


セレナ=ノクティスが、淡々と言った。


足元に刻まれた魔法陣。

空間安定化、魔力拡散抑制、被害軽減――

いくつもの術式が、重ね書きされている。


(……本気だな)


《アーカイヴ・ロジック》が、即座に解析を始める。


――結界強度:高

――暴走耐性:十分

――演算干渉:なし


「レオン」


アイリスが、少し緊張した声で言う。


「これは、模擬戦なの?」


「ええ」


セレナが頷いた。


「召喚式の疑似魔物を使う。

殺傷性はないけど、

油断すれば怪我はする」


ミルフィが、目を輝かせる。


「なんか、すごい実験っぽい!」


「実験よ」


セレナは即答した。


「だから、条件を揃える」


彼女は、俺を見る。


「あなたは、

私の魔法を“補助”するだけでいい」


「攻撃は?」


「私がやる」


(役割分担、明確だな)


「分かった」


俺が頷くと、

セレナは短く息を吸った。


「では――開始」


詠唱が、始まる。


「――虚数位相展開。

演算式、第三階層」


空間に、紫色の魔法陣が展開される。


同時に、

地面から疑似魔物が出現した。


人型。

だが、動きは明らかに人外。


《疑似戦闘体・タイプB》

HP:680

行動速度:高

攻撃予測:ランダム化


(ランダム……)


いや、違う。


完全なランダムじゃない。

“擬似的に見せているだけ”だ。


「セレナ」


俺は、低く言った。


「次の三手、

左→右→跳躍」


セレナは、一瞬も迷わない。


「了解」


詠唱速度が、跳ね上がる。


魔法陣が、変形する。


疑似魔物が、

予測通りの動きを見せた。


ミルフィが、思わず声を上げる。


「え、なにそれ!?

動く前から分かってるの!?」


「動く前じゃない」


俺は、淡々と答える。


「“動く理由”が分かるだけだ」


疑似魔物が跳躍した瞬間。


「今」


セレナの魔法が、炸裂した。


闇属性魔法――

《ノクス・スパイラル》。


螺旋状の魔力が、

疑似魔物の胴を貫く。


だが、倒れない。


「再構成が速い……!」


セレナが、わずかに眉をひそめる。


「問題ない」


俺は、視界に走る数式を追う。


――再構成核、背部

――再生周期:2.1秒


「背中。

次の再生まで、2秒」


「……っ!」


セレナは、詠唱を省略した。


魔法陣が、二重に重なる。


「即興詠唱、第二式!」


紫の光が、

背後から突き刺さる。


疑似魔物の動きが、止まった。


HP:0


沈黙。


数秒遅れて、

魔物が霧散する。


ミルフィが、ぽかんと口を開けた。


「……え?」


アイリスは、言葉を失っている。


「今の……

打ち合わせ、してないわよね?」


「してない」


セレナが、静かに答える。


視線は、俺に向いていた。


「でも、

“通じた”」


彼女の声が、わずかに震える。


「私が考えるより先に、

答えが来る」


《アーカイヴ・ロジック》が、

警告を出す。


――演算負荷:上昇

――同期率:危険域


(……深追いはまずい)


「セレナ、ここまでだ」


俺が言うと、

彼女はすぐに詠唱を止めた。


「……ええ」


結界が、ゆっくりと解除される。


静寂が、戻ってきた。


「……やばくない?」


ミルフィが、率直に言った。


「なにが?」


「全部」


それには、誰も反論できなかった。


アイリスが、俺を見る。


「レオン」


「なんだ?」


「あなたとセレナが組んだら……」


言葉を探す。


「誰も、追いつけない」


俺は、視線を逸らした。


「それが、問題なんだ」


セレナが、小さく頷いた。


「ええ。

だからこそ――」


彼女は、真剣な目で言う。


「あなたは、

必ず狙われる」


(やっぱり、分かってるな)


「王国も。

教会も。

場合によっては……」


言葉を切る。


「もっと、上」


その“上”が何を指すか、

俺には分かっていた。


《アーカイヴ・ロジック》が、

微かにノイズを発したからだ。


(……神)


訓練場の外で、

誰かがこちらを見ている気配がした。


演算では、捉えきれない。


だが、確実に――

観測されている。


俺は、静かに息を吐いた。


(もう、戻れないな)


この同時演算は、

ただの実験じゃない。


世界に対して、

“異常値”を示してしまった。


そしてそれは――

必ず、次の波紋を呼ぶ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ